第15話 消えた王族

そろそろ飲み屋が開いてるだろうと

いう事で向かう。


ドアを開けボルドーが

大きな声で「お届け物でーす」

と同時に、声と同じくらい大きな袋を

机に置く。


店内には5人ほどがおり

全員がこちらを向く。そりゃそうだ。


奥から店の主人の様な人が出てきて

「お?やっとかよ。時間かかったなぁ。」

とニヤニヤしながら言う。さらに


「いくらって言ってた?」とも聞く。

「金貨10枚だそうですよ」とジェニ。


「吹っ掛けやがったな!あのアマ!」と

驚きもしたが、なんと普通に金貨を渡した。


「どうしても気になるんですが

 これなんなんです?中身」とジェニ。


「気になるか?坊主。というか

 紫の国主さん」と店の主人。


おお!こいつがそうか!と店にいた

全員がジェニを見ると同時に

テージョが棍を手にする。


「おいおい、大丈夫だ。今噂の

 人だったんで

 思わず全員感動したんだろう。」

と店の主人。


俺はライン。しがない飲み屋の親父だ。

そう言うと、マルチネを見て言う。


「誰かと思ったらバーボンの

 ペイトロネスじゃねえか」と言う。


「保護者って言ってちょうだい。

 なんか金づるみたいでいやだわ」と

ヤレヤレな感じのマルチネ。


よくわかりましたね?とジェニは言うと


この首都に入ってから知ってたさ。

いや、その前からか。

というか難民たちを救ってくれて

ありがとうな。気に入ったよ。


とラインは言うとさらに続ける。

お前がこの国に居ることは既に

バレている。


因みにお前たちを監視していた者は

こっちで始末はした。


他の客っぽい者達がニヤニヤしている。


「それ、俺のせいに

 なっちゃうんじゃないですか?」と

ジェニが言うと


「なっちゃうかもなぁ」とライン。

「なっちゃうよ、それ」とテージョ。

「なっちゃってるね」とマルチネ。

「なってるな、絶対」とボルドー。


「いいじゃねえか。

 この国を取るんだろ?」とライン。

「とらないですよ!」とジェニ。


「うそ。遣っちまったよ。おい、

 話が違うじゃねえか!」とラインは言い

一人の男を見る。


「ドウロさん?でしたよね」とジェニ。

「よく覚えていましたね」とその男は言った。


青の国から派遣されバーボンに懐柔された

影の人だ。

バーボンさんにここで世話になっとけと

言われたらしい。


「この国を取るんじゃなかったのかよ。」

とラインが言うと

「いや、とるのは青の国ですって」と

ドウロ。


マルチネは笑っている。


「あ!そういえば聞こうと思ってたんですよ。

 全然関係がないかもしれませんが」

と前置きをしてジェニは言った。


この国には貴族が居るのに何故王族は

居ないのですか?通常、貴族位は

王族や王家に連なるものがなる位置

ですよね?それか君主的な人に任命されて。


「いたよ?昔はな」とライン。


「今は居ないんですか」とジェニは聞き返す。

「いない。一族末端まで全員だ。

 突然消えちまったらしい。ちょうど

 魔族が滅んだ時と同じ頃だという話だ」とライン。


実際、魔族はこの世に存在したことはない

とも言われているし、

結構前に滅んだとも言われている。

まぁ頃合いを同じにして物語性を

高めているんだろう。とも言った。


人間ってのは噂話が好きだからな。


おれも詳しくは知らないがな。

もし知りたかったら俺よりも詳しい奴を

紹介しないでもないぞ?

というかお前がなっちまえよ。


とラインは笑う。


「だから、ならないですって!」とジェニ。

この国の誰かがなればいいじゃないですか。

ハジメ様とか。とジェニは言うと


「残念ながら貴族の中から出そうと言う

 話が出来ている。そして今回の騒動だ」

とライン。


今貴族のまとめ役と言うのが今回の

首謀者だろなぁ、と続けると


「誰なんです?それ。名前は?」


コニャックって言う奴だ。

本人はその消えた王族の末裔とか

自分では言ってるらしい。


「じゃあそいつ魔族じゃねえか」と

突然にテージョ。

全員がキョトンとしている。


「いや、だってさ」とテージョは言うと


魔族って人間が滅ぼしたって私は

聞いたことがある。

であるならばこの国の王族は魔族で

人間に討伐された。


さっきの話をうのみにしたら

そう言う事じゃないか。


「実際、ありえないかもしれないけど

 その線、コニャックが魔族と言う

 可能性も考慮に入れようか」


確率的には凄く低いんじゃねえか?

とボルドーは言うと


「そういえば、ボルドーも魔族だったな」

とジェニは言った。

「おれの母様の血を吸ってたし」とも言う。

「なんだよ、知ってたのかよ」とボルドー。


「なぁ、魔族ってさ・・・」と言いかけて

ジェニは話すのを止め、いきなり話題を変えた。


話は横道にそれたけど、俺達は

ハジメ様を探している。心当たりがあったら

教えてくれ。と。


「心当たりも何も俺達がかくまっている。

 本当のアジトでな。」とライン。


ハジメ様は今回の件で内乱を起こそうと

している。13人衆筆頭がだ。

自分が国の頂点なのにだ。


しかし、頼れる仲間がいねえ。

勿論、内政的な面では充実しているが

こと、そう言った争いごとには

充実してない。


だから人を集めている最中だ。


元はと言えば

ハジメ様は今回、貴族を、そう言った

地位を撤廃すると言ってたらしいんだ。

だからかもなぁ、貴族派がなりふり構わず

やっちまってるのは。


最初は選挙で支持を得て13人衆での

会議で決めるつもりだったのだろう。

それがもう無理と思って内乱だ。


俺はハジメ様に死んでほしくねぇ。

俺達はあの人が好きなんだ。

強いのに戦う事が嫌いで。


だから紫の国主様。無理なのは百も承知だ。

黄と紫の戦争になっちまう。

でも俺は、生き残っている平民派を

代表してお願いしたい。


ハジメ様を助けてくれ。


そう言うとラインは首を垂れ跪く。














 





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