1 ドールハウスがやってきた
お婆様はマイコのパパの母親で、いつもしゃれたお洋服とつやつやした肌でやってくる。
そしてお土産はとびっきりおいしいケーキと決まっていて、時間が来るとママが紅茶のためのお湯をおいしい水で用意し始める。
お婆様はしばらく海外のおじさんの家に行くことになり、大事にしていたドールハウスをマイコに譲るという話だった。1戸建てのリビングの隣にあるマイコの部屋は大げさに朝から大掃除が行われていて、すっかりピカピカになっていた。
ママは平日、市の図書館に勤めているのだが、この土曜日に気合いを入れて掃除をしたらしい。
「ピンポーン」
うきうきしてマイコが玄関にかけ出して行くと、いつものつやつや肌のお婆様が立っていた。そして…。予想もしなかった大きな家具のようなものが、配送業者のお兄さん達によって子ども部屋に運び込まれた。
まずはお婆様とママとマイコで好例のおやつタイムだ。箱を開けると、定番の苺のショートケーキ、でも何かが違う。
「ここのケーキ屋さんはね、ケーキ用の実のしっかりした品種じゃなくって、シーズン中は近くのイチゴ農園の取り立ての甘い苺をこれでもかってくらいに使うのよ。ほら、どう?」
「うわ、やわらかーい!それでとってもあまーい」
「だから甘すぎない生クリームと、よく合うでしょ!」
今日のケーキの苺の量ははんぱじゃない、それがしかも飛び抜けてうまいのだ。お婆様の持ってくるおやつにハズレはない。今日はさらにおいしい気がする。ママも今日は高級な紅茶プリンスオブウェールズを用意して、特別のおもてなしだ。
「ほら、うちはあなたのパパもおじさんも男の子で、孫もあなたが初めての女の子だったから。やっとドールハウスが渡せるんだと思うとうれしくてね」
「うん、大切にするわ」
でもマイコはうれしいにはうれしかったが、未だドールハウスというものがなんなのか良くわかっていなかったし、現物が運び込まれてからはますます良くわからなかった。どう見てもマイコの洋服ダンスより大きく、扉も閉まっていて、重そうなしっかりした家具にしか見えない。
でも、今はケーキがあまりにおいしく、紅茶が香り高く、マイコはもううっとりしてそれどころではなかった。
「どう、おいしかった?じゃあ、早速、ドールハウスの説明を始めようかしら」
食べ終わると、ごちそうさまをして、お婆様とマイコは子ども部屋へと入って行った。
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