第100話 ボクたちは考える「サル」。
「優くん……。私、このままじゃダメだと思うの」
「…………え。」
神妙な面持ちの彼女・千尋さんがボクに向かってぼそりと呟いた。
それは今朝起きて、4人で朝食を取った後、麻友と妹の美優が街に出かけたいとのことで一緒に出向いて行った。
このクソ暑い夏によくもまあ、お出かけなんて喜んでいけるものだ。
ボクなんか、これまでの陰キャ生活が祟って(?)、この通り、家から一歩も出たいとすら思わなくなってしまっている。
ま、まあ、千尋さんが出かけたいって言ったら、それは話は別なんだけど……。
そんな午前中にまったりとコーヒーを飲んでいた時にいきなり言われたのが、その一言だった。
「えっと……何がダメなの?」
「私たちの関係です!」
「え? ボクたちの関係って……。恋人同士だよね?」
「はい♡ ……じゃなくて、それはそうなんですけれど、何だか、昨日麻友に言われて思ったんです。私たちって………」
「………うん?」
「エッチばかりしてるなって……………きゃっ♡」
はい。可愛い。
エッチなことをサラッと言ってしまって、照れるところ本当に可愛い。
普段エッチをするときはあんなに激しいのに、いざ、こういう話になると初心っぽさが出てしまうところ、本当に可愛い。
てか、耳まで真っ赤にしてしまうことかね……、とすらボクは思うが、彼女にとっては本当に恥ずかしいことなのだろう……。
「ま、まあ、確かに付き合い始めてから、事あるごとにしちゃってるかな……」
「そ、そうなんですよね。………あっ。別にエッチが嫌になったってわけじゃないですよ……。ゆくゆくは優くんの赤ちゃん欲しいし……」
もうっ、ダメッ!
照れながら、そういうこと言って来る彼女、本当に好き! 好き! 大好き!
何なら、今から子作りしたくなっちゃう……。て、ボクは
「じゃあ、何かしらルールを設けておくべきだよね。週に一回とかさ」
「週一!?」
「え? 多い……?」
「あ、いえ…………少ないかなって………」
はいそこ。チラチラとボクの股間に視線送りながら、そういうこと言わないでよね……。
ボクも彼女も体の相性がいいことから、エッチをすることに関しては、むしろ大賛成だ。
お互いが愛し合っているという感じがさらに深まるから。
とはいえ、このままいけば、麻友が心配するようにいつの間にか、本当に身籠ってしまいかねない。
まあ、ゴムを付ければ問題ないんだけど、意外と何回戦もするボクらにとっては、ボクだけで結構な出費と言いましょうか……。
そういう避妊の魔法とかないのかな……、とでも彼女とかに相談したくなってしまうところだ。
以前、ちらっと麻友に訊いたことがあるのだけど、
『あんた、あたしとしたいの? あの子じゃ物足りなくなってきた?』
とか言われて、話をはぐらかされたことがあった。
もちろん、そんなつもりはなかったから、サラッと流してくれてホッとしたのは嘘ではない。
でも、さすがに彼女に訊くのはちょっと気が引けてしまう。
おっと、話が反れてしまった……。
「とはいえ、学生で妊娠させちゃって、そのまま学生結婚なんて認めてもらえるのかな……」
「うーん。ウチの学校はさすがに無理かな……」
そう。何せ、ボクらが通う鶯ヶ丘高等学校は県内屈指の進学校だ。
大学受験では東京大学や京都大学といった名立たる学校に2クラスほどが進学する。
それ以外の生徒たちも国公立や難関私立大学などに巣立っていき、先輩たちも各種業界で結果を残されている。そんな学校で妊娠発覚なんてことになれば………、まあ、退学処分となることだろう。
「だ、だからですね……。一日の回数を減らしてしまいましょう」
「おおっ! それは良いアイデアだよね」
「で、ですよね……。どうしても、私が優くんに求められちゃうと受け止めちゃうので……」
「あ……………」
ボクはそう言われて、察してしまう。
そうなんだよね。実は、こんなに複数回できるのは、確かにボクの性欲が凄いということが前提にあるのはわかっているのだけれど、それをエッチが好きな千尋さんが全て受け止めてしまってくれているという優しさがあるからこそなのだ……。
「そ、その……ごめんね」
「いえ! 私も……その……欲しいと思っているので、問題ないです」
ああ! 本当に可愛いなぁ……。
今すぐにも抱きしめてあげたい。そのままベッドに連れて行ってしまいそうだけど……。
「で、でも、どうしよう……。きっとボクら、その……何度も………」
「はうぅぅぅぅ………」
ダイニングで机を挟んで、夫婦がお盛んすぎて、悩んでいるような構図になってしまっている。
こういうのってセックス依存症っていうんだろうか……。
「まあ、ちぃちゃんの眷属になってから、すごく性欲が強くなっちゃって……」
「性能アップが間違った方向に出ているような気がします……。まさか、子孫繁栄のほうに出てしまうなんて……」
「ううっ……。ごめんね」
「ああ!? 別に、優くんが謝る必要はないから! こういうのって大体、ギフトのように授かるものだから、分からないもんですから」
「そうなんだね。ボクにはどうやら、子作りの神様が降り立ったみたいだね」
「あははは……。私たち吸血鬼や麻友のような淫夢魔は簡単には妊娠しない性質を持っているんですけど、本当に優くんだったら、私を妊娠させてしまいそうですものね」
「それって喜んでるの?」
「もちろんです。何だったら、子だくさんにしてくださってもいいんですよ? パパ♡」
はぅんっ!!!
屈託のない笑みを浮かべつつ、ボクに「パパ」とか言わないで!
ダイニングテーブルの下でボクが冷静でいられなくなっちゃうんだけど……。
すると、彼女は鼻をヒクヒクとさせる。
まるで何かに気づいた猫や犬のように————。
「何だか、いい匂い~。もしかして、パパ、効きました?」
「ち、ちぃちゃん!?」
ボクはそのままソファに押し倒されて、キスを立て続けにされた。
今日は「麻友の日」なので、エッチなことは一切しない……はずなのに……。
でも、どうしてボクはこんなに気持ちが弱いんだ!
目の前にピンクのちょっぽりが見えたら、吸い付いちゃうなんて—————。
昼頃までイチャイチャがずっと続いてしまうなんて……。
「本当にあんたたちって………。まあ、濃厚な精液はありがたいんだけどね……」
「ま、麻友!?」
「千尋お姉さま!? お兄ちゃんとしっぽりしちゃうなんて、さすがエッチの先輩です!」
「み、美優ちゃん!?」
おかげで今日もボクらは変態認定されてます。
ああ、でも、彼女の魅力に充てられちゃうのは、これは本能的なことで仕方のないことなんだよ………。
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