第18話 貸書庫

門の所に来るとボルドーが

「なぁ、5人だよな。バイクって

 二人しか乗れないから一人・・・

 余るよな」と。


「そうだねぇ」とジェニ。


「俺が残るかぁ」とボルドーは言うと

俺は宿屋の方で待ってるよ。

と言うと、全員の意思も聞かずに

手を振り駆け足で居なくなった。


門番に金を渡し

「サボルチに行く」と伝えるジェニ。


そうして一行は白の自治区へ向かう。

「なんでサボルチ?」とテージョ。


そりゃそうよ。白に行くって

言えるわけないじゃない。

とマルチネ。


「じゃあ、金渡す必要ないじゃない」

と聞き返すと

「金を渡したから信憑性が高いんだよ」

とジェニ。そして続けて言う。


多分、夕方までには白の自治区に着く。

飛ばすのでしっかりつかまってて。

テージョもついて来いよ。

と笑いながら言った。

「うそ!そんな短時間で?」と

マルチネは言うと


黄の国は道路が整備されているから

走りやすいんだよ。とジェニ。

「馬車なら3日ほどかかるのに」と

全員は言う。


白の自治区への道中


魔獣と出合うも、無視して

走っていく。魔獣も追いつけない。

そして国境。


「休憩を取りながらでも早かったね」

とジェニが言うと全員が

「楽しかった!」と大はしゃぎ。


「マ、マルチネ様!?」と国境を

守る兵士が驚く。

「真面目に働いてないで、たまには

 息抜きでもしときなさいよ」と

笑いながら言うと、警備の兵士たちが

全員お迎えをした。


しかし、何故か仰々しくなく

やんややんやとにぎやかだった。

「休憩中にでも食べてね、差し入れよ」

とアイテムボックスから

リンゴの様な果物を沢山取り出し

兵士に渡した。

「お忍びですか?」と笑いながら兵士。


「そうよ?だから黙っててね」と

マルチネが言うと


「果物受け取ったんじゃあ、秘密に

 しとかないといけないですね」と

兵士全員が笑い、一行を見送った。


「好かれてるんですね。マルチネ様は。」

とジェニが言うと、マルチネは


ジェニ、全員にしたらダメよ?

末端に行くほどやさしくしなさい。

上に行くほど厳しくしなさい。


それが国を長続きさせるコツよ。

勘違いする奴が多いのよ。


末端は取り換えが効くと。

それは違うわ。

取り換えが効くのは国を担う者であって

末端、そうね、民衆こそが

替えは効かないのよ。


「あなたなら出来るわ」と笑うマルチネ。


しかしこのままだと目立っちゃうから

フード付きのローブを纏うわ。

喋らないでついて行くわ。


ジェニ達はドウロを先頭に

小走りで目的地へ向かう。

そう、飲屋に居た者達のアジトへ。


そして着いた先は何と図書館であった。


「俺さ、なんかアジトって言ったから

 ボロ屋を想像したよ」とジェニ。


「そうねぇ、無頼漢たちのアジトは

 そう言った所が多いから

 目立つけど、これはなかなかね」

とテージョ。


「なるほどね、貸書庫を使ってるのね」

とマルチネ。


ここの図書館は民衆に書物保存用として

小部屋を貸しているわ。


その中には広くはないけど

大きめの部屋もある。

大人10人くらいが普通に

寝泊まりできるくらいの広さ。


ドウロについて行き、ある大部屋の

前に来た。

「道路は整備されていました」

とドウロ。


「ダジャレかよ!」と全員。

中から返事が聞こえる。

「道路だけに」と。


「座布団一枚」とドウロ。


そして鍵が開く。

「早く入ってくれ」と

何処かで聞き覚えのある声。


全員が入ると鍵が閉まる。

そこにはハジメと数名の

議員っぽい人たちが居た。


「久しぶりだね、ジェニ君。」と

笑うハジメ。

「こちらこそです。なんか

 大変ってことで来ちゃいました」

と笑いながら握手をするジェニ。


しかし、ジェニは急に真顔になり

「内乱ですか?」と聞く。

ハジメは答える。


「しない。」と。


黄の国は選挙で成り立っている。

過程がどうであれ選挙で選ばれるんだ。

それに対して意にそぐわないとして

負けた方が内乱を起こしたらどうなる。


そんなものは只の秩序のない国家だ。

力ある者、金のある者や

喧嘩に強いだけの者が国を

治めるのは違うんだ。


今回、魔獣を使い貴族派は

平民派を襲った。


俺は「そのところ」を潰したいんだ。

不正を潰したいんだ。

貴族制の国家もいい所がある。

国の在り方は様々だ。否定はしない。


「行かないんですか?演説に」と

ジェニは言う。

「行きたいさ」とハジメは言うと


俺を守る者が居る。身を挺して。

俺を守るという事で命を落とす者が

いるんだ。

もし俺が今、あの国に行って

演説をすれば、・・・うぬぼれだが

俺を守ってくれる民衆が居ると思う。


そいつらが貴族派に狙われるのは

目に見えている。

そいつらの命の危険がある。

だから俺は行方不明の方が・・・


「違いますよ」とハジメの言葉を遮り

ジェニは言う。


「あなたを守るのは私達です」と。

「私は内乱を起こすのであれば

 適当にするつもりでした。」


「もしかしたら国に帰ったかもしれません」


「行きましょう!演説に」と

ジェニは最後に言う。


しかしもう間に合わない。

そうハジメは言うと


「間に合いますよ。明日の朝には

 着きます。選挙までの最後の

 一日があります」とジェニは言った。


「バイクで行きます。ここまで首都から

 半日もかかりませんでした。」


「なるほどな、バーボンから色々聞いたよ。

 あっちの世界から持ってきた

 乗り物か」と苦笑いをするハジメ。



「運転しますか?」と笑うジェニ。


「是非させてくれ」とハジメは言うと

再度二人は握手をする。


















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