第192話 仮説を立ててみた。
「ど、どうしたの? 美優ちゃん!?」
「ま、まさか、実のお兄ちゃんとエッチなことしたくなっちゃった!?」
千代さんと千尋お姉さまは、驚きつつ口々に話しかけてくる。
てか、お姉さま、あたしのことをどう見ているの?
「千尋お姉さま!? あたしがそんなことをするわけありません!」
「そうです! 美優さんは私と乳繰り合うんです!」
「ゆ、由美ちゃん!?」
何て子なのだろう……。
さっきまで存在感がないような感じだったけれど、いきなり登場するとは……。
そして、ここぞというところで、まさかのエゴを突き付けるなんて……。
意外とこの子、恐ろしい子ね……。
「て、そんなわけないでしょ!?」
「え、そうなんですか……」
しょんぼりしないで欲しい。
「あー、この後また研究に入るから、二人きりで手伝ってもらうから」
「うほっ♡ 分かりました!」
いったい、どこに興奮する要素があったんだろうか。
あたしには皆目見当もつかない。
興奮しつつ、笑顔なままでリビングのソファに再度腰掛ける由美ちゃんを横目に、
「えっと、話を戻しますけれど、先ほどのエッチを見させていただいていたんですけれど」
「ええっ!? 美優、見てたの!?」
「ええ、もうバッチリと……。千代さんが潮吹き絶頂アクメで白目痙攣起こした瞬間とか、千尋お姉さまが鬼ピストンでオホ声上げながら、痙攣仰け反り絶頂を迎えた瞬間とか————」
「「み、美優ちゃん、そんな生々しく言わなくていいわ……」」
あ、二人とも恥ずかしいって自覚はあったんですね……。
「この歳であんなに攻め立てられたのは初めてよ……。年甲斐もなく、ハッスルしちゃった」
「いや、ハッスルとか死語なんだけど……。ま、まあ、私もあんなに攻め立てられちゃうなんて、胎児への影響がないといいんだけど……」
いや、胎児への影響を気にするなら、まずエッチするな!
大人しくお兄ちゃんの精気吸っときなさいよ!
まあ、こんなズカズカとされているのだから、きっと生まれてくる子は淫乱な子になってしまうだろうなぁ……。
て、そんなことは今の問題ではない。
「お二人はあの時、何か思いませんでしたか?」
「え? すごく気持ち良かったわよ」
「……うん」
「いや、そうじゃなくって! お兄ちゃんの様子です!」
「うーん。私は優一くんと初めてシたからよく分かっていないけれど、まあ、普段の彼からは想像をかけ離れているようなケモノだったわね。あ、思い出すだけで、下半身が疼く♡」
「千代さんはバイブでも突っ込んでおきなさい……。千尋お姉さまはどうですか?」
「うーん。何だか、エッチしまくってるから、こういうものだろうって思いの方が先に来ちゃうんだけれど、改めて思い出してみると、エッチをしているときの優くんって興奮状態なのか、すっごく漢気溢れるのよね。もう、積極的な攻めとバッキバキのチ———」
「あ、それ以上言わなくていいです……」
何か、卑猥なことを言いそうになる千尋お姉さまを、あたしは制止する。
「つまり、お兄ちゃんって普段とエッチなことをするときは別人格になっていると思うんです」
「ま、まあ、そう言われればそうかもしれないわね」
千尋お姉さまも同意する。
が、真面目にではなく、やや頬を染めながら言うのは止めてほしい。
こら! 何を想像しているんだよ! 思い出しているんだよ!
「つまり、お兄ちゃんの香ばしい匂いは、人格の変化とともに分泌されているのではないかってことなんです」
「なるほどね。つまり、優一くんがエッチなことを考えたときには、まだ、大人しい彼だけど、段々その数値が上昇してくると、秘めたエッチな優一くんが出てくるってわけね」
千代さんが冷静に得心する。
「でも、そうなると何かが変わるの?」
千尋お姉さまは、そのあとの変化がどうなるのか、あまり掴めていないらしい。
「まだ、想像の段階ですけれども、お兄ちゃんは人格形成が変わると同時に、分泌される男性ホルモンが特異な変化が起こって、濃厚な精気が排出されるのではないか、と」
「ま、まあ、そんな特異体質は認められないけれど、でも、実際に私もさっき初めて感じた時は明らかに体内に高濃度なエネルギーを貰った感覚になったものね」
「そうなんです! だから、もしかすると、お兄ちゃんとのエッチで千尋お姉さまを助けることができるかもしれません!」
「え……。でも、優くんとのエッチは普段からしてることじゃない。どうして、私の方の体質は変化しないのかしら……」
「それはまだ何とも言えません。もしかすると、体内全体の血の問題ですから、そんなちょっとやそっとで浄化されないのかも」
「うう。精液って汚されるってイメージのものなのに、それが浄化するって表現になるなんて……」
由美ちゃん、言いたいことは分かるけれど、これは科学なのよ! 何が起こるか想像通りではないの。
「とにかく、もう少し調べようと思いますので、お二人には毎日、採決をお願いしますね!」
「「ええっ!? 血を取るの!?」」
「はい! だって、そうしないと分析できないじゃないですか。あ、もちろん、エッチしているときにもお願いしますね!」
「どうやって!?」
「千尋お姉さまは簡単じゃないですか~。絶頂と同時に噛みついちゃうんでしょ?」
「そ、そうだけれど……。その血で良いの? 明らかに私の唾液も絡んじゃっているわよ?」
「問題ありません! 千尋お姉さまの唾液はすでに分析済みですから!」
「え? 採取されたことないわよ!? いつの間に!?」
「それは秘密です♡」
あたしは右手人差し指を唇に当てて、そう言った。
さて、何だかワクワクしてきちゃった!
何だろう、この高揚感! きっとすごい実験になりそう!
もちろん、千尋お姉さまを助けるということが最大の目標だけれど、それ以上にきっと難問を突き付けられた時の喜びと同じね!
あたしはこの気持ちを抑えるのに必死だった。
まあ、周囲にはバレているだろうけれどね……。
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