第175話 バレンタインデー狂騒曲(19)

 パチュンッ! パチュンッ!


 千尋さんが激しく上下に屈伸運動をすると同時に、ボクと千尋さんの絡み合う愛液は卑猥な音を立てる。

 杭打ち—————!

 杭打ち騎乗位とは、女性が騎乗位で男性の上に跨って上下に激しくピストンをする体位のことをいう。騎乗位には、「前後のグラインド」の動きと「上下」の動きがありますが、基本的に女性にとって「横のグラインド」の方が、筋肉を使わないで楽にできて、快感も大きい。しかし、男性にとっては「上下」の動きの方が、ピストンストロークも大きくなり快感も得やすい体位となる。また、上下の動きから女性の胸の揺れも発生しやすく、結合部分も見えるので視覚的快感も得やすいし、ピストンの音も大きく、犯されている感も高まるので、より支持されやすい。


「ち、ちぃちゃん!?」

「あぁんっ♡ ヤバッ! これ、本当に内臓まで響くぅ………!」


 ウチの彼女が学校では清楚可憐だったけれど、本当は吸血鬼で超絶エロいセックスをする件………て、タイトルに変えようかな。

 いやいやいやっ! 何を考えているんだよ!!

 朝からこんな激しい攻めをされて、ボクだって黙っているわけないだろ!?

 て、すっげぇ~、さっきから吸い取られるような感覚が襲ってくる~~~~~!!

 本当に千尋さんって、吸血鬼なのか!?

 実は麻友と一緒で淫夢魔なんじゃないだろうか……。

 ボクも「ふんぬっ!」と腰を突き上げる。


「オホッ♡ 優くん、や、やるぅ~~~~」

「……………え?」


 千尋さんはそういうと、さらに激しく揺さぶりをかけてくる。

 ああ…………。ダメだ…………。

 折角睡眠することで蓄えられた子種はすべて吸い取られるんだね……。

 ボクは悟りの境地に至っていた。

 いや、もしかすると現実逃避をしていたのかもしれない。

 それほどまでに意識が飛びそうなくらい、気持ちよかった。


「んがぁぁああぁぁぁ……。も、う、だ、め………」


 ボクの脳内で警告シグナルが鳴り響く。

 もう、ダメです。発射します、と。

 が、その果てつ瞬間に————————。


「きゃっ!?!?!?」


 千尋さんの悲鳴と共にヌルッ! と抜かれる感覚に襲われ、同時にそれがこの上なく気持ちいい快感を呼び起こしてくれる。


「はむ。」

「ぬぉぉおおぉぉぉっ!?!?!?」


 その瞬間に、吸い付かれた~~~~~~~!!!

 ボクは耐えようもなく、脳内のカウントダウンは「ゼロ」が伝えられた。

 全身に広がる解放感——————。

 ボクの朝の一発が終わった。


「ちょっと! 麻友!? いいところだったのに!」

「何言ってるのよ……。千尋? 今日はあたしの日だよ? 妊娠したからって、勝手にルール捻じ曲げないでよね!」


 そういう麻友の口には、飲み干せなかったボクのものが少し垂れている。


「ううっ!? そ、そりゃ、まあ、そうだけれど……。でも、明らかに優くんも私のテクニックで高揚していたのに、どうして、私だけはイケないまま終わらされちゃうの!?」

「じゃあ、エロスライムでも使う?」

「……あ、それは勘弁。あれ使うと、トリップして戻ってこれなくなるから……」

「経験者は語るって奴ね」

「嬉しくもないわ! あれは修行の一環なんだから仕方なかったのよ」

「そう。でも、千尋のお母様が先日、その時の映像を見て、少し興奮してたわ……。あの子も大人になったのねって」

「うあ。ウチの両親、本当に趣味悪ぅ………」

「まあ、あなたの成長過程を観たかったのだから仕方ないでしょう?」

「いや、だからってあんな醜態を焼きつけなくても……、て、ちょっと待って? どうして、麻友があの時のことを知ってるのよ?」

「そりゃ、千代さんと一緒にその時の映像を見たから……。ああ、ちなみに優一のスマホにも送っておいたから。何だか、不確定なバグが起こったらしくて、削除できないようになっているから、寂しいときは使っていいわよ?」


 え? ここって喜ぶべき?

 ボクは音もたてずに自分のスマホを手に取る。

 どうやら、ご丁寧にボクの指紋認証がなければ開かない仕様にまでなっているではないか。

 開いてみると、千尋さんがスライムに全身を貪られ、弄ばれ、激しい痙攣を繰り返している自慰映像がエンドレスで続いている。

 千尋さんの喘ぎ声だけで、何発もヌけてしまうボクにとっては最高の自慰用映像だ! し、しかも、ヘッドホンを通して聴いてみると、ASMRのように耳元で囁いている声が聞こえる!?

 こ、これはもうボクがエロスライムになり切って、千尋さんを犯しているような錯覚に—————。


「優くん? 何してるの?」


 ボクのヘッドホンは強制的に耳から外され、一気に現実に引き戻される。

 笑顔だけれど、明らかに目が微笑んでいない彼女がそこに————。


「優くん? 折角、身重な彼女がいて、それでもいつでもエッチなことをしてもいいよって言ってるのに、そんな動画使ったりしないよねぇ~?」


 ボクは無言で、コクコクと首を縦に振る。

 ここでは少しの間でもアウトだ。

 とにかく、千尋さんの意見に賛同しておかねば……。

 とはいえ、明らかにボク得な映像なので、これは今後、どこかで使えそうなのは間違いない。


「まあ、分かればいいの」

「それにしても、まさか、バレンタインに妊娠決めちゃうとか、策士だねぇ~」

「ば、バカ! そんなつもりじゃないわよ……」

「え? だって、排卵日をドンピシャになるように調整してたじゃん」


 そんなことを悪魔の類はできちゃうのか……。

 少し顔を主に染めつつ、千尋さんは、


「ま、まあ、そうよ。私だっていつまでも待っていられないもの!」


 敢えて、最期の時が近づいているということをここでは出さずに、素直に妊娠できたことを喜んでいたようだ。

 それにしても、ボクがもうお父さんになるなんて…………。

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