第5話 娘っ子の魔法

男は悶絶しながら

「わかった!話す!やめてくれ!」

と足をバタバタさせながら言った。

男が言うには


自分は冒険者であり、適当な依頼を

探していると声を掛けられ、

行方不明になっている議員が心配だ。

家に行き何か手掛かりがないか

探してほしい。


今思えば「自分が行けよ」と

は思うが・・・。


自分が家の中を荒らしたが

何も取ってはいない。

後から片付けるつもりだった。


その声をかけてきた奴は

身なりが冒険者っぽくなく

どちらかと言うと貴族に近い感じの

身なりだった。


しかし、銀貨5枚は旨かったので

引き受けた。信じてくれ!と。


リアスは男に銀貨5枚を渡した。

「なんで渡すの?」とテージョが聞くと


俺達が来たことの口止め料だ。

まぁ見られていると思うけどな。と。

渡すに越したことはない、とも言った。


「親父は中立派だったんだよ」

リアスは言うと


今回は相当、拮抗してるんだな。

とも思った。


リアスたちはまだ知らなかった。

片方の組織の議員が

不慮の事故で死んでいる者が

多数いるという事を。


「どこにいったんだろうなぁ、親父達。

 何かの事件に巻き込まれて・・・

 いるからこうなってるのか」と

独り言のようにつぶやく。


宿屋に帰り部屋に入ると爺婆たちの

手紙の様な書置きがあった。

それを二人は読むと、


「居酒屋でも行くか!」となった。


爺婆たちは既に居酒屋に居たが

一緒には座らず、離れた所に座った。


「なるほどねぇ、ありゃ私にも

 わかんないわ」とテージョは言うと

笑いながら一気飲み。


爺婆はリアスとテージョの見張り役である。

勿論見張っているのは、その二人を

変な者がつけていないかだ。


「わかんねえよ、よぼよぼだし」と

苦笑いしながらリアスも一気飲み。


二人は他愛もない話をつづけるが

隣の席の客の話に聞き耳を立てていた。


「おい知ってるか?今度の貴族の

 野郎どもは相当ヤバい事

 してるみたいだぜ?」


「それな、俺も聞いた。変な男を使って

 るんだろ?実際さ、

 あれは殺されてるんだろう?」


「だと思うぜ?だって死んだの全員

 平民派じゃねえか。くそ貴族が」


おだやかじゃないねぇ、とテージョ。


「親父は巻き込まれている。」と

リアスは確信をしたような感じで

テージョに小声で言った。


その後二人は他愛のない話をつづけ

さっさと居酒屋を出た。


爺婆は閉店まで飲み明かす。

プロージットと!


次の朝早くに銀貨を金貨に替える。

本人たちもよくわかってないので

換金所の者がわかるはずはない。


偽造硬貨だと。


二人は金貨がたんまり入った袋を

しまうと、広場に行く。


広場の屋台で、謎の食べ物を買う。

「銅貨1枚ね」と売り子の女性。


リアスは銀貨2枚を渡すと

「なんだ、お前。久しぶりだな。

 こんなとこで何やってるんだ?」と

突然話し始める。


その女性は何かを察した様に

「久しぶりだねぇ、元気してた?」と。


「議員たちはどれくらい死んでるんだ?」

とリアスは聞くと


「街を合わせれば多分もう

 50は超えている。」と女性。


「ハジメ様も動いているらしい」と

続ける。


「議員のバイシャスの事は知ってるか?」

とリアスは聞くと


「数日前に朝早く奥さんと西門から

 荷馬車で出て行ったのは知っている」

と女性。


「それを貴族派は知ってるのか?」と聞くと


「いや知らないはずだ。多分だ。

 聞かれても言わない。貴族は嫌いだし」と。


傭兵も雇ったみたいだ。とも言った。


手を振り、冒険者ギルドへ向かう。

綺麗な受付のお姉さんが居たので聞く。


「あらリアスさん、久し振りじゃない」と

向うから声をかけてきた。


「こんな依頼なんてどう?」と

突然に依頼書を渡してきた。


「大丈夫よ、親を守ってるのは

 昔のあんた達の仲間よ」と

笑いながら小声で言った。


リアスがその依頼書の様な物を

受け取り出て行くと、その

綺麗な受付のお姉さんは


「わたしもそろそろ潮時かな」

とボソリと言った。


リアス達は首都を出る準備をする。

爺婆たちも荷馬車に乗りこむ。


「もう監視者だらけだったぞ」と

笑いながら。


後ろから声が聞こえた。

「間に合った。」と。


「あらま、この爺が気づかんかった」

と爺は驚く。


「これをバーボンに渡してくれ。」

その男は言う。


絶対に開けるな。このままで

バーボンに渡せ。絶対だ。


そう言った男は無言で

リアスとテージョを見る。


テージョは感じる。

「こいつは強い・・・。私でも

 勝てないかもしれない」と。

リアスは思った。

「バーボンさんを呼び捨てている」と。


それを何の疑いもなく受け取り

荷馬車を走らせた。


リアスとテージョが振り返ると、

その男は既に居なかった。


「西門という事は行き先は

 紫の国だ!俺が居るからな!」

とリアスは言う。


「これ、開けちゃう?」とテージョ。


いやだめだ、あの人は多分

バーボンさんの知り合いだ。

それも相当に近い間柄だ。


今の黄の国は明らかにおかしい。

ならば親父達を追う!急ぐぞ!


そう言うとリアスは馬に鞭を撃つ。


門の陰から男がその荷馬車を

見ていた。


「もう遅そいんだよ、けけけ。

 あんなちっぽけな領地なんていらねえ。

 俺はこの黄の国全部を取ってやる」


そう言うと手に持ったビンを

顔の前に近づける。


「これさえあれば俺が王だ。

 この国の王になってやる。」

と下種な笑いをしながら言う。


首都を出て一時後


「これはな、昔街に居た

 娘っ子がやってた魔法だ」と

婆は言い、馬の前に風魔法を展開した。


「これで少しは速く走れるじゃろう」

と言いながら爺婆全員笑う。


「居たなぁ、今じゃ我らの首都の

 守り神じゃて」とも言い笑う。





















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