第16話 ジェニ、興奮する

「頭を上げてください」

そうジェニは言うと


ハジメ様とは青の国で

会ったことがあります。

なんかこう、物腰が柔らかくて。

その時には、そういった内乱とかを

起こそうとするような感じには、

人には見えなかった。


バーボンさんもハジメ様と話す時は

なんか、凄く柔らかくて。

そして今、

私にこの国へ向かうように言った。


それは多分、口には言えないけど

助けてやってほしいと。

そういった事だと思う。

バーボンさんが国に残っているのは多分

「準備」をしているからだと思う。


「私でよければ」とジェニは言う。

「その代わりに教えてください」とも。

何でも聞いてくれ!とライン。


「その袋は何なんですか?」とジェニ。


ラインはニヤリと笑う。

「食ってみるか?旨いぞ」と。

そう言いながら袋を開けて手に取る。


それは凄い小粒で麦の様な物。


「そ、それはまさかの!」とジェニは驚き

そして興奮して言う。


「コメじゃないですか!」と!


そして調理方法を聞く。

ラインは調理方法を言う。


「ばかやろう!」と怒鳴るジェニ。


米はな!煮るんじゃねえんだ!

炊くんだよ!と!

「よし!モミから玄米を取り出すぞ!」

とやる気満々。腕まくりまでしている。


臼ひきだ!臼は何処にある!

とまで言っている。


ジェニは気合いの入った口調で

説明する。ラインは気合いを入れて聞く。


鍋はこれを使え。とアイテムボックスから

釜を取り出す。

「俺はな、こっちの世界に無いとは

 思っていたんだ、コメは。しかし、

 持ってきてしまった。」と。


しかしよく、臼とかありましたね。

とジェニは言うと、バーボンの手作り

と答えるライン。

調理方法もバーボンが教えたのだと。


「ふっ、バーボンさんともあろう人が

 煮る?コメを?リゾットかよ」と

何かを小ばかにしたように笑うジェニ。



「しかし、今、俺のひとつ願いはかなった。

 じゃあ、今度はそっちの番だ」と

ジェニは笑った。


ハジメの事よりもコメについて

費やした時間が長くなっていた・・・。


そしてコメが炊き上がる。


「なんだこのモッチリとした食感は!」

とラインが言うと頷くジェニ。


「うめえな!なんか魚料理とかに

 合いそうだな!」

とテージョが言うと頷くジェニ。


「これはあれね、根菜を漬け込んで

 保存食にしたものと合いそうね」

とマルチネが言うと頷くジェニ。


「なんかこう、初めて食ったのに

 おふくろを思い出すぜ」

とボルドーは言うと頷くジェニ。


「俺は決めた。この世界で味噌を

 作ると」と握りこぶしを作るジェニ。


「あるぞ?それ」とライン。

バーボンが作り方を教えて

何十人の食中毒を経て完成させた。


「食ってみないとわかんないんだよ。

 完成しているのか腐ってるのか」と。


ジェニはラインを連れて厨房に入る。

そして味噌を溶かした汁物を準備した。

そして根菜の保存食を輪切りにして

それも準備した。


「完璧だ」と。


全員が食べ終わる。

至福のひと時。


「ところでそのアジトは何処にあるの?」

とテージョは聞く。


白の自治区だ。とライン。


「組織ってなんなんです?」と

突然ジェニは聞く。


「あぁ、俺の所とブルダの所か」

とラインは言うと


テッペンが青なのか赤なのかの

違いだな。あっちは青の国、こっちは

赤の国だ。

そういうとマルチネを見る。


実際にこの国も知っている。

裏の出先機関だってことを。

だから手が出せないのさ。


言い合えることも多いが

言い合えない事も多い。

そんな関係だ。


今回ハジメ様が頼ったのは

アスティ様だってことだな。

そしてまた、マルチネを見る。


アスティ様は知ってるんですか?

とジェニが聞くと


「知っている。だが、表立って

 動けないので俺達が独断で

 遣っている事になっている」

そう言うと続けて


ギリギリの所で調整はしているが

赤の旗を持って来ることはないだろう。


紫の後ろ盾は青と周知の事実だ。

ジェニ様がそう思っていなくてもな。

だから二人が行動することで

おいそれと手出しができないように

バーボンはしたんだろう。


「しかし・・・。」と言うと


貴族派の行動はそれを意に関せず

動いている。

それは内政干渉だと言わんばかりに。


平民派が選挙に勝つことはもうない。

普通の選挙で負けるのであれば

それもいいだろう。民意なんだから。


しかし、これは違う。

人間を殺してまで政権を奪うなんて

あってはならない事だ。

ある意味、先に仕掛けてきたのは向こうだ。


だから俺達もハジメ様に協力している。

人として、人間として

そういった事に対して戦う。


「しかし貴族派も人間だ」と

少しうつむきジェニは言った。


「人間ばかりだ、争うのは。

 人間が居る限り、争いはなくならない

 のだろうな・・・。」とも言った。


「ジェニ、残念ながらあなたも人間なのよ。」

そうマルチネは言う。


「逆に考えるしかないのよ?

 人間の事は人間でケリを付けると」

とも寂しそうに付け加えた。


そしてラインに地図を貰い

ドウロも一緒に行動することとなった。

ドウロが居ることで

アジトに入れるらしい。


ジェニ一行は宿屋へ戻る。


ジェニは開口一番

「コメを売ってくれ!」と。


気迫に押されブルダは入手方法を

教えてくれた。金貨5枚で。

流石黄の国である・・・。


「俺は稲作をする!」と未来に誓う

ジェニであった!


「ここは大丈夫なんですか?」と

ジェニは聞くと


「もしも私との連絡が途絶えると

 ルナティア様の逆鱗に触れるわ」

と笑いながらブルダ。


「あの子もやるようになったのね。

 それとも、もう一人の方かしらね」

と扇で口を隠し笑うマルチネ。



そしてすぐに準備し白の自治区へ

向かう一行。

















 











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る