第78話 少年は酒池肉林を体験する。

 千尋さんのお母さんの瞳がいやらしく濡れ、そして妖艶な光がともっているように見えた。

 これはかなりヤバイ。きっと何か良からぬ……、ボク自身に対しても、何かしらの被害がありそうなことを考えているように思える。


「ぼ、ボクはこの辺でちょっとちぃちゃんの様子を見てきま————」

「捕縛。」

「あうっ!?」


 お母さんの指から放たれた魔力の縄でボクはあっさりと縛り付けられ、フローリングで芋虫化してしまう。

 ああ、眷属化されていても、本当に弱いなぁ……、ボクは。


「まあ、優一くんがいないと、始まらないようなものだから……。今はじっとしておいてね」

「は、はひっ!?」


 何だか圧が凄い……。

 ボクは何も言い返せず、同意せざるを得なかった。


「で? 麻友ちゃん? あなた、本当にこのままでいいの?」

「あーいやいや、何の話ですかねぇ~?」


 麻友は視線をツーッと左に逸らし、白を切ろうとする。


「何って決まっているじゃない? あなた、まだなんでしょ?」

「あはは……。まあ、時期が来たらねぇ~」

「そうやって逃げてばっかり……。そもそもあなたは優一くんのこと好きだったんでしょ?」


 え? そうなの———?

 恋愛偏差値が低すぎるボクにとっては、麻友がこれまでボクに対して好意を示していたことすら気づけていないのだが……。


「べ、別にいいでしょ……?」


 頬を膨らませて、恥ずかしそうに言い返す麻友。

 とはいえ、その声は言わないで欲しかったという色が混じっていた。


「まあ、ウチの娘はこういう時は周りが見えずに、すぐに自分のものにしてしまおうとする私と同じような癖があるから……」


 ボクは、思わず「あー……」と納得してしまう。

 刹那、お母さんと視線が合い、ボクは口から出かけた、「あー」を引っ込める。


「だから、あなたにはぜひとも、淫夢魔として、そして女として、ステップアップを果たしてほしいと思うの」

「いやいや、でも、私にはトラウマが……」

「そうね。あなたのご夫婦はそれはもう激しかったものね」

「ああ、言わないでください……」

「でも、あなたもその喜びを知ってしまったら……?」

「ふえっ!?」


 首筋を指で撫でられた麻友は、まるで全身に電気が走ったかのように身震いする。

 顔には一筋の冷や汗が垂れてきている。


「怖さやトラウマなんてものは、すぎに消え去るわ。そう。あの子がそうだったように……」

「え? もしかして、千尋が?」

「そうよ。そもそもあの子も処女だったもの。童貞の優一くんとが初めてなのよ?」


 童貞言うな!

 なんか、恥ずかしいだろう!


「でも、あの時の様子は知ってるでしょ?」

「あ、はい……。眷属にした後、隷従化されちゃうほど、メスにさせられたって……」

「麻友!? 言葉遣いを気を付けて!?」

「優一くん? これはあなたの下半身の獣……いいえ、ケダモノにも問題があるのよ!」

「いや、真顔でボクの股間見られても困ります!?」

「だって、あんな立派なもの見せつけられたら、女……いいえ、メスとしては黙っていられないでしょ!?」

「お母様!? いきなりどうして、興奮して優一の股間に向かって話をされているんですか!?」


 麻友が驚くのも当然だ……。

 今、千尋さんのお母様はボクの股間に向かって、まるで麻友に向かうかのように話をしているのだから。

 てか、話しているように見えて、鼻をヒクヒクとさせているのは、何か匂いでも嗅いでいるの!?


「ねえ……」

「は、はい……」


 お母さんは麻友と距離を縮め、意地悪く微笑みながら、


「今、あの子が倒れている間に………」

「あ、間に……?(ゴクリ)」


 いや、麻友……? ボクの方が唾を飲みたいんですけど……。


「サクッとエッチしちゃわない?」

「どひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?」


 そりゃ、驚くわな……。本人はエッチに対して、トラウマがあってやりたくない……という意思があるというのに……。


「で、でも……あたしは………」

「大丈夫……。私が全力でサポートするわ。それに最初のエッチなんだから、ムードもあった方がいいでしょ? あの子も月明かりに照らされるベッドで初エッチしたのよ? あなたにとっても、ちょうどいいんじゃないかしら……?」


 いや、何がちょうどいいのか分からない……。

 てか、どうして、お母さんはボクと千尋さんとの初エッチの様子を知っているというのだろうか……。


「ちょうど、いい気分にさせて上げれるようなモノを私、もってきているの」


 と言って、胸の谷間から取り出す。


「さっきまで、ずーっとこの谷間で卑猥な魔力をため込んで熟成していた媚薬よ」

「は、はぁ……」


 どうやら麻友はあんまり信じていないようだ。

 しかし、お母さんは「うふふ」と微笑みながら、その媚薬の入ったガラス瓶の蓋をキュポンッと外す。

 部屋中に甘ったるい香りが広がる。


「この媚薬は飲んでもいいんだけど、こうやって嗅いでもいいのよ」

「へぇ……。て、ちょっと待ってよ!? このままだと、あたしたち3人とも……」

「まあ、そりゃぁ、こうやって楽しむためには、その方がいいんじゃない? 私も彼のを味わってみたいんだもん」

「いや、だもんって……。いいんですか? 娘さんに激おこされますよ?」

「大丈夫。きっとバレやしないって」

「いやいや、それ完全にフラグですよね?」

「そう? そう思っていても、もう、体は反応し始めているんじゃないの?」


 そう。ボクはなぜ無言になっていたのかというと、早速、ケダモノ化しているのだ……。

 もう、ズボンからはちきれんばかりに……。

 こ、これは一体どういう状況なんだよぉぉぉぉぉっ!?


「ううっ……。しゅ、しゅごい匂いがキちゃうぅぅぅぅ……」


 麻友の瞳がハートマークになっている。こ、これってもしかして媚薬で堕ちてる!?

 我慢ができず、麻友は自身の右手で敏感になった場所を撫でる。

 が、撫でるたびにピクンピクンッと体を痙攣させてしまう。


「良い反応してるわね……。さあ、優一くん? 淫夢魔の愛液は媚薬にもなるのよ?」


 いや、わざわざ教えてもらって舐めるわけないでしょ!?

 が、ボクの抵抗も虚しく、お母さんに頭を大きな胸で挟まれて、そのまま麻友の下半身にダイブさせられる!

 ボクら3人は、お母さんの結界の張られた世界の中で、酒池肉林というおぞましい光景が真昼間から展開されるのであった……。

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