第105話 妹は諦めない。そこに壁があろうとも……。
ちょっと待ってくれ……。
この状況はどういう状況なんだ!?
ボクは麻友の小さな悲鳴と同時に視界を失った。
というか、マシュマロのような柔らかなメロンで包まれたのだ。
と、同時にボクの理性が吹き飛び、下半身の体温が熱くなる。
あー、これは千尋さんに会うまでに収めておかないと……。
そんなことを冷静に思える余裕はあったが、それが確実にできるかどうかは不安でしかなかった。
「お、お兄ちゃん!」
妹はボクを呼ぶがボクはマシュマロメロンで顔面を覆われていて、呼吸すらままならない状況だ。
美優は怖がっているのだろう。
が、ボクを抱きしめているということは、ボクが浮き輪から手を放してしまうわけにはいかない。
ボクは一層手に力がはいる。
が、妹はそのあと、大失態をしでかす。
「な、何か掴むもの!?」
そういって、ぎゅっと妹は握りしめた。ボクのジョイスティックに—————。
んはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?
いや、かなり無理な体形じゃない!?
ボクの腕をつかんだ方が良かったんじゃない!?
ボクはそう突っ込みたがったが、それどころではない。
妹はむぎゅむぎゅと手に力をこめる。
そのたびに、ボクは刺激にやられてしまいそうになる。
は、放してくれぇ~~~~~~~~~~~~っ!!!
と、妹に握られたジョイスティックは今にも暴発してしまいそうになる。
が、そうはならなかった。
そう思った瞬間に、ボクらはゴールに達したのである。
ざぶんっ! と水音を立てて、ボクと美優は水に叩き付けられる。
と、同時にボクは光を取り戻す。
が、そこには上の水着を失った妹がいた。運よく、ボクの方を向いていたから、誰にも見られた気配はないのだが………。
「お、お兄ちゃん!?」
妹はそう叫ぶと、胸を腕で覆い隠す。
が、それはむっちりとはみ出すようになってしまい、さらにエロく見えてしまう。
ボクは近くに浮かんでいた、妹の水着を手に取り、それをそっと手渡す。
「あ、ありがとう………」
妹は急ぎ気味に水着をつけると、そっぽ向いてしまった。
でも、その耳は何だか、赤く染まっていて、怒っているような感じではない。そんな空気を感じた。
「す、すごかったね……」
「ん? そうだよな。こんなスライダーがあるんだな……」
「え? あ、うん。そうだね……。お、お兄ちゃんもすごかったけど………」
妹が最後に何かを呟いたが、ボクには聞こえなかった。
が、そのあと、千尋さんたちを待たずに、妹はボクの腕をひっつかみ、その場を後にした。
「あ、あれ? どこに連れて行くんだよ!?」
「ちょ、ちょっとだけ付き合って!」
妹はやはりボクに顔を見せようとはしなかった。
連れてこられたのは、シャワールームだった。
個室型のそれは、外から様子を伺うことなく使用できるつくりになっていた。
そのため、男女関係なく行きかう場所にあった。
「お兄ちゃん? あたし、もう、自分を止められない」
「ど、どういうこ—————」
ボクが妹に問いただそうとしたときには、唇を塞がれていた。
え——————。ちょっと待って—————?
ボクはどういうことか、と理解できずにいた。
「今は、もしかしたら眷属化しちゃってるのかな……。うん。そうして欲しいかも……」
妹は恥ずかしそうにそう言葉を漏らす。
そして、再び、唇を重ねてきた。
美優はボクの首を腕で抱くようにして、唇を重ねてくる。
ボクは正気に戻った脳内をフル回転させ、彼女を自身から引きはがす。
「さ、さすがにダメだろ……。兄妹なんだから……」
「うん。そうかも……」
美優はあっさりとそれを認める。
分かっているなら……なぜ……。
「あ、今、お兄ちゃん、何でこんなことするんだ? って思ったでしょ?」
「そ、そりゃそうだろ……」
「そうだよね。あたしたち、兄妹なんだもんね……。本来だったら認められないことだよね?」
「そ、そりゃそうだろ?」
「でも、あたしが好きになっちゃったんだから仕方ないじゃん」
「いや、仕方ないじゃんって言ったって……」
「あたしはこれまでも優しかった……、そしてこれからも優しくしてくれるお兄ちゃんが好き……」
「……………………」
ボクは返答に困り、沈黙してしまう。
変な間が生まれてしまう。何とか埋めなきゃと思うが、言葉が出てこない。
すると、美優がそれを察したのか、ふふっと微笑み、
「じゃあ、お兄ちゃんはあたしのことはどう?」
この質問は意地悪だ。
妹のことを嫌いなんて一度たりとも思ったことはない。
幼少のころにあまり友達がいなくて、寂しそうな顔をしている妹とずっと遊んであげた。
時たま見せてくれる笑顔がどれだけ可愛いと思ったことか………。
そんな妹をボクが悲しませられるわけがない。
「ボクも美優のことは好きだよ?」
「んふふ。妹として———って言いたそうだね」
「——————!?」
図星。
ボクは、こうやってズルいことしかできない。
妹をどう傷つけないで済むか……。
「今はそれでいいよ。あたしももっと自分を磨くから………」
「美優……」
「きっと時が来たら、仕掛けちゃうよ。あたし、お兄ちゃんのこと、一途だから!」
そういうと、美優はボクを壁の方に押し付ける。
勢い余って、ボクの手がシャワーのスイッチに手がかかる。
ザァ—————————————————————ッ!!!!
勢いよくシャワーがはき出される。
その瞬間、妹は再びボクにキスをしてきた。
その時の顔は、何だか我慢していたものが込み上げてきて、泣いているようでもあった。
だが、その涙はシャワーとともに流されていたのか、ボクが確認することはできなかった。
ボクの選択は、妹を悲しませてしまったのだ———。
後日、ボクはリビングで正座をさせられていた。
目の前には腕組みをしている黒髪ロングな美少女が、ボクを睨みつけていた。
「優くん?」
「は、はい!?」
ボクは思わず声を上ずらせてしまう。
ボクの彼女の千尋さんは、鬼の形相だ。
こうなったら、ボクは煮るなり焼くなり好きにして、というくらいに何もできない。
そして、その横に座っている麻友も若干、気まずそうにボクの方を見ている。
どうやら、助けてくれる意思はなさそうだ。
「この紙って知ってますか?」
千尋さんはボクの目の前でヒラヒラと一枚の紙をひらつかせる。
もちろん、知っている。
この紙は、彼女たちがボクの精力を吸う協定を結んだ際に作られたものだ。
「この紙が先日、書き換えられていました」
「へ、へぇ……!?」
「演技が下手すぎるよ、優一……」
「ううぅ………」
「どうしてでしょうか……。今は水曜日と土曜日が私、そして、月曜日が麻友だったはずです……」
「う、うん。そうだったね」
「それなのに、どうして、火曜日と金曜日に美優ちゃんの名前が入っているんでしょうか!?」
そうなのだ。
その紙にはもともと彼女たち二人の名前しか記載されていなかったはずだ。
しかし、美優がそこに加筆したらしい。
いや、そんな簡単にできるものか!? と思うかもしれない。
本来なら、そんなに簡単に加筆修正などできない。しかし、美優にはできたのだ……。
それはこの協定書の注意文が、可能にした。
『この協定を加筆修正する際は、この協定書に調印したものの二名の血が確認された場合のみ許可されるものとする』
え? どうしてかって?
美優は千尋さんの半眷属となってしまっている。つまり、彼女の体の中には千尋さんの血液も流れてしまっている。それに、ボクと妹は兄妹だから、DNAは同じだ。
ということで、一人でこの作業をなしえてしまったのである。
何たるチート技。
しかも、さらりと注意文も変更してあったのである。
『この協定を加筆修正する際は、この協定書に調印したもののすべての血が確認された場合のみ許可されるものとする』、と。
ヤレヤレ……と首を横に振った麻友は、
「まあ、変更されちゃったものは仕方ないから、問題は中身だよね? まさか、優一、妹と性行為はないよね?」
「そ、それはさすがにしない!」
「じゃあ、キスくらいかな?」
「そ、そうなるかと…………」
「…………………」
ああっ!? 彼女の視線が痛い。
ムーッと頬を膨らませて、ボクの方を半分涙目で何かを訴えようとしている。
「どうして……どうして、優くんはこんなにタラシ体質なのかしら~~~~~っ!!」
千尋さんお絶叫に対して、横に座っている麻友は腕組みをして、うんうんと頷いたのであった。
うう……。別にタラシになろうとして、なったわけじゃないよ!?
だって、去年は恋人の気配とか皆無だったんだからね!
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