第4話
「アーヤ、おかえりなさい」
続いて出てきたのはサクヤ。
足首まである長さのゆるふわの、髪先の方の色が薄くなっていくグラデーションがかかっているピンク色の髪と、まるで新緑のような緑色の瞳の持ち主で
どういう種族かと簡単に言うと、精霊に近い種族?
実は私もよく分かりません。
サクヤに聞いても説明が難しいと言われたし、おばあちゃんが言うには精霊に近い種族でいいんじゃないかしら?という事でした。
「今日も特には問題なかった?」
「うん。何も問題なかったよ」
「そう……」
外から帰ってきたら必ず聞かれる事。
そして私を上から順に一通り見て、納得するとその後お庭へと行く。
言葉だけではなく、私の姿をちゃんとチェックする事で嘘をついてないかを確認しているらしい。
着替えたり、怪我を隠してたら分からないと思うんだけど、そういう偽装?も見抜けるんだって。
樹精霊族って凄いんだね。
庭に行くのは、私が怪我もなく帰ってきた事を報告する為。
おじいちゃん達が近くにいないから、何かあったら心配だと、サクヤについて行ってもらえるようにお願いしたみたい。
カイルが、自分がいるから大丈夫だと何回も言ったらしいんだけど、聞き入れてもらえなかったとションボリしていた記憶がある。──そのションボリしていた姿がとても可愛かったのは、カイルには秘密です。
だから、サクヤは毎日私の事をおじいちゃん達に報告する為にお庭にある大きな木へと報告に行く。
なんかその木からおじいちゃん達がいる森の木へと、報告がいくようになってるらしい。
どういう仕組みか全く分からないのは種族が違う所為なのかな。
以前教えてもらっても、あんまりよく分からなかった。
おばあちゃんも、相性があるからねと言ってたし。
『今日はこのあとどうするんだ?』
「うーん……。とりあえず素材を時忘れの箱に保管した後、お風呂に入ってからポーションを幾つかと解毒薬を作ろうかな?」
『明日も行くのか?』
「勿論。この周辺で何が採れるか把握したいし、朝はいつも通り森へ行くよ」
『なら俺も一緒に行く』
「一人で大丈夫だよ?」
『俺が飽きた。流石に十日も思いっきり走れないのは退屈で身体が鈍る』
「なら、しょうがないね。明日一緒に行こう」
カイル一人では町中も無闇には歩けない。
森には出られるだろうけど、出たら次は簡単に町に入れないから、基本お留守番の生活をしてもらっていた。
今までは好きな時に外に出て走り回っていたから、窮屈な生活をさせていて申し訳ないなぁと思っている。
──町には町のルールがある。
それを新参者の私達が破るわけにはいかないから……。
私の落ち込んだ様子が分かったのか、慰めるようにカイルの尻尾が私の手に軽く触れた。
『気にするな。俺がアーヤについて行くと決めた事だ。多少の窮屈な思いも我慢できる。
妹を守るのは兄の役目だろ?』
ニッと笑顔を浮かべると、颯爽と部屋を出て行った。
カイル……。
家族の私ならそれが笑顔だと分かるけど、知らない人が見たら威嚇されているのかと思うよ?
まあでも、私を元気づけようと笑ってくれたんだから何も言わないけどね。
優しいお兄ちゃんだよ、本当に。
さあてと、カイルに言った通りに、素材を箱に入れてからお風呂に入ってこようっと。
流石に森の中にいたから、全体的に土埃が付いている気がするしね。
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