第69話 少女たちの密会⑩

 ダメ……。力が入いらにゃい………。

 私は弛緩した筋肉に力を入れようとするが、思った通りに体が機能しない。

 どうやら、とことんほぐされたのだろう……。

 て、何なんだ!? あのマッサージは………。

 あんなのセクハラすぎる! 胸の全体から先の部分まで繊細に揉み解され、続いては腹部をグイグイと押し込んでくる。も、もしかして、これは子宮マッサージ!?

 ヤヴァイ………。

 ちょっと気持ちよかったかも————。て、違うだろ、私。

 そのあとは、指で繊細な部分を弄ばれ、力が抜けた後にすべてを解されてしまった。

 おかげで私の体はすでに小さく痙攣することしかできない情けない姿に成り下がってしまった。


「あちゃ~、やっぱりヤッてたか……」


 麻友が店内からバックヤードに入ってくるなり一言そういった。

 ど、どういうことだろう……。

 私はぼんやりとする意識の中で、麻友と黒木さんのやり取りを見ている。


「黒木? あんた、可愛い子を見つけたら、すぐに手を出すの止めた方が良いよ?」

「えっ!? だって、こんなに可愛く果てるのよ?」

「いや、普通に同性であっても犯罪で訴えられるわよ、そのうち」

「そうかしら? 案外、まんざらでもない表情でみんな帰っていくわよ」

「いやいや、それってもの好きだから」


 え? じゃあ、今、ちょっと良かったって思ってる私って…………。(がぁーんっ)


「それにしても、千尋もかなりガッツリとヤられたわね」


 てか、私を見ないでほしい。

 ほぼ全裸でいやらしく蜜まで垂れ流して、小さく痙攣している黒髪少女とか普通に犯罪臭漂うでしょうが……。


「この子はね、超がつくほどの女好きなの。で、獲物を見つけたら、こうやってスタイルを測定した後に堪能されちゃうの」

「もっと……はやく……言ってよぉ……」


 私は震える身体に力を入れて、何とか言葉を紡ぎだす。

 いやぁ、本当にヤバイ。むしろ、エグイとでもいうべきだろうか……。

 優一さんはセックスで分からされちゃうけれど、この人は違う。

 体の小さな変化に気づいて、絶対に堕ちるであろう場所を的確に刺激してくるのだから。


「で? 黒木ぃ、ちゃんと千尋のスタイルは分かったんでしょうね?」

「もちろん、バッチリよ。あ、ちなみにあんたよりも胸、おっきいからね?」

「え、マジで!? この間まで、普通に勝っていたと思ってたのに……」

「いやいや、きっとこれは愛の力だね。愛する者から刺激をもらうことで、セクシャルシンボルは成長するものなのよ!」


 何だ、その定義は……?

 いまいち、私には理解できないのだが……。

 とはいえ、まあ、確かに最近、やたら優一さんは私のお胸への執着がお強く、夜に寝るときには型崩れが起きないように揉んだ後、ご就寝されるのだ……。

 別に彼氏に揉まれているだけだから、私も気持ちも体的にも気持ちいいので、やってもらっていたが、まさかそんなエッチな効果が出てくるとは……。


「このぉ! 千尋!? あんたがおっぱい大きくなったら、あたしは幼馴染属性でしか、優一に近づけないじゃない!」


 何に腹を立てているのか分からないが、その前に普通に私を置き去りにして、凌辱まがいな行為が行われたことに対する謝罪をしてほしいところだ。


「で、体調は大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ……」

「あー、まあねぇ。何だか、今日は黒木がやる気満々で、最後までやったみたいだし」

「いや、最後までとかおかしい……。死ぬかと思った……。それと下腹部に違和感があって、変な気持ちがおさまらないんだけど……」

「ま、それは彼氏に沈めてもらってね?」


 いや、「ね?」じゃねーんだわ。普通にあそこがキュンキュン♡して、燃えるような感覚に襲われてるんだけど……。

 これを収めるとかマジでどういうエッチさせられるんだろう……。

 い、いやダメだって、私は……! 何を考えているのよ!

 清楚可憐な女子高生である私が、なんてことを期待してるのよ!

 ちょっとでも自分の中に何かモヤモヤが生まれたことをすごく恥じてしまった。




 私たちの手には各々が購入したランジェリーの入った紙バッグを下げている。

 とはいえ、果たして、これはいったいいつ着ればいいのだ?

 意外とスポブラの上から、さわさわと触れられるのも切ない気持ちが芽生えてきて、よかったのだけど……。

 て、私は何を思ってるのよ……。

 私は清楚可憐で模範となるべき女子高生なんですから!


「それにしても、なかなか凄いの買ってたわね……」

「え? 何のこと?」

「だって、あの黒いヤツ、間違いなく布地が透けてるし、そもそも布面積も小さいし、どういったシチュエーションで使うんだろうっていうものだったんだけど……?」

「あ、あれはきっと勝負下着ってやつよ」

「勝負しなくても、勝手に優一が飛びついてきそうだけど……。そのおっぱいなら……」


 と言いながら、麻友は私の胸元を見て、大きくため息をつく。

 いや、そんなこと言われても、こっちもYESかNOかという示しにもなっていいかと思うんだけどね……。


「て、ちょっと!? 何の話よ!?」

「ふんっ! 清楚可憐な優等生でおっぱいが彼氏に揉まれて大きくなったなんて、お幸せなことね!」

「あ、あんたねぇ……。こういう人の多いところでそういうこと言うんじゃないわよ!」

「あ、ごめんごめん。それにしても、あたしも優一に揉んでもらおうかなぁ……。そうしたら、もっとセクシーなお姉さんになれるんじゃないかな」

「し、知らないわよ」

「ふんっ。まあ、あたしも優一のこと好きだから、夜伽とかしちゃおうかな」

「だから、言葉と場所を選びなさいって」


 私が睨みつけながら、ツッコミを入れると、麻友はその視線をさらりと受け流し、口笛を吹いて余裕そうであった。

 何だか、気に入らないんだけど………。

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