第70話 少女たちの密会⑪

 ちなみに彼女に着せたい水着って言ったら、どんなのを思いつく?

 優一さんは、私には可愛いのを着てほしいようなんだけど、でも、お胸がおっきいから目立つと嫌みたいで、どうしてもラッシュガードを着せられてしまう。

 それだと可愛い私の水着が見せれないんだけど……。

 でも、たしかに布地の面積が小さいのは、私もさすがにお断りかな。

 恥ずかしくてちょっとどう対応すればいいのか悩んじゃうものね。

 で、まあ、この間はホテルにあったからという理由で、白色のビキニを着たわけだけど。

 あれだと大人っぽい魅力が薄れちゃってるのよねぇ……。


「あんた、何をブツブツ言ってるの?」

「ふえぇっ!? も、もしかして、声に出てた?」

「ええ、ガッツリとね。あんなエロい下着を選べちゃうのに、水着は可愛らしさを重視するのね」


 麻友が冷たく突き放していそうな視線を私に浴びせる。


「いやいや、麻友さん、私たちは今、まだ高校生なんだよ?」

「うん。そうだね」

「高校生がいやらしい水着を着て、プールに行けようか! いや、行けまい!」

「いや、別にどや顔で反語をキメられても、ツッコミどころ満載なんだけど……」

「ええっ!? そう?」

「そりゃそうでしょう。だって、下着ならあんなのをつけてきてもいいと?」

「いや、そもそもあんな下着は、学校にはつけてこないでしょ」

「ポンコツなあんたなら付けてきてくれそうなんだけど」

「誰がポンコツよ……。それに嫌なフラグを立てるのは止めてよね……」

「体育の授業がある日につけてくると予告しておいてあげちゃう!」

「その予告、本当にいらねーな……。て、あれはそもそも夜にしか付けない……」

「あー、旦那の前でね。エッチな嫁だねぇ……」

「こ、こら! そうやって私のキャラを崩すのは止めろ」

「でも、夜は激しいんだろ……?」

「———————!?」

「おいっ!? 図星かよ……。ちょっと冗談で言ったつもりだったのに……」

「仕方ないじゃない。あっちはあっちで性欲の化身のようなスタミナなんだもん!」

「なんだもん! じゃないって。あんたねぇ……。向こうが要求してくるからそのまま受け入れていたら、そのうち、デキるぞ……」

「……しょれは……ちょっと思ってる……」

「いやまあ、あたしたちはそもそも普通の人と違って、妊娠しにくい性質を持っているけど、まあ、あたしたちが生まれた経緯というものを考えると、あながち、排卵日にドンピシャさせてしまえば、否応なく孕んじゃうわけよ」

「はい……。それは分かってます」

「ちゃんと否認してるんでしょうね?」

「3回に1回は……」

「まさか、生で?」

「いや、避妊が3回に1回に決まってるじゃない」

「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「確実に孕むわ……。そんな割合。普通に考えたってそうなるでしょうが……」

「あうっ……。これからは気を付ける……」

「本当にポンコツよね……。どうして、そういう常識的なことは理解できないのかしら……。あんたが妊娠しちゃったら、学校でも大問題になるでしょ?」

「もしかして—————」

「当然、優一も退学させられるわよ……。あたしたちが進学校に通ってるって自覚を持ちなさい?」

「はい……」


 ううっ。麻友、本当に怖いんだけど……。まあ、自覚を持たなきゃならないのは当然だけどね。


「で、水着よねぇ……」


 あ、そうそう。水着を選びに来てたんだっけ……。

 当初の目的忘れかけていたわ……。


「それにしても、どれも可愛いデザインになっているわね」


 私は手当たり次第に、チラチラと水着のデザインを品定めしていく。

 フリルのついた可愛らしいデザインのが多い。


「こうやってフリルがついてあると、胸が小さかろうが、大きかろうが、目立たないからね」

「あ、なるほど。そういう手があったか」

「いや、千尋は普通に大きいんだから、もっと胸が目立つような……、そうね、あんなデザインなんかどうかしら?」


 そういって、麻友が指さした方向には、明らかに誰が着るんだよ……と言いたくなるような紐ビキニだった。

 いや、もう布ってものがないぞ……。あんなの着てプールを歩くとか痴女としか思えない……。


「いや、普通にあれは頭が痛いヤツが着るんじゃないの?」

「あんた、頭痛いじゃない」

「ねえ、麻友、本気で殴っていい?」

「ふっ! 冗談に決まってるじゃない」


 危うく、水着売り場を血のプールに染め上げてしまうところだった。

 こういう冗談は命を懸けてでもいうべきではない。


「そうねぇ……。まあ、あたしはこういうピンクとか赤とかのフリルが付いた水着が良いと思うのよね」

「まあ、アホ可愛くていいと思う」

「ねえ? それって褒めてる? 貶してる?」

「メチャクチャ褒めてる。私にとっての、「アホ」は「とても」の意味だから」

「あ、そう……。でも、千尋ってどれがいいかしらねぇ……」

「私はどれを着ても似合うんじゃないか?」

「じゃあ、さっきの買う?」

「あ、嘘でーす。ちゃんと選びたいなぁー」


 麻友よ、これも冗談だぞ。ハイライト消えた、怖い目でこっちを睨むんじゃない。

 というよりも麻友も一緒に選ぶってことは、夏休みに一緒にプールに行きたいってことだよな。

 ま、それもありか……。

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