第106話 オープンスクールでも結構目立つ。
ボクと妹の美優、そして当然のごとく横にいて、正妻ポジションを奪わせないように妹に睨みを利かせる彼女・千尋さんの3人は今、自分たちの学校の校門に立っている。
ボクと彼女にとっては、わざわざこの暑い中で制服に身を包み、わざわざ電車に乗って出向かなければならないということに対して、億劫になってしまいそうになるが、妹のためとあらば、お兄ちゃんはいつでもお兄ちゃんになれるのです。
「ち、ちぃちゃん? 大丈夫?」
「え? あ、はい……。大丈夫ですよ。優くんと一緒に学校デートできるならば、全然どこにでもついていきます。あとでチューのひとつでもしてくだされば」
「——————!?」
「あ、はいはい。そこのイチャラブバカップルの二人? 今日は、あたしのオープンスクールで来てるんだから……」
そう。
今日は妹の美優がボクの通っている鶯ヶ丘高等学校への入学を考えてのオープンスクールの日だ。
こっちへ美優が来てから、ゴタゴタと何だか色々とあったが、妹の本来の目的は、ウチの学校のオープンスクールに出席することだった。
ウチの高校が男女共学の私立高校で、全国有数の進学校でもある。
東京大学や京都大学といった国公立にも複数名排出しているし、そうでなくとも関東では早稲田、慶応、関西でも名だたる私立大学にも合格した先輩方がいる。
「ちなみにどうして美優ちゃんは、この学校に来たいと思っていたの?」
「千尋お姉さま! よくぞ、聞いてくれました。もちろん! まずはお兄ちゃんがいるということ、というのもあるのですが———」
いや、それは色んな意味でまずいと思う。
それにボクの方が先に卒業するんだけど……。
「あたしにとって、ぴったりの校風だと思って」
「美優ちゃんにぴったりの校風……だったかしら……」
千尋さん、眉間にしわが……。
まあ、確かにそう思ってしまうのも無理はない。
美優は見た目は確かにガッツリと陽キャな感じで、スタイルも抜群ときたもんだ……。が、それは見た目だけの話。妹はこう見えて、ボクよりも真面目で、しっかりと勉強に関しては手抜かりなく学んできている。その所為もあり、妹の第一希望は国公立だというくらいだ。
「実は、あたし、研究者になりたいんですよ。お父さんとお母さんが奇跡的に命を食い止めたこともお母さんから話を聞いて知ってます。でも、いえ、だからこそ、世界にいる多くの人が命を食い止める方法があればって思うんですよね」
「難病とかの治療ってこと?」
「それもあります。科学技術で解決できるものであれば、それは何であっても有能に機能してくれると思うんですよね」
「何だか、壮大な夢ね」
「でも、実現不可能ではないと思ってるんです」
「さすが、優くんの妹……。肝が据わってるわね」
「そりゃどうも」
千尋さんがボクの方を見てきたので、ボクは謝意を述べておく。
校門の入り口では、早速、受付が行われていた。
こういうのを担当しているのは、生徒会の皆様方……。ご苦労様です。
「き、君は!?」
眼鏡をかけたそこそこイケメンの男性が、千尋さんの方を見て、少し後ずさる。
ん? 何かあったのかな?
「これはこれは、お久しぶりですね。如月生徒会長」
千尋さんはニコリを微笑みながら、如月生徒会長に会釈をする。
笑顔だけれど、何だか怖くない?
「ということは、君が河崎くんか……」
「あ、はい。そうです……。どうして名前を?」
「まあ、君たちのように学業優秀な生徒の情報は、常時、生徒会にも入ってくるからね」
如月生徒会長はそういうと、他に並んでいるオープンスクール参加者のほうに行く。
うーん。何だか、変な感じだ。
「もしかして………」
「ええ。以前、告白されちゃいまして。あ、でも秒で振っちゃいましたけどね」
秒って………。
ボクは彼女の笑顔が怖くて、少し顔が引きつった。
まあ、千尋さんは清楚可憐な才女だから、上級生にも目が留まるのは当然だしね……。
「それにしても、やっぱり目立ちますね……美優ちゃんは」
「え? そう?」
「はい。おっぱいが……」
そっちがね……。
参加証などを受け取り、ボクの方へ笑顔で戻ってくるあどけない妹。
だが、顔の下には凶器が激しくバウンドしているのを、世の男たちは見逃さない。
ぷるん! ぷるるん!!!
こんにゃくゼリーでも詰まっているのか!? とでも言いたくなるようなそのプルプル感にどうしても目がいってしまうようだ。
「はぁ……。本っ当に男って人は……。あ、優くんは私のを見てくれているなら、それでいいですよ?(圧)」
う、うん。千尋さん? 語尾が何だか怖いんだけど?
周囲からは、部活動をしている生徒もいて、
「おい! あれって河崎の妹なんだって!」
「マジかよ!? 可愛い彼女に可愛い妹とか、ラブコメかよ!」
「兄妹で一緒にお風呂入ったりするのかな……」
「いやいや、布団で一緒に寝るってもあるかもしれないぞ」
「で、でも、それなら彼女の錦田さんも黙ってはいないだろ!」
「何だよ、その泥沼! 浸かりて~~~~っ!」
などという知力のかけらもない会話がちょろっと耳に入ってくる。
千尋さんはというと、冷めた目線を向けて、
「そんな下世話なことになるわけがないじゃないですか……。ちゃんと協定通り、事は進んでるというのに……」
いや、まあ、そうだけれど、その協定の内容に問題があると思わないのでしょうか……。
ほぼほぼ毎日、ボクは溢れ出る精力を3人の美少女に吸われているということに……。
だから、ある意味、部活動の男どもが考えているより、もっと激しいことが行われていおるんですけどね……。
「じゃあ、今日はお兄ちゃんが学校を案内してくれるのかな?」
「ああ、分かったよ。入試制度とかの説明が終わったらな」
「はぁ~。まずはそれかぁ……」
妹は、がっくりと肩を落として、大講堂へと足を向けた。
まあ、大人の堅い話なんて聞きたくないのは、どこの世界でも当然なんだけどね。
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