第12話
いやまぁ、塩は錬金術で作れるからそれほど手間じゃないけど、オニギリを握るのは人の手だしオコメを炊いて塩の味付けするのも人の手……。
売るのはいいんだけど、数は作れないからどうしても少量になる。
しかも、おばあちゃんが作ると大変な事になるので、必然的に私が作らなくちゃいけない……。
錬金術の勉強をしながらのオニギリ作りは結構ハードでした……。
「それにオニギリを巻いている布? 袋? あれも錬金術だろう?」
「そんな事も知っているんですか!?」
「当たり前だろ? 俺はオニギリマスターだぞ!」
いや、そんな胸を張って言う事ですか?それに何ですかそのオニギリマスターって……。初めて聞きましたけど。
しかし、クリスさんがまさかオニギリの袋にまで気が付いているとは、ちょっと驚きです。
──突然売ると言い出した満面の笑みのおばあちゃんに、あー、これ逃れられないやつだ……。と、諦めるしかなかったので、売る為の事を真剣に考えなくてはいけない。
家族が食べるなら作った後はお皿に置いて置けばいいんだけど、売るとなるとそう言うわけにもいかないし……。と、考えていた私に、おばあちゃんがさっと何かを出してくる。
それは透明な……布?紙?
『おにぎりはこれに巻けばいいのよ! 後はこの封印シールで日付を書けば3日は保つわ!』
何て軽く言って出して来たのが、今も使用している錬金術で作成した包装紙と封印シール。
この包装紙、透明だけではなく、浄化が付与されている。
バイ菌?というのが繁殖しない為には必須との事。
そういう衛生管理を怠ると、体調不良を起こしたりして大変な事になるからなんだって。
あと封印シールには時間遅延が付与されている。
この封印シールを貼ってから特殊なインクで日にちを書くと、そこから時間遅延が発動するという仕組みのもの。
この三つが錬金術によって作成されている。
……。
オニギリを作るのに錬金術で作成したものを四つも使うなんて、どれぐらいの金額になってしまうのか……。錬金塩はそこまでコストはかかってないけれど、それでも絶対高いよね。
第一、素人の作ったオニギリを高い金額で買う人なんかいるのかな……。
『あらあら? アーヤは売れるか心配? これだけ美味しいのだから心配しなくても大丈夫よ!』
おばあちゃんの身内贔屓……って思ってたんだけど、売り出したら本当に売れ残る事がなかったからビックリした。
まぁ、このオニギリのおかげもあってか、私の錬金術の能力も上がったんだけど、なんだか素直に喜べなかったなぁ。
「えっとですね、実はそれ以外にも錬金作成物が必要なんですけど……」
「あー……。そう言えば封印シールもそうだったな。
そうなると難しいか?」
「いえ、出来ますけど……。
数があまり作れませんがそれでいいなら」
「幾つぐらいなら作れる?」
うーん……。
インクは一回作ったら百はいけると思うのよね。でも、封印シールの素材がちょっと微妙かも。
そうなると一回に作れるのは二十ぐらいかな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます