第194話 比較実験という名のエッチ。

「でも、ちぃちゃんが精神的に弱くなっているっていうのは……?」

「ああ、それは間違いなく、信頼できる人ができたからってことだと思うな」


 麻友は淡々と答える。

 いや、そう言われると事実、嬉しいわけだけれど、何だか、恥ずかしさが込み上げてくる。


「確かに千尋お姉さまにとって、お兄ちゃんは信頼できる心を許せる人だと思うんですよね」

「でも、アホになるのは違うと思うわ……」

「あ、そこは厳しいんですね」


 美優が麻友に対して、突っ込む。


「と、とはいえ、私が優くんのことを好きなのは間違いないでしょ? それなのに、どうして今になって優くんとエッチしたいなんて言うのよ!」

「あーそれ? いや、美優ちゃんから比較実験がしたいらしくて……」

「比較実験?」


 うーん。妹よ。ついにボクのことをモルモットか何かと思うようになってきているのだろうか。


「おっほん! ここからはあたしが説明させていただきますね!」


 突如としてどこから持ち出したか知らないが、白衣姿となった美優が眼鏡をきらりと輝かせつつ、話し始める。


「要するに、お兄ちゃんと千尋おねえさまがエッチをしたときに分泌される物体……まあ、ここでは都合、エロホルモンと呼ぶことにしましょう」

「何だか嫌すぎる……」


 げんなりと千尋さんは呟くが、これに関してはボクも同意する。

 さすがに自分たちがエッチをしているときに分泌されている物質に対してエロホルモンとか……。まあ、よくよく考えれば正解なのかもしれないけれど……。


「このエロホルモンが少し気になったんです」


 美優は事も無げにそんなことを淡々という。

 てか、高校1年生の女子がどうしてそんなことに興味関心を持てるのだろうか。

 まあ、エッチなことというよりも、妹にとっては探究すべき事柄なのだろう。


「でも、私たちのエッチって何か問題があるの?」

「あれ? 千尋は気づいてないの?」

「ん? 何を?」


 麻友が千尋に対して言う。


「あんたたちがエッチをしているときに分泌される高濃度のエロホルモンの影響で、正直、あたしや美優ちゃんはいつも自慰が捗るんだけど」

「はぁ!? 何よ、それ?」

「いやいや、普通にあたしの方がツッコミたいんだけれどね。だって、あんたたちがエッチしている近く……まあ、隣の部屋にいても絶対に子宮が疼いちゃうんだもん」

「疼いちゃうんだもん、じゃなくて、何でそんなことが起こるのよ」

「それがあんたたち二人が放出しているエロホルモンなんだって。普通に媚薬効果があるのかな、と思ったんだけど、学校でもあんたたちパコりあってるじゃない?」

「そんなにしてないもん!」


 千尋さん、そのツッコミは学校でやってるってことを告白しているだけです。

 敢えてツッコミは入れなかったが、心の中では正直突っ込んでしまった。


「で、そのしていたときに一般の生徒に影響が出ているかというと、正直出ている雰囲気じゃないのよね。まあ、出ていたら、あたしや美優ちゃんが気づくはずだし」

「そうなんです!」


 美優が元気よくそこで同意する。


「だからこそ、千尋お姉さまとお兄ちゃんとのエッチの時に分泌されるエロホルモンにあたしは興味津々なんだよ~!」

「あ、あまり健全なテーマではないわね……」

「あ、大丈夫ですよ。学会に報告するときには、別の名称で言いますので」

「そ、それならば、今もそう呼んで欲しいものね……」

「じゃあ、千尋ホルモン? お姉さまホルモン?」

「………エロホルモンで良いです……」

「分かりました!」


 千尋さん、負けてるよ!

 とはいえ、そこで比較実験となるのか……。

 ボクは思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。

 まさか、幼馴染としてずっとその距離感で付き合ってきた麻友とエッチをすることになるなんて……。


「ま、まあ、仕方ないんじゃない? 私も身重だし、たまにはいいわよ!」

「いや、千尋? あんた、人がどの口でそんなことを言うのかしら……」

「と、ところで、麻友は初めてが優くんでいいの?」

「いいわよ? むしろ、光栄だとすら思っているもの。何だったら、ゴム付けずにやってデキちゃってもいいんだけど」

「それはダメでしょ~~~~~~~~っ!」

「まあ、運みたいなものだから。それに淫夢魔は妊娠しにくいってことで有名だし」


 麻友はテヘッと笑顔を作りながら、千尋さんを説得している。

 とはいえ、ボクとのエッチで本当に妊娠しないだろうか。

 正直、させないという自信がない。

 何だか、出来てしまいそうな気しかしない……。

 あ、もしかして、これってフラグ立たせちゃったかな?


「ゆ、優くん!」

「え?」

「優くんは麻友とエッチするのは、大丈夫なの?」


 ま、まあ、大丈夫かと言われれば、大丈夫とは言い難い。

 とはいえ、雰囲気が突入してしまうと、淫夢魔特有の誘惑でさらに気分が高まった時に果たして、ボクの精液が麻友に対して特攻をかけたりしないだろうか……。

 ボクは不安になりながらも、


「ま、まあ、エッチをすることは大丈夫……かな。背徳感とか、罪悪感は感じるけどね」

「うーん。それって何だか、精神的に重いよ……?」

「そんなこと言ってないで、さぁ! ヤろうよ! 優一!」


 麻友は目を爛爛と輝かせながら、ボクの腕を引っ張ったのだった。

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