第76話 本物の少女は食べられたい♡

 裸体の千尋さんとそれを睨みつける千尋さんが対峙している……。

 何ともまあ、コメントしづらい状況が、ボクの目の前で広がっている。


「お母様? どうして、普段のお姿ではないのかしら?」

「あら? そんなの決まっているじゃない。あなたの眷属を味見しに来たのよ」

「うあ。隠さないですね! 本当に好きあれば、色んな男に手を出すんですね」

「まあ、淫夢魔の血と吸血鬼の血がハーフ・アンド・ハーフ だからね。それにこの身体ってすごく便利なのよ? あらゆる男が堕ちてくれるの」

「人の体で、誘惑させるのは止めてよね! そのたびに自身のものとは違うとはいえ、裸が見られていると思うと、恥ずかしさでお母様を殺してしまいそうになりますよ……」

「あら? そんなに初心だったのね。まあ、確かにあなたの体は本当に性欲を奮い立たせるっていうのは、彼でも実証済みだから」


 と、言って千尋さん(裸体)はボクの方を指さす。

 て、ボク、お母様に欲情していたのか!?


「優くん? こんなおばさんに欲情していたって本当かなぁ……?」

「い、いや、違和感があったから、ずっと耐えてはいたんだよ……?」


 嫁の圧がマジで怖い件について………。

 あう。本当に殺されちゃう……。


「へぇ……? でも、あんなにお胸を見せつけられたら、おっぱいモンスターの優くんがどうなっちゃうか、私、心配だなぁ~」

「あ、あははは……。ボクは本物のちぃちゃんのおっぱいしか興味ないよ」

「いや、優一……。そのコメントはどうかと思うよ……」


 麻友が頬を指でポリポリと掻きながら突っ込んでくる。

 

「えっ!? 今のセリフってやっぱり変態だったってこと?」

「あ、いや、そうじゃなくて……。あんたの嫁にはクリティカルヒットするってこと……」


 ボクが千尋さんに視線を移すと、顔を真っ赤にしてモジモジと恥ずかしがっていた。

 ああ、本当に可愛い!


「優くんは、私のことが好きなんだよね?」

「うん! ちぃちゃんしか見えてないもん」

「じ、じゃあ、これはどう説明するの?」


 そういって、彼女はボクの吠えているものを指先でツンツンする。

 はうあっ!?

 そのツンツンの刺激はマズイ!


「だって、好きな女の子の体を見せつけられて、欲情しない男がいると思う?」

「そ、それはそうだけど……。でも、お母様の変装だったのよ?」

「もちろん、それは気づいていたよ……。だって、あのちぃちゃんはボクらみたいに愛称で呼んでなかったからね」

「じゃあ、私の裸を見たら、もっと欲情しちゃう?」

「そ、そんなの当然だよ!」

「じゃあ、あっちの部屋で見せて?」


 そういって、ボクの腕をひっぱり、ボクらの愛の巣こと寝室に向かう。

 茫然としているのは、その場で空気扱いされていたお母さんと麻友だった。


「ね、ねえ、あれってそのまま放っておいていいの?」

「まあ、いいんじゃないですかね。あっという間に出てきますから」

「そ、そうなの?」

「ええ、愛ってのは表現方法はいろいろあるってことですよ。別にセックスだけじゃない。まあ、あの二人は血を吸うんじゃなくて、キスをするだけでも愛を分かち合うでしょうねぇ」

「何だか、分かった口きくのね?」

「ま、あたしも優一のことをあるじと思っている人物の一人ですから。あ、それよりも、今の間に服を着替えておいたほうがいいんじゃないんですか?」

「そうね……。そうするわ」


 服を着替え始める姿を見て、再び、ボクらの方を麻友は見つめる。

 そして、ふぅ~っとため息をついて、


「何だか、損な役回りだなぁ……。あとでいっぱい搾り取ってあげるんだから!」


 麻友はこの世に及んで舌なめずりしつつ、恐ろしいことを呟いたのをボクは聞き逃さなかった。




 寝室に入ると、扉を閉めて二人きりなる。

 目の前には、顔を赤らめた美少女、千尋さんがいる。

 ベッドの端にボクらは座り、見つめあう。


「すっごく心配だった……」

「え……? ど、どうしてです?」

「だって、お母様の標的になった男の人はみんな、食べられちゃうんだもん」

「それって————」

「もちろん、エッチな意味で……。それにあんな手を使うだなんて想像してなかったわ。まさか、姿見の術で私になり切って、襲うなんて……」

「でも、最初から違和感があったから、ボクはキス一つされませんでしたよ」

「それは素敵! やっぱり私の旦那様だわ」

「いや、それほどでも………ってどうして脱ごうとするんですか!?」


 そう。目の前には、千尋さんが服を脱ぎ始めているのだ。

 すでに脱ぎ始めた上半身は下着……ブラジャーのみとなっている。

 そこからはこぼれそうなお胸がボクに向かって挑発してくる。

 ボクの下半身が再び吠える。いや、吠え方が尋常じゃない。


「ねえ、これ、今日買ったの……。どうかな?」


 そう言いつつ、黒いレースのブラジャーを腕でそっと寄せる。

 ぷるんっ! と意地悪にもその瞬間に、胸が躍る。


「可愛い……と同時に何だかエッチだな……」

「やっぱり? じゃあ、下はもうやめておこうかな……」

「見たいです」

「え————?」

「ちぃちゃんのお母さんの変装で欲情したのは確かだけど、今のほうがもっと気持ちが高ぶってます」

「もう、エッチだなぁ……」

「ボクだって男なんです。我慢に限界だってあるんですよ。………キスしますね」


 ボクはそういうと、彼女の返事を待たずに唇を重ねる。

 彼女が舌を絡めてきているのがわかる。返事がなくても、YESだということはすぐさま理解できた。

 そして、その静かな寝室に舌を絡める唾液のぴちゃぴちゃという卑猥な音だけが響く。


「んあぁっ♡」

「じゃあ、見せてくださいね」

「あんっ♡ ダメ………」


 千尋さんのハーフパンツに手をかける。

 でも、千尋さんはそれ以上に抵抗をすることはなかった。

 楽にそれを脱がすと、そこからは黒いレースのスケスケの下着が現れる。

 前はほぼ見えているし、後ろはほぼ紐状態で、お尻が露わとなっている。


「ち、ちぃちゃん、これは………!?」

「あ、やっぱり恥ずかしいな……。これ、ランジェリーショップの店員さんが彼氏が気に入ってくれるって言って、つい買っちゃったの……」

「好きです。」

「え?」

「こういうのボクも大好きです」

「普段は大人しいのに、エッチなことは猛獣化しちゃうのね……。私の旦那様は……」

「ボクの目の前でそういう格好をしちゃう奥さんも誘っているとしか思えないんだけど……」

「じゃあ、どうしてくれるの?」


 彼女はごろんとベッドで横になると、両手をひろげて、甘えるような素振りをする。

 ボクは当然、その誘惑に勝てるはずがない。

 キスをしたあと、彼女の全身を隈なく味わい尽くした。

 もちろん、性欲が限界に達しつつあるのは承知の上で——————。

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