第176話 バレンタインデー狂騒曲(20)

 うふふ……。

 私は朝から上機嫌だった。

 だって、念願だった強い精気を持つ人との子どもを宿したのだから。

 どうやって妊娠を感知したかって、不思議がっている子もいるようだから、簡単に説明しておくと、私たち魔力を持っている者は、その魔力を感知することができる。私や麻友のような上位層になれば、その魔力が微量であろうが、大量であろうが感知することもできる。

 そして、今、お腹に宿っているのは優一さんとの子ども。

 つまり、魔力が強い私と精気の強い彼との掛け合わさったわけだから、最初から魔力持ちとしてお腹の中に宿る。

 と、いうことでその魔力の発生によって、今、お腹の中にいる我が子に対して愛おしく思うわけ。

 え? そもそもそんなに早く受精するのかって? それも魔力持ちだからなのかって?

 うーん。こればかりは分からない。

 もしかしたら、優一さんの精気が強すぎて、私の子宮に飛び込んだ瞬間に私の卵子にアタックを仕掛けられたのかもしれない。

 そして、卵子も私同様に優一さんに「瞬堕ち」————。

 ああっ! ありえる! そして、とっても恥ずかしい………。

 とにかく、これで私の後継ぎは生まれる。

 私の黒き血は私の生命維持すらも危うくする呪われた血。

 言い方はあれかもしれないけれど、旬は今なの!

 今朝は邪魔が入ったけれど、優一さんとのイチャイチャは大好き。

 そして、今日から私は—————。

 私はもう一度、微笑むとベッドから起き上がり、制服に着替える。

 優一さんは先にシャワーを浴びるとかで、リビングに行ってしまった。

 私はサクッと着替えるて、リビングに出るとそこでフリーズしてしまった。

 えーっと、脳が? いいえ、身体もよ………。


「ゆ、優くん!?」

「え? あ、ちぃちゃん!?」


 私が驚きの声を上げると、優一さんの素っ頓狂な声が返ってくる。

 皆さんはイチャラブエッチをした後に、彼氏がおっぱいプリンのちょっぽり部分に吸い付いている姿を見たら、どのような反応をするだろうか……。

 えっと、普通にショックがでけぇーよ!


「ゆ、優くん、それは何かな?」


 私は表情をひきつらせながらも、何とか笑顔を保ったままで、尋ねる。

 優一さんは少し何かに気づいた様子で、


「え? あ、ああ……、美優からのバレンタインだよ」

「バレンタイン!?」

「うん。昨日渡せなかったから、今朝食べてねってLINEが入ってた」


 どうやら嘘入ってないようですね。

 とはいえ、当の本人はまだ寝室のようですが……。

 ああ、もしかしたら、昨日の種付けエッチをしてた声がマンションにしか防音結界を張っていないものだから、聞こえてしまったのでしょう……。

 しまった……。大失態だわ。

 それよりも、なかなかリアルなおっぱいプリンだなぁ……。

 私がそんなことを考えながら見ていると、


「あ、これ、すごいよね! わざわざ型取りからしたんだって」

「へぇ~………、ええっ!? 型取り!?」

「う、うん……」


 てことは、目の前にそびえ立つ、プリンの双丘は美優ちゃんのリアルおっぱいサイズ!?

 何て破壊力なんでしょう……。

 こ、これに比べたら、私のサイズなんてまるで丘……。

 一応、日本のエッチなビデオで研究はしていたから、ある程度は分かるけれど、巨乳と言われるくらいのサイズが私にはあると自負しているけれど、目の前のプリンは爆乳!

 それに優一さんが吸い付いている!?(本当は食べようとしてただけ)

 やっぱり優一さんは大きいおっぱいが好きなのね!


「ゆ、優くん……」

「ん? どうしたの?」

「あの……やっぱり、大きい方が好きなんですか?」

「え…………?」

「いや、あの! 別にそう言うつもりではなくて……。そ、そう! 日本の男子のエッチさに関する調査です!」

「ちぃちゃん……」


 優一さんは、スプーンを皿の隅に置くと、そのまま私の方に近づいてくる。

 ああ、ダメだな……。私はこういう時、本当に気が弱い。

 そっと私の横に来た優一さんは、後ろから私を優しく抱きしめて、


「これは妹の美優がボクのことを思って作ってくれたものだから、こうやって美味しくいただいているんだよ。まあ、美優の発想がぶっ飛んでるからこういうエッチなものになっちゃったけど、ボクとしては他意はないよ」


 何だろう。そういう言葉を掛けてもらえるだけで私の心はすっと軽くなるような気がする。

 そして、優一さんは私の耳元に顔を近づけ、


「ボクはちぃちゃんが大好きだよ」


 ピクンッ!

 思わずその声に全身が小さく震えてしまう。


「ちぃちゃんの透き通るような白い肌、そして、妖艶な赤い瞳。ボクに対して気を使ってくれているところ……。それと、弱点を触れられた時のエッチな吐息………」


 優一さんがすっごく攻めてきてる!?

 も、もう! 朝からすでに一発ヌいたのに、まだ足りないっていうの!?

 それに———————、


「あ……♡ ダメ………」


 優一さんの手はいつの間にか、私の胸を刺激する。

 ソフトに指先でこねるように………。

 スイッチ、入っちゃう………♡


「……………キスぅ♡」

「こうやって求めてくるのもギャップがあって好きだよ」


 もう! こうやって私は優一さんの指先で転がされてるのね……。

 ちょ、チョロインなんて言わないで!

 こ、これは優一さんのフェロモンが私を刺激してるからなんだから…………。

 たぶん…………。そう信じたい私だった——————。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る