第9話 流入の予感

「お前、自分の母ちゃんの仕事

 知らないのか?」と

ヤレヤレと言う感じでバーボンさんは言う。


親父は苦笑いをしながら

「母さんは平民たちの仕事を

 斡旋するのをやっていた。

 無償でな」と言った。


「あ、ここでは給料を払います」と

慌ててバーボンさんは言った。


もうすぐあっちの首都で優秀な

冒険者ギルドの受付も来ます。


二人で住民管理を兼ねたところで

働いてほしい。


とも続ける。

「そうとう足らないな、人材」

と親父は真剣に言う。

そしてバーボンさんは答える。


はい。元々私達は只の戦闘屋です。

そんな者が国の運営をしてはいけません。


私の国には「蛇の道は蛇」という

諺があります。


よく知っている者が、その行いを

するべきです。


一つの物事が出来ると言って

私は全てが出来るとは思っていません。

また、勘違いはしたくない。


だから私はいつも人を使う。

人に頼る。それこそが今の自分を

作っていると思います。


「あなたはやはりすごいよ。

 噂の人物通りだ。」と親父は言った。


しかしいいのか?この国が

黄の国の色に染まるかもしれないぞ?

と親父は言うとバーボンさんは

首を横に振る。


いや、ハジメのやろうとしていた

国造りは正しいと思う。


昔、冒険者をしている時に

よくアイツは聞いてきた。

向うの世界の国の仕組みを。


俺は細かく説明した。

その中で彼がよく聞いていたのが

議員制の国造りだった。


全員が国の運営に携わる。


俺達は少し違うがそれとほぼ

似ている仕組みになる。


もうどんどん、黄の国の議員を

入れていいくらいだ。


あ、もちろん平民派ね。と

バーボンさんは笑いながら言う。


親父も母さんも笑う。


そして頼みがある。とバーボンさんは

俺の背中を叩く。


「こいつを一人前の政治家にしてほしい」


コイツは冒険者として使い道はない!

と大笑いしながら言いやがった。


俺以外の全員が笑う。

「ああ!そうだよ!俺は弱いよ!」と

俺は言った。


「おまえはな、人気あるんだよ。」と

急に真顔でいうバーボンさん。


いいか?リアス。

俺の国では「カリスマ」と言う言葉がある。

まぁ純粋な人を引き付ける何かだな。


ジェニはソレに特化している。

お前もジェニほどではないがソレがある。

だったらそれを伸ばせ。伸ばしてほしい。


そしてこの首都を纏めろ。

ジェニが国を纏めるならば

おまえは首都だ。


親父に師事しろ。そして学べ。


「バーボンさんを手放した

 青の国に同情するよ。」と親父は言った。

そしてさらに言う。


黄の国ももったいない事をした。

あのままバーボンさんを迎えれば

もっといい国になったのに。と。


しかしバーボンさんは否定した。


「俺はエンド討伐で名前が売れたから

 よかったんだよ」と。そして


俺みたいな身元不明の元盗賊を

使ってくれたルナティアの方が凄い。


人は立場で物事を理解する。


国主が言う一言と罪人が言う一言。

全く同じでも受け取る側が

勝手に判断する。


「この饅頭は旨い」と二人が言う。


国主が言うなら本当に旨いはずだ。と。

罪人のいう事は信じられない、毒が

入っていて騙そうとしている。と。


俺は黄の国では後者だ。

何故ならば、エンド討伐の折に

黄の国を出し抜いて二つの国を

青の国に合併した。


「私はあれで正しいと思う。」

そう親父は言う。


何処の国になろうが結局は

そこに住む人々が幸せに暮らして

行けるかだ。


国を運営する者は勘違いする。

俺がいい国にしてやると。

そいつの理想を押し付ける。


バーボン様は違った。

その国の者を使い、その国の

運営を委ねた。勿論

人間は見極めてだろうが。


だから、あそこは今でも青の国の

属国でありながらそれを全員が

受け入れている。


解らない者は言う。

バーボンさんは適当で丸投げしている。

めんどくさい事は人に押し付けている。

と。しかし私は思うよ。


先ほど言った「蛇の道は蛇」だったか。

それこそが国、または街を動かす

為に必要なことだと思う。


勿論、人物を見極める目は必要だが。


俺は親父が凄いって、本当に思った。

こんなにも考えているんだと。

そしてバーボンさんもすごいと思った。


この人はとにかく人を見極めることに

特化しているんだ。

勿論、戦闘力もすごいだろうが

それよりも人を見る目が凄いのだ。


だからみんな、「屑」と言うんだ。

仕事を押し付けられるから。

しかし、みんな笑いながらそれを

受け入れる。


そう思っていると

「じゃあ今日からな。頑張れよ」と

私を置いて出て行ってしまった。


俺は忙しい。と言いながら。


親子3人で笑う。

「やはりバーボン様を選んでよかった」と

親父は笑いながら言った。


「母さんがそんな仕事を

 していたなんて知らなかった。」と

俺は言うと母さんは笑う。


しかし、そう言った事まで

バーボンさんは知っているのか。

と俺は少し恐怖を感じた。


でも、その恐怖は心地よかった。


「じゃあまずは案内しろ、この国の

 全ての建物を」と親父と母さんは

それはもう働く気満々で俺に言ってきた。


黄の国に残されている親父の仲間も

声をかけて連れてくればよかったのに。


と俺が言うと、親父は

「そんな事、言ってるに決まってる

 じゃないか。俺の仲間の議員と

 俺の支持者は多分もうすぐ

 こっちに来るぞ」


「俺が居なくなったら紫の国を

 目指せと、いつも言ってたからな」

と笑いながら言った。


俺は慌てて入国管理をする場所に

走っていき叫ぶ。


「大量に人来るぞ!」と。

















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