第71話 彼女のいない昼下がり

 ボクにとって彼女のいない日は、まったりと私用に充てている。

 最近は、姉から18禁ゲームがあまり送られてくることはない。

 どうやら、人気作のスマホ版のリリースで忙しいらしい。

 と、いうことでスマホ版のリリース前のバージョンチェックをちょくちょく行ったりもするのだが、なかなかおかずに使えそうなエッチなシーンが多く(絵師さんも最高だよ!)、そちらも彼女がいない時を狙っていじったりしている。

 午前中はそちらの方のチェックを終わらせた。

 うん。今日もストーリーが良かった。別にボクはエッチなものであればいいというわけではない。やはりストーリーが大切! それにボクは綺麗なエッチを求めている。

 だから、NTRなんてものは除外だ。これだけは譲れない。

 そりゃ、NTRとか調教というものは興奮はするのかもしれないが、どうも、受け入れられなかった。

 それはたぶん、その女の子の気持ちを考えてしまうから——。

 きっと嫌がっているであろう、その子に、無理強いしても……というわけである。

 そういった作品は束縛欲の強い人には向いているのかもしれないが、そうでないボクにとっては、恋愛シミュレーションの方が良いと感じるのだ。

 と、まあ、先日、彼女に対して、あんな激しいエッチをしてしまった自分が束縛力がないか……というと、自身をもってないとは言えないのが辛いところなのだが……。

 昼食を食べ終えて、小説を読みふけっていると、時間が経つのもとても早い。

 今読んでいるのは、現世に転生してしまったダークエルフとその子と出会った青年の話だ。

 よくある話かもしれないけれど、何だか、そのダークエルフがその青年に出会ったことで、転生前に不幸だった自身と向き合って、変わろうとしていく姿に何だか、胸が熱くなってしまうのだ。

 まあ、これはそこまでエッチじゃないので、千尋さんに見つかっても圧を加えられたりしないはず……だ。


「それにしても、この間は参ったな……」


 思い返しても、笑えなかった————。



 先日、偶然、千尋さんが部屋の掃除をしていたら、吸血鬼とエチエチラブラブする内容の成人向けコミックが発見されてしまったのだ。

 これはまず釈明したい……。ボクのだけれど、ボクのではない。


「優くん? これは何かな……?」

「ち、ちぃちゃん!? どうしてそれを?」

「いえ、ちょっと本棚を整理していたら、奥の方に詰まっているような感じがあったので、抜き出してみたら、このような本が出てきたんです」


 もう、すでに瞳のハイライトを失った圧力しか感じない彼女が目の前にいた。

 ちなみにボクは彼女の眷属だから、彼女に逆らうことができない。


「優くん? ?」


 詠唱文字を重ねた言葉にボクは、ビクッ!と反応して、応える。


「あうっ。それはボクのだけれど、ボクのじゃないんです……」

「いやぁ、すっごく意味が分からないなぁ~」

「えっと、その本は姉から送られてきたものでして……」

「お姉さんから? どうしてこのようなものが必要になるのかな?」

「あうっ!? 別に必要というわけではないんですが……。姉には……というか家族にはまだ、ちぃちゃんと一緒に過ごしているとは伝えてないから、男一人の夜のお供として、送られてきたのかと……」

「あ! そうだったんですね! よかった。私の見間違いだったらいいんですけど、この本、使った感じがあるんですよね」


 びくぅっ!?

 そ、それはどういうことかな……。

 いや、確かに送られてきたのは最近で、それにボクは一応どういったものかを知るために、ページを開いたのは事実だ。

 で、何度か性欲を解放した——————。


「あ……………」

「そうなんです。この本から、優くんの香ばしい匂いがするんです!」

「ど、どうしてだろうね……?」

「そんなの決まってるじゃないですか。これを読んで、自慰をしましたね?」

「ちぃちゃん!? 言葉を選んでね!」

「では……、ナニをアレしましたね?」

「ちょっと!? 何だか、修正前よりも生々しくなってるんだけど!?」

「そんなことどうでもいいのです!?」


 いや、どうでもよくないよ! 作品BANされるだろうが!!(作者)


「ん? 何だか、今、聞こえたような……」

「まあ、そんなことどうでもいいのです! これを使って、性欲を解放したというのであれば、濃厚なモノが体外に出されたってことじゃないですか!」

「ん? まあ、そうなるね……」

「てことは、折角、熟成しているのが無駄になってしまうではありませんか!」

「あ、そういうこと………」

「何を他人事みたいに言っているんですか! 薄まれば、私や麻友の命に係わるんですよ!」

「そこまで!?」

「当然です! ですから、そういう行為は止めてください!」

「…………はい。」

「あ、でもぉ~」


 千尋さんは両腕でお胸を挟み込み、大きいものを強調しつつ、ボクの方に近づき、


「もしも、どうしてもっていうならば、私がたっくさん吸い出してあげますからね……。あ、そういえば、今日は私の日でしたよね?」


 はっ!? そういえば、今日は千尋さんが吸ってもいい日!?

 彼女も我慢できなさそうに、ボクを蕩けるような表情で見つめてくる。

 うわっ!? これは絶対にダメなヤツだ!


「では、いただきま~~~~~~~す♡」


 下着を右手で脱ぎつつ、左手をボクの肩にまわし、彼女はキスをせがむ。

 そして——————————。




 思い出すだけで、本当に大変だったな……。

 あの後、ボクはこってりと搾り取られた。

 血液も精液も………。

 最近、千尋さんが淫夢魔なのではないか、と思ってしまうほどに……。

 彼女には本当に気をつけな良きゃいけないな……。

 ボクは気持ちを改めて、彼女に向き合うことを誓った。

 時計の針は15時を指そうとしていたころだった……。

 ピンポーン————。

 突如、インターホンがボクしかいない部屋に鳴り響いた。

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