第103話 妹の思い。少女たちの思い。
ううっ。周囲の視線が厳しい。
いや、想定はしていたが、ここまでとは思わなかった。
「何だか、あたしたちを見てるって感じじゃないよね?」
麻友が気になったのか、ボクに対して、そう言って来る。
千尋さんも先ほどのようなおどおどした感じはなくなったとはいえ、
「でも、やはりあんまり見られて気分のいいものではないですね」
「お兄ちゃん? メチャクチャ殺意の籠った視線を受けてるね」
美優!? どうして、千尋さんや麻友はその辺を気にして、言葉を濁してくれているのに、君はそうやってズケズケと言っちゃうのかな!?
そう。ボクは今、彼女らとともに一緒にプールで水を掛け合ったりして遊んでいる。
そもそも今来ているこのプールも、麻友の実家が運営しているものらしい。
さすがだぜ! 斎藤財閥!
麻友のお父さんに、友だちと一緒にプールに行きたいといったところ、チケットをくれたらしい。
いや、そんなに娘を甘やかしていいのか!?
まあ、あんなに両親のエッチをトラウマ化していた一人娘が、普通に話しかけてきてくれるのがお父さんとしても嬉しいのだろうけれど……。
ごめんなさい。娘さんの処女をボクがいただいてしまいました……。
あと、トラウマも幾分か解消できてます。本人が気持ちよかったらしいので……。
「まあ、こんな美少女3人と贔屓目で見ても取り柄のない男子が一緒にいるなんて、周囲から見たら、とんだ組み合わせだと思うよね?」
「うるさい。贔屓目に見たら、少しは良いところはあるだろう?」
「まあ、見た目は普通。話しかけてくれると優しい。つまり、お兄ちゃんは話すまで魅力が伝わらないってことだよ」
うぐっ!? まさか、陰キャであったことがこうまでひどく言われるとは……。
「でも、私はそんな優しさがあったから、優くんのことを好きになれたんですよ?」
「千尋お姉ちゃんはいつも、お兄ちゃんに優しいよねぇ……」
「優しいんじゃなくて、優くんの優しさを見てると、私自身も気持ちが落ち着いて、こうなってしまうんです」
「そうなんだ……。お兄ちゃんの株がちょぴぃ~~~~~~っと上がったよ」
美優は右手と親指と人差し指で判別できないほどの隙間を作る。
「いや、そんなにちょっとかよ」
「そりゃそうじゃん! だって、お兄ちゃんはもともとあたしだけの王子様だったんだから」
「ま、まあ、姉貴が歳離れていたし、ボクと美優だけで家でいつも遊んでいたからね」
「何だかそう言われると、あたしに友達がいないみたいじゃん」
「いや、いたけど、ボクとばっかり遊んでいただろう?」
「まあ、そうだったよね」
「美優ちゃんにとって、優くんはどんな人なんですか?」
「彼氏以上恋人未満。」
ぴしっ!!!
美優が言った言葉にその場が一瞬で凍り付きそうになる。
ううっ!? 灼熱の太陽が照り付けているはずなのに、身も心も凍えそうなこの寒さはなに!?
「そ、それはどういう意味ですか?」
千尋さんの言葉に明らかに動揺が滲み出ている。
「あー、千尋お姉ちゃん? 勘違いさせちゃっていたらごめんね」
「勘違い?」
やはりまだ言葉の語尾が怖さを持っている。
「うん。あたし、友だちはいたってさっき言ったけど、家で棲んでいたころは、麻友ちゃんだけだったんだよね……、友だちって」
「は、はぁ……」
「でね。いつしか、お兄ちゃんとばかり遊ぶようになっちゃって。勉強も遊びも全部お兄ちゃんが一緒にいてくれて、何だか、お兄ちゃんのことをお兄ちゃんと思えずに、好きな男友達に思うようになっていたの」
「そ、そんなことがあったんだ……」
麻友が真面目にうなずく。
「そうしたら、お兄ちゃんが高校は残って鶯ヶ丘に行くっていうし、お父さんたちは引っ越しするっていうから、なんだか、もう気持ちがめちゃくちゃになっちゃったの……」
「それであんなに大泣きしたのか……、美優」
「うん。そうなの。だから、あたしにとっては最初にできた彼氏なんだ。でも、血がつながっているから本当に付き合うことはできないでしょ?」
「だから、彼氏以上恋人未満……ですか」
千尋さんはいつしか、落ち着いた表情でそう呟いた。
「だから、お兄ちゃんに再会できるってなったとき、もう気持ちが爆発しちゃってね」
「そういうことだったんですね」
「ん? 何が?」
「ほら、学校に迎えに行ったときに、突然の恋人ムーブをしてきたじゃないですか?」
「ああっ! 突如腕に抱き着くようにして————」
「ええ、あれは彼氏との再会のような気持だったんですよ」
「美優……お前もまだまだ子どもだよな……」
ボクは妹の頭をなでてあげる。
美優は恥ずかしがりながらも、
「も、もう! 髪型が崩れるからやめてよね!」
「それならば、あのときのことはもう咎めたりしませんよ」
「ホント!? やったー!」
「でも!」
「「「—————ん?」」」
突如、千尋さんは口調を強める。
そして、ボクと美優の間に入る。
「そうやってすぐに優くんに胸を押し付けるのは止めてください! 優くんはおっぱい聖人なんだから、そんなことされると、気持ちがそっちに向いちゃう可能性もあるんですから!」
ええっ!? 心配するところって、そこ?
ボクは驚いてしまう。と、すぐに千尋さんの頭をなでてあげる。
「大丈夫だよ。ボクは千尋さんのことが大好きなんだから」
そう耳元で囁いてあげると、彼女は顔をボンッと真っ赤に染め上げる。
口はわなわなと震え、恥ずかしさのあまり沸騰してしまいそうな状況になっている。
「いやいや、千尋のほうこそ、子どもでしょ」
「お兄ちゃんの前で恥ずかしがる千尋お姉ちゃんって本当に可愛いよね!」
「も、もう! 麻友も美優ちゃんもからかわないでよ!」
「あはは……。本当に可愛いよ。ちぃちゃん」
「ゆ、優くんまで! 本当に恥ずかしいのにぃ~~~~」
白い肌が朱に色づくと彼女は恥ずかしさがこれ以上にないくらい込み上げてきたようだ。
本当に可愛いな……。ボクの彼女は————。
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