第11話
「まだ信じられないか?
なら、依頼内容を伝えよう。
俺がアーヤに作って欲しいモノは『オニギリ』だ」
……?
「えっ……。あの、オニギリって私のレベルでも作れるモノ何でしょうか?
多分まだ、作った事がないような……。
……うん、やっぱりすぐレシピが思い浮かばないので、錬金術では作った事がないみたいです。
私ではなく、他の、実際に作られた方に頼まれた方が……」
「はははははっ!
おかしな事を言うなアーヤは。
作った事がない? アーヤが作らず誰が作るんだ?
俺がビルデガルトさんの所に定期的に行っていたのは、アーヤが作るオニギリを食べる目的もあったんだぞ?」
あー……、やっぱり……。
なんか嫌な予感はしてたんだよねー。
いや、初めての依頼だし? どんな依頼だろうと全力を尽くして頑張ろうと思ったよ?
でもね……。
「それって、錬金術とは全く関係ありませんからっ!」
そう、クリスさんの言う『オニギリ』とは、錬金術で作るモノではなく、食べる物──料理で作る物の事だった。
そんな私の叫びを不思議そうに見るクリスさん。
「ん? 確かオニギリに使ってる塩は錬金術で精製したものだよな?」
「はい、そうですけど……」
そんな事よく知ってるなぁ。
──普通に塩はある。
よく売られているのは岩塩で、塊りで買えば値段は然程高くはない。
高くなるのは削られて売られているものだったりする。
より細かくなるほど値段は上がるけど、砂糖よりかは安くお野菜やパンとかに比べると高いけどね。
ただ細かく削られているとは言っても、小麦粉みたいにサラサラじゃないの。
一粒普通に摘めるぐらいの大きさなんだよね。
基本的に岩塩は煮たり焼いたりに使う時が多いから、普段は問題ないんだけどオニギリにそのまま使うには、頑張って細かく削ってもどうしても粒が大きくなりすぎて食感があまりよくないらしいんだよね。
おばあちゃんの希望でオニギリを作った時に、美味しいと言って食べてくれたんだけど表情になんか違和感があったから聞いてみたら、申し訳なさそうに教えてくれたよ。
その後に何回も、これはこれで美味しいよ!と言ってくれたけど、そうじゃないんだよおばあちゃん。
改善出来る余地があって、それが更に美味しくなるなら改善するべきなんだよ。
なら、オニギリにはどんな塩がいいかとおばあちゃんに聞いたら、天日塩がいいとの事。
天日塩かぁ……。
天日塩は作るのに手間と時間がかかるから必然的に物量も少なくて、だから当然値段も高い。
買えない事もないんだけど、気軽に使える代物じゃないんだよね。
それならどうすればいいかと考えたんだよ。
人の手で作るから高いというのなら、安く仕上げるには人の手を極力使わずに作るしかない。
人の手を極力使わずに作るにはどうすればいい?
それは──錬金術でしょう!
こういう時に役に立つのが錬金術なんだよねー。錬金術学んでて良かったよ!
それから試行錯誤の結果、錬金術で海水から塩を精製する事に成功。
頑張った結果が実ってあの時は本当に嬉しかった!
その出来た塩を使いオニギリを作って試食すると、確かに岩塩とは全然違う。
海水から作った塩の方がまろやかな感じ?
食感もそうなんだけど、味も違ってて驚いた。
さすがおばあちゃん。なんでも知ってるなぁ……。
海水の塩で作ったオニギリを食べてもらったら、おばあちゃんは懐かしいと言って喜んで食べてくれたし、おじいちゃんも美味しい、美味しいと言って食べてくれて、頑張って作ったかいがあったよ。
それからうちで作るオニギリは全て、海水からの錬金塩を使ってる。
そのオニギリを気に入ったおばあちゃんは『こんな美味しいものを広めないわけにはいかない!』と言って何故か売ることに……。
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