第171話 バレンタインデー狂騒曲(15)
どうもこんばんは~、竹崎美優です。
頭脳明晰でお兄ちゃんの高校にこれまで誰も合格したことがない特別入試で合格した秀才と言われています。
あー、でも正直、そういうのは何だか話が重いし、面倒なので、あたしはやりたいことをやろうと思っています。
もちろん、大好きなお兄ちゃんの傍で————。
とはいえ、お兄ちゃんにあんな可愛い彼女がいたとは思いもしませんでした!
どうやら、錦田千尋さんという方で、あたしも口止めされちゃいましたけど、彼女は吸血鬼の始祖なんだとか……。
それに今までは、幼馴染だと思っていた麻友ちゃんは淫夢魔なんだとか……。
お兄ちゃんの周りには危険がいっぱいです。
と、思っていたら、お兄ちゃんからはあたしのおっぱいのほうが危険認定されちゃいました。
いやいや、あたしのおっぱいは確かに千尋お姉さまや麻友ちゃんに比べたら大きいけれど……。危険認定されるほどのものなんでしょうか……。
それを言うならば、お兄ちゃんの下半身にある分身の方こそ、危険極まりないような気がします。
かくいう、今もお兄ちゃんは何やら、顔が赤くなっていたように思います。
別に熱を出しているというわけではなく、あれは興奮状態の雄の顔……といったところでしょうか。
そんなお兄ちゃんがお風呂に一緒に入ろうと、千尋お姉さまが誘われている!?
ぜ、絶対にそれだけは避けた方がいいですよ!!
で、でも、すでに千尋お姉さまもご無沙汰な感じでお兄ちゃんのフェロモンの虜になっているようだし……。
あー、日が悪かったということで、今日は千尋お姉さまには頑張ってもらいましょうかね。
二人がお風呂に入ったのを確認して、あたしは再びリビングに戻ってくる。
どうやら、シャワーの音から察するに、千尋お姉さまが背中を洗ってもらっている様子。
とはいえ、だんだん甘い吐息のような声が漏れ出しているような……。
『……き、気持ちい……い…………♡』
お風呂場の脱衣所をそっと覗き込んでみると、シルエットが見える。
千尋お姉さまが壁に手を添えて、そこにお兄ちゃんが攻めに徹している様子。
『優くん……キスぅ………♡』
おいおいおい! 清楚可憐な優等生の千尋お姉さまがお兄ちゃんに対して、キスのおねだり!?
千尋お姉さまがお兄ちゃんに対してはメロメロになっているというのは知っていたし、これまでの情事からも察することができた。とはいえ、これはちょっとばかりやばいのでは!?
すでにメス堕ちしてるんですけれど!?
シャワーの音に入り混じる、クチュクチュという淫靡な音。
キスをしているのだろうか………。
『そ、そこ……気持ちい……い………』
キスじゃなかった——————————っ!!!
シルエットに映る千尋お姉さまの両足がぴんとまっすぐになり、お尻を高く突き上げている。それこそ、お兄ちゃんに吸い寄せられるように……。
『ちぃちゃんは欲しがり屋さんだから』
うわ。何ですか、そのセリフは……お兄ちゃん。
そんなのエロ本でしか見たことがないですよ。てか、まさか、そんなエロ本のセリフを血のつながった人間から聞くことになるとは……。
シルエットですらわかるお兄ちゃんの分身にあたしは思わず唾をのむ。
きっと、目の前で生で見ている千尋お姉さまは唾ではなく涎ものだろう。
「あー、やっぱりこうなったか……」
「ま、麻友ちゃん!?」
「しぃ~。気づかれちゃうよ」
「いやいや、どうして麻友ちゃんがここに?」
「まあ、あのバカが作ってたバレンタインチョコで気になることがあってね……。戻ってきたの。そうしたら、案の定、優一の奴にメス堕ちされてる吸血鬼の姿があったってわけ……」
「千尋お姉さまが用意したバレンタインチョコに何か問題でもあったんですか?」
「問題も何も……。今、優一がああなっているのはすべて、あのチョコが原因なのよ……」
「ちょっと意味が分からないんだけれど……」
「千尋が作ったドライフルーツのチョコレートコーティングはね、実は媚薬のようなものだったってこと」
「媚薬!?」
「しぃー! だから、声がでかいって……」
『おぼぉっ♡ お、奥……当たってりゅ………』
「……………………」
「……………………」
あたしたち二人は目を点にして、無言で何かを悟る。
「あの声では、こちらの声は聞こえなさそうね」
「ええ、あたしもそう思いました……」
あたしたちが妙な納得の仕方をしている奥の方では、千尋お姉さまが快感に襲われながら、淫らな喘ぎ声を漏らし続けている。
「いやぁ、幼馴染ながら、エロいねぇ……」
「ちょっと! 現実逃避しないでください! あのチョコレートに何が問題なんですか!?」
「あのチョコレートのドライフルーツが問題なの。あれは魔界で常備的な使われ方をしている保存用の媚薬みたいなものなの」
「魔界の住人ってみんな性欲魔人のような人ばっかりなんですか……?」
「違うわよ! ただ、あたしたちにはラム酒入りのチョコくらいの感覚で食べるのよ」
「あー、なるほど……。でも、人間にはかなり効果あるんじゃないですか!?」
「そう。だから……、ほら」
と、顎で浴室の方を指す。
あちらはあちらですでにラストスパートのような激しさになっている。等間隔で刻むようなパンッ! パンッ! というストロークがあったかと思うと、パパパンッ! と鬼打ちを見せる。
「お兄ちゃん……エッロ……」
「まあ、優一もケダモノ化しちゃってるからねぇ……」
「あれ? 無音になりましたね……」
『お…おお…お……おおぅ♡』
「な、何ですか!? 今の声は……」
「わざわざ解説させないでくれる!? きっと奥をほじられたんでしょ……。敏感なところをグリグリされたから、ああいう声が出たのよ……」
「麻友ちゃん、詳しいですね……。もしかして経験が……」
「あ、あたしのことはどうでもいいの!」
あー、やられたことがあるんですね……。
あたしは麻友ちゃんが頬を朱に染めて視線を逸らすのをきちんと気づいていた。
が、麻友ちゃんはすぐに普段の表情より重ための表情をして、
「それにしても、千尋のやつ、何を焦ってるんだか……。まあ、理由は分かってはいるけれど……」
「え? 千尋お姉さまがどうかしたんですか?」
「千尋は焦ってるの……。はぁ……。普段は冷静なのに、本当にバカみたい……」
ため息交じりに麻友ちゃんはそう吐き捨てると、右手で髪の毛をクシャクシャと掻いた。
その表情から何か、深い意味があることはあたしですら感づいた。
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