第101話 妹は水着姿も暴力的。

「お兄ちゃ~~~~~~~ん!」


 ぷるん! ぷるるん!

 溌溂としたその声に周囲にいたものが振り向き、そして、皆が同様に息をのんだ後、股間を押さえた。

 そうさせてしまったのは、ボクの妹の美優だったりするのだが……。

 フリルのついた赤と白のゼブラカラーのビキニタイプの水着は、美優がこちらに向かって歩こうが、走ってこようがどちらにしても、彼女の武器であるおっぱいを如何なく、無差別テロのように周囲の男たちを攻撃している。

 ぷるん! ぷるるん!

 と、同時にカップルたちにとっては、遺恨を残しかねない戦いを勃発させていた。

 まあ、その当事者は全然気にしていないといった感じなのだが……。

 美優は確かに可愛い。アイドル顔負けとまでは、言い過ぎかもしれないが、元気なさまはアイドルに近い雰囲気を醸し出しているとも思う。

 ツインテールにしたライトブラウンの髪は、あどけなさを持ちながら、そのお胸からは妖艶さすら生み出す。ギャップが凄いのだ。

 美優の周囲の男たちは、ナンパをしたいけれど、勇気が持てないといった感じで、次の手が出せずにいる。

 ぷるん! ぷるるん!

 そうこうしているうちに、ボクのところまでやってくる。

 相変わらず凄いお胸だ…………。

 兄妹ということがなければ、自身でも惚れてしまうであろう程に……。

 それにしても、姉貴は正直、「壁」だから、どうして妹がここまですくすくとお胸が成長したのか分からない。

 母さんもそんなに出ているとは思えないから、河崎家の謎のひとつとして受け継がれるべきものだと思う。


「んふふ~っ!」


 美優はボクの前で鼻息荒く、腕で胸を寄せて見せる。

 大きな胸から強制的に生み出された谷間は、今にでも万札を挟んでしまえそうなくらい余裕のある渓谷となっていた。

 ううっ!? 妹よ。ボクを殺す気なのか———!?


「お兄ちゃん? やっぱりおっぱいが大好きでちゅねぇ?」

「う、うるさい!」

「あはは……図星なんだ。まあ、他の男たちもあたしのことをいやらしい舐めるような視線をくれちゃってたからねぇ……。あ、でも、お兄ちゃんなら、そのまま受け止めてあげるよ? この豊満なおっぱいで♡」


 はい。皆さん、この人は中学生です。

 まかり間違っても、千尋さんや麻友と同様の高校生と思わないでください。

 単に発育がよろしすぎる中学生なんです!

 ボクは心の中でそう叫んだ。そう叫ばずにはいられなかった。

 そうでなければ、自身の理性を保てそうになかったのだから。


「美優……、そういうことは兄妹でしちゃダメなんだよ?」

「分かってるよ~。でもね、そういうのを好きな人もいるって……。そうでしょ? ね? お兄ちゃん♡」


 だから、上目遣いは止めて! 妹は祈るように手を握り、ボクに上目遣いをしてくる。

 そうすることで、可愛らしさはさらに増幅されるが、おっぱいが腕でむぎゅっとされていて、その爆乳の柔らかさがさらにボクの下半身を刺激しようとする!

 ぐはっ!?


「ん?」


 ボクは声のした方を見てみると、見知らぬ高校生が鼻血を出しながら、プールサイドに倒れ伏していた。

 あー、お前、妹を見てたんだな……。

 

「きゃー!」

「だ、誰か! 担架を!」

「急に吐血したぞ!? 大丈夫か!?」

「だ、誰か、近くにお医者様はいらっしゃいませんか~!」


 何やら周囲が騒がしい。

 妹はどうしたんだろうと、我関せずといった風にその様子を見ている。

 だが、その高校生もみんなが冷静にしてみると違和感を感じることだろう。

 なにせ、左手と股間がサムズアップしていたのだから……。

 絶対に妹でエロいことを考えていた……。もしかすると、童貞だったのかも……!?


「どうしたんだろう? 暑くて熱中症かなぁ? あたしたちも適度に水分を取らなくっちゃね」

「————うん。そうだな……」


 敢えて、この状況がどういう混沌カオスを生み出しているのかは、妹には言わない方がいいらしい……。

 とはいえ、妹がビキニタイプでなくてもそのお胸は健全なる男性たちの暴力につながるので、いまさら水着云々の話をするのは野暮なことだし……。


「それにしても、また年相応な感じの水着じゃないんだな?」

「えへへっ! まあ、中身は中学生だけど、体は大人の色気を持ち始めてるでしょ?」


 うん。おっぱいだけね。

 まあ、敢えては突っ込まないけれど—————。


「この間、麻友ちゃんと一緒に買い物に行ったときに買ったんだ~。どう?」


 と、妹はボクの前でそのスタイルを惜しげもなく見せつけてくる。

 再び、周囲の視線を奪い取ろうと、世の中の女性に対する無差別テロが始まってしまった。


「すごく似合ってる。美優の可愛らしさが十分に伝わってくるよ」

「んふふっ♡ 嬉しいなぁ~。やっぱりお兄ちゃんって女の子に本当に優しいよね。妹とか関係なく誰にでも優しくしちゃうのは、千尋お姉ちゃんにさすがに悪いような気がするよぉ?」

「え? でも、美優が綺麗なのは周囲の視線を受けていてもわかるだろう?」

「あはは……。まあ、そうなんだけどね……。でも、さっきも着替えているところを一緒だったんだけど、千尋お姉ちゃん、マジで可愛いよね……?」

「え?」

「いやぁ、あたしとしても本当に鼻が高いよ。あんな可愛いお嬢様を手籠めにしちゃったんだから」

「だから、言葉使いを………」


 ボクはもう最後まで言う気がなくなってしまっていた。

 その瞬間、周囲がざわついた。

 ボクはそのざわつきが何を意味しているのか分かった。

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