第16話
──オニギリを鑑定?
なんでそんな事を?でも、わざわざ依頼するという事は何かの意図があるんですよね?そうですよね?
ただのオニギリを意味なく鑑定なんかしませんよね?他の意図があるんですよね?ありますよね!?
そうじゃないと私の作ったオニギリを、意味なく鑑定させるだけになってしまいますから……。
ううっ……。
理由を教えてくれていたら、こんなにもドキドキしなかったのに……。
クリスさんは意地悪ですっ!
それにしても、ガングローゼさん……。鑑定の技能持ちなのですね。ちょっとびっくりしました。
鑑定技能はかなりのレアなスキルなので、所持している人は少ないのです。
だから鑑定の法霊具があるわけなのですが、残念ながら鑑定能力はスキルの方が高かったりするのです。
勿論、スキルを伸ばして鑑定レベルを上げている人の、という注釈はつきますが。
──鑑定技能は基本的に先天性のものですが、頑張って技能を伸ばさないと大したものは鑑定出来ません。
本人のやる気と根気がないとなかなか伸びない技能だとおばあちゃんが言ってました。
私も昔は鑑定技能が欲しかったけど、法霊具の鑑定能力も少しずつ上がってきてるので、昔ほど欲しいとは思わなくなりました。
いやでも、持ってたら嬉しいんですけどね。
鑑定の法霊具はいいお値段しますからね。
それに持ち運び用のコンパクトタイプになるとさらにお値段がっ!!
……っと。なんか思考が別のところに行ってしまいました。
オニギリを鑑定するという事に、自然と現実逃避していたようです。
「さすがSランク冒険者。知ってたか……」
んん?なんの話?
「まぁ、な」
二人だけで話を進めずに、私にも教えてくださいっ!
私の訴えている目に仕方ないかと思ってくれたのか、ガングローゼさんが話してくれました。
「一部の高ランカーには知られている話だが、ギルドマスターは必ず鑑定技能を持っている人物がなるようになっている。というだけだよ」
えっ!?
それって凄いことでは!?
鑑定技能がないとギルドマスターにはなれないって事なんですよね!?
そんな私の心境を置き去りにして話を進める二人。
「鑑定の法霊具を使用するのでは駄目なのか?」
「多分、法霊具では知りたい事まで鑑定出来ないと思う。だからお願いしたい」
「はぁ……。仕方ないか」
ガングローゼさんはため息を一つ吐いて、私のオニギリをじっと見つめます。
鑑定の為に必要と分かっても、そんなにじっくりとオニギリを見つめられると恥ずかしいのですが……。
「……。なるほどな」
な、何がですかっ!?
「俺が鑑定を頼む理由が分かっただろう?」
だーかーらー!
二人だけで話を進めないでくださいっ!
「アーヤは知らないんだな?」
「全く気付いてないな」
本人を置き去りにしないでくれます!?
「アーヤ」
おおっと!
なんか凄く真剣なガングローゼさんです。
「あ、はいっ!」
「このオニギリだが……」
「えっと、普通のオニギリです、よ?」
「付与が付いている」
「えっと、普通……?
えっ?」
「このオニギリには『腹持ち三十パーセントアップ』というスキルがついているんだよ」
そう言って告げられた鑑定結果に、私は言葉を発するどころか驚きのあまり、かたまってしまいました。
ハーテヴァーユの新人錬金術師 鴎 みい @haru0u0-ki
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