第13話
封印シールの素材には特殊な魔石が必要なんだけど、法霊具屋さんがこの町にはないから、特殊な魔石がなかなか手に入らないんだよね。
多分、ダンジョン都市に行けばあるとは思うんだけど、ちょっと余裕がない。──金銭的に。
悲しい事に依頼が本当にないから、魔石を買う為だけにダンジョン都市に行くと完全に赤字なのです。
私があまりにもうーん……。と唸りすぎてたからか、クリスさんの元気が段々となくなってきました。
「五百は無理か……? ならば、百っ!!
それも厳しい? 五十? え……、まさか十……?
そんなっ!? オニギリを楽しみにしてやって来たのにっ!?
早めに依頼すれば、数が確保出来ると思って他の奴らにバレない様に来たのに……。
このままではオニギリの数が確保できない……っ!」
なんか、すごく悲痛な感じで言われてますけどー。
オニギリ、ですよね?
正直なところおコメと塩さえあればオニギリは誰でも作れます。
だから、わざわざ私に依頼する必要もないし、それこそ料理上手な人に頼めば、私が作るオニギリより美味しいものが出来るはず。
なのでそこまで嘆く理由が分かりません。
レシピ、なんて言うには烏滸がましいものですけれど登録は終わっているので、本当に誰でも気軽に作れるようになっているんですよ?
「ええっと、オニギリ自体は錬金術の素材を使わなくても作れますから、他の人に頼んで作ってもらったらよかったのでは……?」
「分かってないなぁアーヤは。
オニギリをはじめに作ったのはアーヤ!
そんなアーヤ以外に、誰が基本のオニギリを作れるというんだ?」
基本の?という事は、基本じゃないオニギリは存在しているんですよね?
それでは駄目なのでしょうか?
どうやらクリスさんの言葉をあまり納得が出来ていない私に、やれやれと言った感じで首を振るクリスさん。
「とりあえずさ、今作れる数でいいから作ってくれないか?
当然料金は支払うから。
あっ! 変にはりきらず、いつも作っているのと同じように作ってくれよ?」
「ああ、はい……」
些か強引な気もするけど、折角ここまで来てくれたわけだし、今ある材料で作れるだけ作ろうかな。
「今ある材料で作れるだけ作りますね。
うーん……。多分明日のお昼には出来ているとは思います」
「確認だが、ちゃんと睡眠は確保しての納品目安だよな?」
えっ!?そこ気にしちゃいますか……。
正直、睡眠と食事の時間をギリギリに削っての納品目安なんですよね。
オニギリの為に来てくれたから、なるべく早く納品した方がいいと思ったのですが……。
「いや、えっとですね……」
「アーヤ。まさか俺にビルデガルトさんに怒られろと?」
うわー……。
なんか凄い圧を感じます。
ああ、はい……。無駄な抵抗せずにちゃんと睡眠時間を確保して作ります。
クリスさんの静かな圧に、私は出来たら連絡しますと言うしかなかった。
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