第147話 優くんが目覚める?
タン! タン! タン! タン!
リズミカルな音と同時に体に衝撃が走る。
そして、そのリズミカルな音は少しずつ早くなっていく。
「オホッ♡ ちょ、ちょっと!? 優くん! は、早いって……」
「…………………」
優一さんは何も言わずに私の腰、そしてお腹の中に力強く叩きつける。
チカチカッ!?!?
やばっ……。意識が飛びそうになるぅ……。
ああ、さっきからイキ過ぎてて、頭おかしくなっちゃうぅぅぅぅぅっ!!!
て、どうして……、どうしてこうなっちゃんたのぉぉぉぉぉつ!?!?
目の前にいるゼヌニムに対して、私は怒りの覇気をぶつける。
私の大好きな優一さんに手をだそうとしていたのだから、当然の報いである。
「そ、そんなの怖くないんだからね!」
「強がり? 口ではそう言っているけれど、本体はそうでもないようね」
私は少しずつ間合いを縮めつつ、ゼヌニムが小さく震えているのを見逃さない。
しかし、ゼヌニムも淫夢魔三傑の一人だ。
これだけのことで怯んでいるようではない。
「誘引!」
彼女がウィンクすると同時に周囲にピンクの瘴気が一気に広がる。
なるほど……媚薬の類いのものかしら……。
少しだけ性感帯がムズムズとすることから判断できる。
が、優一くんのフェロモンに比べたら、私にとってはこの程度、ラベンダーの香りに近い。
「う、うそ……なんで誘惑されないのよ!? 何で、堕落しないのよ!?」
「あら? ごめんなさい。この程度の芳香剤でなんとかなると思っていたの?」
「ほ、芳香剤!?」
「まあ、芳香剤にも満たないかもしれないけれど……。匂いはいいかもしれないけれど、堕ちるまではいかないわね……」
「ど、どうして堕ちないのよ! …………まさか!?」
「ん?」
「その男ですでに堕ちているとか!?」
「———————!?!?!?!?」
し、しまった……。動揺がもろに表に出ちゃったじゃない……。
私は何事もなかったかのように、ゼヌニムの前に仁王立ちする。
「そうよ? わ、私は優くんのもの……。優くんも私のもの……。相思相愛なんだから……」
「それにしては、かなり動揺していたけれど、もしかして、エッチでメス堕ちさせられたりしたの?」
「シャラァァァァァァップッッッッ!!! 黙りなさい! 私と優くんがどのような愛し合い方をしているかなんて、あなたには関係のないことだわ」
「そういえば、ラアムお姉さまが言ってたわ……。エッチが激しすぎて、見ている方まで感じてしまうって……。まさか、あなた、本当は淫夢魔なんじゃないの!?」
「失礼ね! 吸血鬼よ! た、ただ……彼との相性が並以上にいいだけよ」
「そう……。でも、この『誘因』が全く効いていないわけではないようですね。メスの匂いがしますよ?」
「そうね。確かに潤いだしていることは確かだけど、それほどひどい状況じゃないから……。それにこの技はあなたを抹殺するか、気絶させれば排除することも可能なんでしょう?」
「あ、あたしがわざわざいうわけないでしょ!?」
「それもそうね……。じゃあ、試してみましょうか……」
私は意地悪くにやりを微笑むと、両腕を広げ、大の字を作る。
その爪は吸血鬼モードに変化しており、鋭い刃のような状態になっている。
「たぁ~っぷりと引き裂いてあげる!」
「ひっ!?」
タンッ!
私が床を蹴ると、瞬時にゼヌニムの間合いに入る。
息する間すら与えないとは、まさにこのことだ。
私はそのまま、小刻みにゼヌニムを切り裂いていく!
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
ゼヌニムの悲鳴がこだます。
とはいえ、この部屋も防音設計になっているようで、彼女の悲鳴は廊下にすら漏れない。
あー、ここ素敵だなぁ……。ウチのマンションも……いや、私と優一さんの寝室だけでもこの仕様にしてもらえたら、最高に喜ばしいことになるんだけれど……。
て、そんなことしたら、高校生の間に我慢できなくなって、子どもが生まれちゃうか……。
それはダメだよ! 私! ここは自重しなきゃ!
「てかさ、何が『きゃあ~』よ。単に服を切り裂いただけでしょ?」
「あ、いや、体ごと引き裂かれるかと……」
「なかなかグロテスクね……」
「へ? しないの?」
「しないわよ……。ただ、この霧は邪魔だから、あなたを気絶させるわね」
「堂々と宣言しないで! て、どうやってやるつもりなのよ!」
「こうやってよ」
と、私は彼女のささやかなお胸にある小さなちょっぽりに爪を触れ、
バリバリバリィィィィィィィィッ!!!!!
「あがぁ!?!?!?」
一気に電流が解放され、ゼヌニムは大量の電流を流す。
嗚咽にも似た悲鳴とともに、彼女は白目を剥いて、そのまま床に倒れ伏す。
まあ、何とも呆気ない勝負だったということだ。
「やっぱり予想通り、霧は消えたわね」
私は周囲の安全を確認したうえで、振り返えろうとした……。
刹那。
ガシィッ!!!
すごい力で私の腕が拘束される。
何!? 誰かほかにもこの部屋に狙っている奴がいた!?
私は後ろを振り返ると、そこには見知った人物がいた。
「ゆ、優くん!?」
「ぅぅぅぅぅぅぅぅ………」
低く唸るような声で何か呻いている。私を解放してくれそうな様子はない。
それどころか、今度は彼は腕を私の腰の方から回して、抱きしめてくる。
「あ、ゆ、優くん………」
ぎゅっと力を入れられたところが、ちょうど子宮に近いところで、疼いていたそれが敏感に反応してしまう。
と、同時に私は気づいた。
お尻から背中にかけて、何か固いものがあたっていることに……。
も、もしかして—————。
私は嫌な予感がして、サーッと血の気が引いてしまう。
堕とされる………。
防音のこの施設で、彼が今までされてきたことから考えると、精気の搾取ということは容易に想像できる。
でも、優一さんはきっと我慢をしてきたのだろう。
結果が、今、背中に当たっている状態なのだ、と。
そのまま力づくで彼は私を床に座らせる。
そして、その目の前に現れたのは——————。
「こ、こんなの見たことないよぉ………」
嗅覚という感覚を破壊するかのようなフェロモンを帯びた優一さんの分身ともいえるものが私の目の前に反り勃っていたのだ。
あうぅ……。反応してしまう自分が恥ずかしい……。はしたない……。
と、同時に私は悟った。
————これは間違いなく、妊娠しちゃうよ!?
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