第99話 救世主(メシア)だと思ったら、実は淫夢魔(サキュバス)だった模様。—お風呂ドタバタ回—

 むにゅん♡


「こうやって洗うのが好きなんですよね? 優くん♡」


 泡なのか、それともすべすべの絹のような肌なのか……。

 お湯なのか、それとも体温の温かさなのか……。

 ボクは理性と戦うことを最初から放棄してしまっているように思えてならない。


 むにゅむにゅむにゅにゅにゅにゅ♡


「こうやって洗ってもらう方が、性癖と合致するよね? お兄ちゃん♡」


 これ、もうタオルじゃない。いや分かっていたけど、それ以上に感触がたまらない。

 これで性欲を抑え込める人がいたら、それは女の子が好きなんじゃないのではなかろうか……。

 それともちっぱい好きなのか……。

 ああ、もうボクはこのまま昇天して悟りを開いてしまえそうなのではなかろうか……。

 心地よい温かさ、そして程よい温かさ。

 ASMRのごとく美少女の囁きがボクの耳を、脳髄を攻め立てる。

 て、なんか間違ってないか?

 ボクははたと冷静になってしまう。

 いやいやいやいや! この状況、さすがにおかしいでしょ!?

 いや、おっぱい好きのボクとして最高のシチュエーションだし、まさかのエロゲーの展開をリアルで体験できるなんて、どこの世界なんだよ!? とツッコミを入れたいが……。


「もうっ! 美優ちゃんはその爆乳を封印しなさいよ!」

「あら? 千尋お姉ちゃんこそ、もっと全身を使えばいいじゃないですか? 私はこうやって挟み込んであげると————」

「ひょうぅっ!?」


 いかん! 思わず声が出てしまう!


「こうやっていい声で鳴くんですよ」


 いや、鳴くんですよ、じゃない。

 正直、隣で表情には出していないが、お怒りの彼女の様子が伝わってくるのだから、鳴くというより泣くのほうが正しいと思う。


「ゆ、優くん! わ、私、初めてだから、許してね♡」

「ぐほっ!?」


 あ、また思わず声を出してしまった。

 清楚可憐な黒髪ロングの美少女が、切なそうに、そして申し訳なさそうに恥じらいながら、ボクの体に乗りかかるようにして、全身を密着させてくる。

 いや、普段の千尋さんを知っているから、これは演技なのだろうということは分かっているけれど、これは反則です!

 恥じらう表情の頬が少し赤らんでいるところなんか、胸をキュンキュンさせちゃいます!


「許してくれる?」

「え!? あ、はい……」

「嬉しい♡ んちゅ……ちゅぱちゅぱ………」


 恥ずかしそうにしつつも微笑み、唇を、そして舌を絡めてくる。

 もう、ダメでしょ……これ。

 ボクにだって我慢の限界があるんだけれど………。

 本当にエロくてごめんなさい。ボクはあの家族の中でまともな方だと思っていたけれど、まともなのは父さんだけでした……。

 て、あれ? でも、父さんも姉貴にボクに、妹まで作っている……。

 てことは、結構、父さんもお盛んにヤッてたりする?

 そんなことを考えていると、ぼーっとしていたことに気づく。


「優くん、私とのキスの時は私のことしか考えないで……。ね、お願い♡」

「ごめんね。好きだよ、ちぃちゃん」

「ん。あたしも……大好き、優くん」


 再び舌を絡めてしまう。

 千尋さんとのキスは、大好きだ。

 気持ちをお互い高ぶらせてしまうこのキスが————。


「ズルいよ! ここにはあたしだっているんだからね? お兄ちゃん?」


 そっと視線を左に移すと、自慢の双丘で攻撃してくる妹が————。

 しかも、上目遣いとか……。

 どうして兄妹なのに、そんな恋人ムーブしちゃうの!?

 そんな妹がボクの耳元で、


「お兄ちゃんだったら、あたしの初めてあげてもいいよ?」

「ぶばっ!?」


 さすがにこれには吹いた……。

 いやいや、妹よ。さすがにそれはまずいだろう……。


「み、美優ちゃん!? さすがにそれはまずいよ? 兄妹はやっちゃだめだよ!?」

「あー、ゴム着用でOKかと」

「そういう問題!? 美優ちゃんの貞操観念の緩さに衝撃だわ……」

「お兄ちゃんだからいいの。あたしの大好きなお兄ちゃんに奪ってもらえるなら別に構わないよ」

「ボクが構うのだけど……」

「私もさすがに彼女として見逃せないというか……」

「でも、麻友ちゃんにはさせましたよね?」

「うっ………」


 適切なツッコミに千尋さんが少し言葉が詰まってしまう。

 いや、そこは何とか返そうよ……。兄妹はダメ、てさ。


「でも、美優。ヴァージンは大事なものだよ?」

「そうだよ? 何だったら、籍を入れなくてもいいから、お兄ちゃんと一緒に棲みたいもん!」

「で、でもねぇ……」


 さすがにそうまで言われると、「何だかちょっと……」と千尋さんも困惑している。


「こうやっていると、気持ちよくって………んふぅ♡」


 ビクビクッと痙攣をする。

 気持ちよくされているのは、ボクなのに?

 と、少し沈黙した美優の様子が少しおかしい……。


「んふふふふふふふ♡」

「ん? 大丈夫か? 美優?」

「み、美優ちゃん?」

「だって、あたし、お姉さまのこと、大しゅきなんだも~ん♡」

「げっ!? スイッチ入ったのか?」

「そ、そう見たいで—————きゃっ!?」


 ボクから離れた美優は、千尋さんを押し倒す。

 マウントポジションを取っている。

 千尋さんは何が起こったのか、分からず目が点になっている。


「お姉さま? 気持ちよくなりましょうね♡」

「ゆ、優くん!? 妹ちゃんを、と、止めて!」

「そ、そうしたいけど、何だか、体が動かない………」

「え!? どうして?」

「お兄ちゃんは千尋お姉さまの眷属なんだもん。あたしがちょっと魔力を注げば、動かなくなりますよ……。それにほうら……」


 美優は意地悪な笑みを浮かべながら、千尋さんの下半身をマッサージするように指でなぞる。


「んんっ♡」


 すでに自身も感じていたのか、触れられると、さらにビクビクッと反応してしまう。

 美優の指はお湯とは違う何かで濡れていた。


「お姉さま、お兄ちゃんのを受け入れる準備バッチリですね?」

「ちょ、ちょっと!?」

「ま、待てよ!? 美優!?」

「お二人の愛を結実させるのを、見てみたかったんです♡」

「だ、ダメだからね!」

「ぼ、ボク………」


 ボクと千尋さんは抵抗するものの、関係なく身体は美優の拘束に抗えることなく、操り人形のように動かされる。


「ほうらっ! いつものように………」

「んんっ!? んちゅ……ちゅぱちゅぱ……」


 千尋さんも抗うのをあきらめたのか、ボクとキスをし始める。

 とろりと目は潤み、蕩けている。

 そして、ボクらはお風呂のなかで妹に見られながら——————。




 ガチャッ!

 浴室のドアが開く。


「あんたたち、本当に盛りのついたサルみたいにどこでもエッチするのね……」

「ま、麻友っ!? こ、これは違う! 妹が、また覚醒して………」

「まあ、状況を見ればわかるけどね……。でも、さすがにあんまりヤリ過ぎると、千尋が本当に身籠っちゃうわよ?」


 そういいながら、麻友は浴室の床で痙攣している彼女を指さす。

 千尋さんは、口から涎を垂らし、「しゅき♡」「しゃいこー♡」「種付けー♡」と堕ちていることを認識できるようなことを言っている。

 うーん。とはいえ、本当に美優は怖い……。

 そんな美優はというと、湯船につかりながら、


「はぁ~。お姉さまの本気エッチ、凄かったなぁ~。夜は一緒に復習させてもらおうっと」


 と、まだ覚醒から戻っていないようだが、危なっかしいセリフを言っていることだけは認識できる。

 だから、落ち着いてお風呂に入れないって言ったんだよ……、ボクはね。

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