第149話 突然の再会。
前は彼女の前で自分が攫われた。
そして、今回は彼女が自分の目の前で攫われた。
…………………………………。
「これほどまで悔しいものなんだな……。そして、同時に辛さで心がいっぱいになる……」
ボクは滲み出る涙が我慢できそうになかった。
目尻から溢れ出したそれは、頬を伝い、床にポタリポタリと落ちる。
「「ゲホッゲホッ!!!」」
感傷に浸っているボクの傍で、あまりにも場違いな咳が聞こえる。
怒りに任せて、思わず叫んでしまいそうになるが、そこには見知った人物たちがいた。
「あれ? お兄ちゃん!」
「おおっ! 優一じゃない!」
そこには、麻友と妹の美優の二人が立っていた。
————何で?
と、思った瞬間に、暴力的な柔らかさにボクの顔面が挟まれる。
ぬぉぉおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉっ!?!?!?
「あ~ん! お兄ちゃんったら、もう、エッチぃ~♡」
「ちょっと! 美優ちゃん! あんた、自分で押し付けておいて何言ってるの!?」
「そう言いながら、麻友ちゃんだって、しっかりとお兄ちゃんの股間に手を伸ばしているじゃないですか!」
「ち、違う! これは条件反射ってやつだ!」
「条件反射で、股間に手を伸ばすって、どんな生活しているんですか!?」
「し、仕方ないだろう! 優一が行方不明になってから、私は精気を吸ってないんだ! このままでは萎れて死んでしまうだろう?」
「別にお兄ちゃんのじゃなくても、誰のでも吸えばいいのです!」
「いやいや、少量でも最高のエネルギーを回復できる。こんなバランス栄養食あるか?」
「いや、まあ、分からないでもないですけど……」
目の前の二人のやり取りを見ていて、ボクは思わず「ぷっ」と吹き出してしまう。
そして、ボクは二人に向かって、
「助けに来てくれたのか?」
「まあ、あんたが必要としたからって感じかな」
「あたしは巻き込まれただけだよ!」
「そういえば、どうして美優も一緒なんだ?」
「いやぁ~、まあ、話せば長いんだが……」
麻友が何やら言いにくそうに、視線を空に向けている。
何が言いにくいというのだろうか? それに何やら、足などがべたついている……。
「さっき、あたしが麻友ちゃんに性感マッサージをしてあげてたんですよ!」
「ぶふぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」
「こ、こらぁ! 言うなよ! あー、もう恥ずかしいんだからな!」
「な、何で、そんな状態に……?」
「あー、お兄ちゃんが誘拐されてから、麻友ちゃんが精気を吸ってなかったでしょ?」
「ああ、さっき、そう言ってたな……」
「で、体内の魔力のめぐりが悪くなっていたので、あたしの繊細な指先で最高のテクニックを見せつけてあげたってわけ!」
「最高のテクニック……」
思わずボクの喉がゴクリとなってしまう。
目ざとく、それを見逃さなかった美優は意地悪くこちらに微笑みかけ、
「あれ? もしかして、お兄ちゃんもご希望かな? お兄ちゃんにはあたしのお胸も使った特別メニューで、
いつから、ボクの妹は怪しい大人のお店の店員のような状況になったのだろう。
てことは……、先ほどの麻友のスカートの下から足元に垂れているのは……。
「で、麻友ちゃんの気の流れを整えていたら、思いのほか、性感帯を刺激しすぎちゃってさぁ~。ただただ、痙攣がやばかった……」
「も、もう! それ以上言わないでって! ハーフの吸血鬼に淫夢魔がこれほどまでにイかされてしまうなんて、本っ当に恥さらしもいいところだわ」
「んふふ♡ でも、気持ちよかったんでしょ?」
「———————!?」
「あー、別に嫌なら、次回からしなくてもいいけれど?」
「———————!?!?」
あれ? 何だか、麻友の様子がおかしくない?
何やら、足をモジモジとさせてしまっている。
美優はそっと麻友に近づき、耳タブをハムッと甘噛みし、そして、自称テクニシャンの右手がスカートの中に………!
このあとのことは敢えて言わないでおこう……。
麻友にも威厳というものが、わずかながらも存在しているはずである。
まさか、自分よりも年下の小娘に、気持ちいいところを弄られて、○○《ピーッ》とか可哀想でならない……。
「あ、そういうわけで、あたしは明らかに巻き込まれたって感じなんだよねぇ~」
「つまり、さっき偶然、ちぃちゃんのカバンの中から放り投げた四角い箱が、強制転送装置の役割を果たしたということなのか?」
「まあ、そういうことよ」
麻友はキリッとした表情で、自分が手助けしたことをありがたく思ってほしがっているようだ。
いや、まあ、確かにあの場では助かったのは事実だが……。
それにしても、下半身がスースーしないのだろうか……。履いてない状態って……。
て、それはどうでもいいか……。
「で、本当は千尋にそれを託してあったんだけど、千尋はどこ?」
麻友がボクに聞いていたことで、ボクは再び視線を落とす。
ボクは言葉少なく、先ほどまでの話をした。あ、もちろん、エッチをしていたところは、内緒にしておいた。
そうでないと、お二人の性欲が爆発寸前なのは、マッサージの件でも分かったことなので。
「とにかく、千尋お姉さまを探せばいいんですよね!」
「それにあたしの兄貴が暴走してるのを止めればいいのね?」
「いや、そんなに息巻いているけれど、ちぃちゃんの場所、分かるの?」
ボクが困惑気味に問いかけると、美優が大きな胸をぽよよん!と叩いて、
「当然じゃないですか! あたしと千尋お姉さまの関係ですから、匂いで分かります!」
「それ、本人の前で言っちゃダメよ。絶対に嫌がると思うから……」
麻友のツッコミもほどほどに、ボクたちは千尋さんを探すため、部屋から出るのであった。
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