21 湖畔の移動教室

 さてそろそろ1学期も終わる頃、マイコ達の東小では、涼しい湖畔での移動教室があった。昔はしゃにむに山登りをしていた時期もあったが、最近ではせっかく大自然の中に出かけた意味がないと言う事になり、プロのナチュラルガイドに連れられてゆったり湿原を歩き、珍しい動植物の観察をしたりしている。自然観察の後は、最近人里に下りてくることの多くなったイノシシやシカ、ニホンザルなどの問題にも取り組んだ。なぜ人里に来るようになったか、張り巡らされた電気柵や人の手の入らなくなった里山も見て歩いた。お弁当はイノシシやシカの肉を使った村おこし料理、偶然道路を歩くシカとも遭遇し、共存について色々話し合った。

 宿に着いてゆっくり用意をして、夜は楽しいキャンプファイア。炎の前でクラスごとの発表会をやった。

「さて、食虫植物モウセンゴケは、ネバネバで虫をとる、○か×か?」

 マイコの1組は、合唱とクイズ大会。昼のガイドさんに聞いた自然の話を○×クイズにして、手で大きく○か×を作って答える。正解すると火の周りを90度ずつ進んで行き、1周できた人から勝ち残れる。そしてそのあとはみんなで合唱だ。

ユウト達の3組は、派手な曲でダンスだ。ここのクラスは何日も前からダンスの好きな子が振りつけて踊っていたとかで、見事なステップで大喝采だった。しかし、終わった後で、キララの「ドンク、また間違えたでしょ」というきつい声が聞こえていた。

そしてユカリ達の2組は、昼に訊いた里山の話をもとに作った寸劇だった。主人公は里山のおじいさん、おばあさんと、庭の柿の木だった。

「柿の実が食べごろになりました。どうぞ食べてくださいな」

柿の木役の子ども達が、おじいさん達に赤い実を渡す。毎年秋、おじいさんとおばあさんが柿の実がなったのを見て柿の木をもぎ、うまいうまいと食べる。だが10年、20年立つと、おじいさんとおばあさんは腰が曲がり、また柿の木も背が伸びてユカリやユリコと背の高い子に代わり、おじいさんおばあさんでは柿の実がとれなくなってしまう。

「おや、どうしたことじゃ、実がとれん!」

「これが、村の高齢化です。さらに年をとったおじいさん達が草刈りもあまりできなくなりました」

すると伸びた草ややぶを通っていのししやシカ、ニホンザルまでがやってくるのでした。

「あれこんなところにおいしそうな柿がなっている。地面にも落ちてるぞ」

動物達は柿の実を食べて大喜び、おじいさんやおばあさんが追い払おうとしても言う事を聞きません。挙句の果てには…。

「し、し、ダメじゃ、誰か、助けてくれー!!」

おじいさんの叫びに答えて謎の5人組が登場。

「ハッハッハ、俺たちサトヤマレンジャー!」

「サトヤマレッド、動物達を追い払って山に返すぞ。花火用意、トォー!」

すると後ろで先生が打ち上げ花火を上げる、日に驚いて散り散りになる動物達。

「サトヤマブルー、柿の実を収穫しておじいさん達にわたすぞ!はい、どうぞ」

「サトヤマイエロー、草を刈って動物を近づけないぞ!エエイ!」

かっこいいポーズで草刈りを始める。

「サトヤマピンク、高い枝を切って、実をとりやすくするわ!チョッキン、チョッキン」

高枝切りばさみの登場だ。柿の木がだんだん小さくなっていく。

「サトヤマホワイト、これからも、動物と人の共存する道を考えていきます!」

そして動物達とみんなで歌を歌って踊って終わりとなる。大喝采だった。

その夜は疲れてみんなぐっすり、2日目は前半は近くの葡萄園でブドウ狩り、そのあとは湖畔のクラブ活動、ボートクラブに釣りクラブ、ワサビ田見学クラブにワイナリー見学クラブ、マイコたちチームサイエンスは、松重先生に頼んで、釣りクラブの隣で手網クラブを始めた。

「いいかい、こちらから水の中の生き物が見えた時には、向こうからもこちらが見えているので逃げられやすい。だから草の陰や石の陰に隠れているやつを狙うのがコツだ。こうやって、手網を少しも動かさないようにして、足で草や石を蹴ると、ほら、驚いてむこうから網の中に飛び込んでくる」

お手本を見せてくれた松重先生の網にはモツゴと呼ばれる小魚が入っていた

「わあ、本当だ。やってみよう!」

岸辺の草を狙って手網を動かさずに蹴りを入れると、本当にみんなにも取れる。

「はい、みんなビニール袋をこっちに向けてね」

ユカリのスマホでパチパチ獲物を写す。結局、1時間ほどでモツゴやシマドジョウなど小魚が5匹、湖のワカサギが2匹、体の透き通った筋エビが7匹、ヤゴが4匹採れた。記録に取った後、川に逃がしてあげた。よし、これで大丈夫、トンボ池ができたら、近くの川に行って、小魚やエビをとる自信がついた。みんな少しだけたくましくなって学校へと帰って行った。

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