5.イチャイチャはいつしか新婚のような雰囲気を作り出す。

第114話 初夢は何がいい?

 そっと目を開く。

 朝陽の光がカーテン越しにボクの顔を照らす。

 思わずまぶしくて目が覚めてしまったらしい。

 今日は1月1日。

 昨日は何だか賑やかになってしまった。

 大晦日を千尋さんと二人でまったりと時が過ぎるのを待っていたのに、まさか、年越し間際に妹の美優が乱入。

 それまでボクの肩を借りてうたた寝していたはずの千尋さんは、妹に対して第一種警戒態勢に入り、ボクの腕を離そうとしない。

 そんな中で妹が実家から持ってきてくれた年越しそばに舌鼓を打ち、年越しの瞬間を迎えた。

 これまで一人で年越しを迎えていて、当然ながらボクはやることもないので、年越しの瞬間を迎える前にすでに就寝していたというのが去年までの行動だった。

 それが今年はどうしたことか、隣には美少女の千尋さんがいる。

 そして、なぜかボクのことが好きでならない妹までいる。

 幼馴染の麻友がいないとはいえ、何だか、いつの間にかボクは明るい輪の中に入っていたようだ。

 が、今日の朝に関しては、ボクは千尋さんの顔を直視することができない!

 いや、いつでも直視するとこっちが恥ずかしくなるくらいの美少女だし、何だかいい匂いはするし……。胸のあたりがドキドキしないなんて日はない。

 それでも今日はダメだ!

 ありがたいことに千尋さんも向こう側を向いて寝てくれているおかげで直視しなくても済むけれど……。

 ああ、ボクは何と不埒な初夢を見てしまったのだろうか!!

 みんな、初夢というと何が有名かわかるだろう?

 そう! 一富士、二鷹、三茄子、というものだ。

 もちろん、ボクもこの初夢にあやかりたいと思っていたのだが、それがちょっとばかりボクの夢は異なった。

 それは大体こんな感じだ—————。



 何だか、妙にリアルな夢だった。

 目の前に彼女の千尋さんがそっと寝ている。

 するとふっと瞳を開いて、


「どうしたんですか? そんなにそわそわして……。あ、もしかして、初夢ですか?」

「う、うん。そうだね。でも、別に見れなくてもいいかなって……」

「どうしてです?」


 彼女はきょとんとした表情でボクの方を見てくる。


「だって、目の前に立派な富士山があるから」

「え?」


 さらに千尋さんは目を点にする。

 て、ぼ、ボクは何てことを言いだそうとしているんだ!?(理性)

 そして、布団の中に入れていたボクの手はおもむろに彼女の双丘に手を伸ばす。

 ふわりとしたその触感は紛れもなく、柔乳やわちちな千尋さんのおっぱい!


「きゃっ♡」


 少し頬を朱に染めつつも、彼女は嬉しそうに微笑む。

 どこの世界に彼氏に自分の胸を富士山と言われながら揉まれて喜ぶ女子がいるのだろうか……。絶対にいないよ!?(理性)

 その柔らかな感触に、ボクは辛抱が利くはずもなく、両手はきめ細やかな指の運動をしてしまう。

 そのたびに、彼女は体をピクリ、ピクリと震わせ、甘い吐息を漏らしている。

 数秒揉み続けると、彼女の眼はとろりと蕩けていた。

 何か、物憂げな表情をしている。


「初キスがまだですよ♡」


 恥じらいつつも甘える彼女の表情にボクの理性が吹き飛びそうになる。

 そっと彼女の唇に自身のものを重ねる。

 はじめは唇だけが重ねては離れを繰り返すようなもの欲しそうになってしまうようなキス。

 そして、そのあとは当然のように舌が絡み合う。

 ちゅぱ、ちゅちゅ、ちゅぱ、れろれろ…………

 いつしか、ボクらは知らぬ間に寝間着を脱ぎ捨て、生まれたままの姿で抱き合っていた。


「今日はこれを付けて……」


 彼女は枕もとに常備してあるお母様直伝の小箱の中から印のコンドームを取り出す。

 片手と口で綺麗に封を当て、それを唇に宛がうと、そのままボクに付けてくれた。


「さあ、しっかり実った優くんので愛し合って♡」


 甘えるように自身の羞恥をさらけ出し、千尋さんがボクを受け止めようとする。

 ここまでされてボクは何を抗うことがあろうか。

 本能に身を任せればいいんだ————っ!


「お、おうっ!!!」


 ボクの立派なナスとアワビが極上に絡み合い、ひとつのハーモニーを生み出した…………。



 と、ここで目が覚めたわけだ。

 リアルすぎる夢だ。も、もはや淫夢とか……。どこかに麻友がいたずらをしかけたのではないかとすら怪しんでしまいそうになる。

 いや、それどころか、ボクは彼女に対して、なんて恥ずかしいことを言ってしまったのだろう……。


「ゆ、優くん?」


 罪悪感と羞恥心で胸が張り裂けそうなボクの後ろで彼女が、やや恥ずかしそうな気配をさせつつ、声をかけてくる。


「お、おはよう」

「あ、あの……おはようございます………」


 その声はいつもの元気なそれではなく、何やら彼女も後ろめたさを感じるような声だった。

 はて? 彼女が何かをしたのだろうか……。


「わ、私……とんでもない……は、初夢を………」

「ええっ!?」


 それってどんな初夢なの!?

 一富士、二鷹、三茸だったりしたの!?(それはそれで卑猥)


「あ、あの……これって麻友に教わったんですけれど、手を繋ぎながら寝ると夢を共有することができるって……」

「は、はぁ……」


 そう言われると、昨日は彼女とふたりで同じタイミングで就寝できたので、一緒に他愛もない会話をしながら、手を繋ぎながら寝たんだっけ……。

 て、ことは—————————!?

 ボクの表情が一瞬こわばる。

 そ、それは非常にまずいのではないか、と。


「あ、あの……すっごく激しくて夢の中なのに、また優くんのことをさらに好きになっちゃいました♡」


 そういうと、彼女はボクに抱き着いてきた。

 ああ、リアルに彼女の二つのがボクの体にあたってくる。

 いや、あまりの柔らかさにボクは再びイーグル印のものにお世話になってしまわなくてはならないじゃないか!?

 新年早々のボクと千尋さんのイチャイチャ具合から言うと、今年もボクらにとって幸せな一年が迎えられそう……。そんな気がしてならないのであった。


「ああっ♡ ちぃちゃん!? そこは優しくしないとぉぉぉぉぉぉぉぉ……。ううっ!?」

「うーん。いい香りです♡」


 お願いだから、新年くらいは普通に迎えたいものだよ……。

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