第15話

 臆する事なくギルド長室に入るクリスさん。

さすがS級冒険者ですね。動きが慣れているの一言に尽きます。

私なら呼ばれもしない限り入りたいとは思いませんから、慣れたくもありませんけど。

 無駄な抵抗とばかりに中に入らずにドアで死角になるように立っていましたが、悲しい事にクリスさんに有無を言わさず中へと引っ張られてしまい、そのまま話し合いをする為の席へと座らされてしまいました。

そしてその横にはもちろんクリスさんが。しかもドアに近い方へと座ってます……。

 完全に逃げ道を塞がれたような気がします。


「──で? ビルデガルトさんの件とは?」


 そして、私達の対面に座ったのは勿論ギルド長なのですが……。

ガングローゼさん!?な、事実に私はびっくりです!


「どちらかというとアーヤの案件だな」


 何でクリスさんは普段と変わらない態度で……、って!?私!?


「ええっ!? クリスさん、おじいちゃんの件って言ってたじゃないですかっ!

 なんで私の件になっているんですかっ!?」

「さすがに本人がいる前で、本人の件なんか言えねーよ」

「今言ってるじゃないですかっ!」

「ああ。だってギルド長に用があるからな」


 うー……。


「……。ガングローゼさんがギルド長、なのですか……?」


 触れないわけにはいかない話題だったので、渋々確認の意味を込めて聞いてみました。

ちょっと恨みがましい視線になったのは気のせいです!


「そういえばアーヤには言ってなかったか?」


 私のその視線を受け止めても飄々とした表情のガングローゼさんは、さすがギルド長という事なのでしょうか。


「まぁ、普通に考えたらビルデガルトさん達が、何の伝手もないところにアーヤを住まわすわけはないだろうしな?

 それにアーヤはそういう事に関しては、疎いというか、何というか……。

 あの人達も気付かれないように立ち回っているから、余計、なのかもしれないがな」


 おぉう!?

なんか私貶されています?


「はいはい、膨れない膨れない。今は用事を済ませないとな。

 ギルド長だって暇じゃないんだぞ?」


 私が悪いわけじゃないと思うんですけど!?

でも確かにギルド長は暇な役職ではありませんからね。ここは仕方なく、反論をせずにしておきましょう。


「それで? アーヤの件とは?」


 そうですそうです。ギルド長に相談しないといけない私の件って何なのですか?


「アーヤ。オニギリを出してくれるか?」


 オニギリ、ですか?

クリスさんの意図はよく分かりませんが、とりあえず一個、オニギリを渡しました。そして、私から受け取ったオニギリをガングローゼさんの前へ置くと一言。


「ギルド長。これの鑑定をお願いしたい」


 そう言ったのです。

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