第196話 モニタリングルームでは。
あたしは竹崎美優。高校一年生よ。
今、あたしは千尋お姉さまを救うための実験中であり、その実験のモニタリングをしているところ。
パソコンの4枚あるモニター画面には、部屋の定点カメラで撮影された映像。さらにはお兄ちゃんや麻友ちゃん、そして千尋お姉さまの腕に取り付けてもらっているリストバンドから送られてくる心拍数や血圧、血中酸素濃度、体温などを逐一チェックできるようにしてある。
で、まあ、これを本来はあたし一人ですべてのデータをチェックしながら、気になる項目があれば、すべてノートパソコンの方に記録として残していく、という作業を行っているわけ。
—————なんだけど、今日はそうではなかった。
隣にはすっごく怖い顔をした千尋お姉さまが一緒にいたりするのである。
ちらりとあたしは千尋お姉さまに視線をやる。
千尋お姉さまは腕を組みながら、ムフーッ! ムフーッ! と鼻息が荒くなっている。
「ねえ、美優ちゃん?」
声は優しい。でも、お顔は怖いんでしょ? という予測がついてしまいそうな声であたしの方に声をかけてくる。
見るデータが豊富なため、できれば集中していたいのだけれど、さすがに千尋お姉さまを無視することもできない。
「えっと、なんでしょう?」
あたしはノートパソコンの手を休ませることなく、返事をする。
忙しそうな様子に千尋お姉さまも少しは理解して欲しいんだけれどなぁ……。
「これっていつも見られちゃってたりするわけ?」
「え?」
「いや、優くんの寝室に定点カメラが何か所も設置されているでしょ?」
「ええ、まあそうですね」
「じゃ、じゃあ、いつものエッチも見られちゃってるの!?」
耳までリンゴのようにお顔を真っ赤にした千尋お姉さまが、少し慌てふためくように言う。
あー、千尋お姉さま、やっぱり可愛いなぁ………。
あたしの横には、同級生であり、麻友ちゃんの妹でもある由美ちゃんがスタンバイしている。
まあ、彼女はあたしの助手的な役割を果たしてくれている存在だ。
てか、自身のお兄ちゃんがエッチなことをしている姿を見続けてきたあたしが言うのもなんだけど、妹としては姉の淫れている姿をどうとらえているのだろうか……。
ん? あたしはどう思っているのかって?
千尋お姉さまのエッチな声が可愛い。
千尋お姉さまの恥じらう姿が可愛い。
千尋お姉さまの絶頂を迎える姿が可愛い。
つまり、お兄ちゃんは別にみていない。
あたしにとっては、千尋お姉さまが可愛ければすべて良しなのだ!
あたしがどや顔をすると、千尋お姉さまが小さく身震いをする。
「ちょ、ちょっと? 何だか、やましいことを考えていない?」
「やましいだなんて失礼です。あたしは本能の赴くまま生きているのですから」
「いや、それ、やましいこと考えてますって言い切っているようなものだよね?」
「あはは……そうかもしれませんね。えっと、カメラのことでしたっけ? それについては気にしなくても大丈夫ですよ。バッチリ写ってますから!」
「それって安心できないよね!?」
「ええっ!? 何が不満なんですか!? 千尋お姉さまのために色々とやっているのに!?」
「いや、そうなんだけれど、私としてはエッチしている姿をこうやって見られているっていうのは、少し安心できないというか……、その、プレイに問題が出てくるっていうか……」
ええ!? そこですか!?
そんなプレイをしたいんですか!? もしかして、千尋お姉さまってちょっとMッ気、入ってますよね!?
「あ、でも、そんなこといいながら、いつもすっごく激しいのをヤっているじゃないですか」
「う………。ま、まあ、そうなんだけれど……」
「だから、今まで通り、エッチなのを見せてくださいね! 期待しています♡」
「いや、そこ、期待されるところじゃないんだけど……」
顔を引きつらせながら、あたしにそう突っ込んだ後、モニターに視線を戻し、
「それにしても、麻友ってお口でするの上手いのねぇ……」
「麻友お姉様は淫夢魔の中でもテクニックは最強ですから」
由美ちゃんがモニターをぼーっと眺めながら、そう言う。
「テクニックねぇ……。やっぱり違うのかな……?」
不思議そうに問いかけてくる千尋お姉さまに対して、
「まあ、さっきの映像を見て判断できる部分であれば、お兄ちゃんのこれまでのおフェラに比べて射出量がケタ違いなんですよね」
「う………。何だか、私が下手くそみたいじゃない」
「いや、下手くそじゃなくて、麻友ちゃんに比べたら下手だと思いますよ……。まあ、こればかりはお兄ちゃんに感想を聞かないと分からないですけれどね」
「ええっ!? あの子に聞かなきゃならないの? それはさすがに嫌かも……」
まあ、麻友ちゃんのことだから、マウントを取って千尋お姉さまを見下しちゃうだろうなぁ……。
それに千尋お姉さまもプライドが高いからなぁ……。
そんなこんなしているうちに、お兄ちゃんと麻友ちゃんは本番直前の状態。
しかも、お兄ちゃんのくせに、焦らしテクニックまで使っているなんて————!
「ね、ねえ、美優ちゃん?」
「ど、どうしました?」
「正直、このモニタリング、胎教には明らかに悪いわね……」
「あはははは……。そう思うなら、お部屋を退場された方がいいかもしれませんよ?」
「そ、それは嫌よ! だって、優くんがNTRれる瞬間なんだから———!」
「お姉さま? 何をしてんの?」
あたしはどこぞのユーチューバーのようなツッコミをいれたのであった。
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