第5話
「あー、さっぱりした!
思った以上に土埃被ってたなぁ。まさか、ローブを水洗いしただけであれだけ水が濁るなんて思わなかった。
森の中と言っても、そんなに汚れるような場所に行った記憶はないんだけどなぁ……。
まあいいや。そんな事よりお仕事しなきゃ!」
私は錬金術用のローブを羽織ると、素材を入れた時忘れの箱を持って、倉庫へと向かった。
倉庫は工房部屋の奥にある。
侵入者除けと隠匿の法術を施し、出入り口には入室出来る人も制限する法霊具を取り付けている。
倉庫の中には、素材とかポーション類とか法霊具とか……。
とにかく大事な物が沢山あるから、簡単に侵入されないように厳重に管理をしている。
中には、売ったらかなりの大金が手に入るものもあるので、気をつけるに越したことはないし。
それに、私の大切な商売道具なんだから、大事にするのは当たり前なんだよね。
倉庫に着いたので、時忘れの箱からそれぞれの分類ごとに分けているアイテムボックスへと、今日入手した素材を振り分けていく。
時忘れの箱とアイテムボックスは同じ物だとよく思われてるけど、実際は違う。
──時忘れの箱は、その箱の大きさ分だけしか物が入らないし、重さも軽減されない。
そして中に入っている物そのものの重さが箱の重さにプラスされる。
アイテムボックスのように異空間?というのが設定出来ないので、重さも軽減されないという事なのだ。
時忘れの箱という名前の通り、中に入っている物の状態は入れた時のままだけれども、それもアイテムボックスのように永遠というわけではない。
中に取り付けられている魔石のランクや個数によって時間は変わるし、最初に作られた時に設定された時間までしか時を止めることが出来ない。
勿論、魔石の力を使って時を止めているから、魔石の中にあるマナが尽きる前に魔石を交換すれば時間を延長する事は出来る。
但し、魔石を交換する為に一度、箱の中に入っている物をすべて出さなければいけない。
要するに、時間制限のあるアイテムボックス劣化版みたいな感じ?
但し、内容量は決まっており、重さも軽減されず、且つ、コストがそれなりにかかるという……。
説明するの難しいんだよねー。
なんとなくニュアンスで分かってもらえればいいかなぁと思ってる。
たまにアイテムボックスと間違って購入する人がいるんだけど、その説明にいつも四苦八苦するんだよね。
第一、アイテムボックスなんかそんな簡単に作れないし。
すっごく容量の少ないアイテムボックスでも作るのがかなり大変で、生半可の腕では到底作れない代物なの。
容量の大きなアイテムボックスなんか、高難易度のダンジョンでドロップするか、アーティファクトぐらいしかないって言われてるし。
だから、小さいアイテムボックスでもかなりの金額がするんだよね。
それに比べると時忘れの箱はかなりお安い!ので、需要はかなりあるんです。
因みに携帯して持ち運べるものとしてマジックバックというのがある。
マジックバックの方がアイテムボックスに近い性能で、簡単に言えば箱と袋。常に持ち運び出来るか出来ないかという感じ。
冒険者の人達が特に愛用しているのがマジックバックになる。
但しこれも良いお値段がするので、かなり小さいものをようやく持てるようになるのが中級冒険者からという話らしい。
運が良ければ、早いうちにダンジョンから手に入れられる人もいるとか……。
因みに私も持ってます。
これでも錬金術師の端くれですからね!
と、言いたいところだけれど、実はおばあちゃんから貰ったの。
それを大事に使わせてもらってます。
さすがにまだ、アイテムボックスやマジックバックを作るレベルには達してないんだよね……。
時忘れの箱なら作れるんだけど。
でも大きいのはまだ無理なのが、悲しいところ……。
「とりあえず、これとこれと……。
んー。こんなんものかな?」
私はアイテムボックスから錬成に必要な素材を幾つか取り出すと、工房へと戻った。
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