第64話 少女たちの密会⑤
私と麻友はスタバを後にして、モールを見て回ることにした。
そもそも私たち二人は、旧知の仲なだけあって、小さいころから一緒に遊び、一緒に同じ釜の飯を食った仲である。とはいえ、最近はお互いの家のことや、学業というものにそういった生活的なプライベートの部分が潰されてきたこともあって、それほど親密に話をすることもなかった。
まあ、私の場合は、いち早く優一さんを自分のものにするということが重要案件だったので、麻友のことはまあ、協定を結んだ段階でどちらかと言えば、放置していた……というと麻友は怒るかもしれないが、実際はそれに近いものがあった。
気の知れた者同士、こうやって駄弁りながら、ウィンドウショッピングをするということは気晴らしにもなるし、彼女がいてくれたから、優一さんが私の眷属になるという決断をしてくれたということもあるので、自分にとっては彼女にも感謝しているので、今では逆に付き合いを増やしていってもいいくらいだ。
今日は彼女は色々と夏に向けてのものを買い漁りに来たのだとか……。
「で、いきなり水着コーナーですか?」
「え? そうよ! だって、この間、あんた、プライベートビーチで楽しんだんでしょ? それはそれはリア充のように」
「そこまでは楽しんでいるような雰囲気は出していなかったと思うんですけど?」
「じゃあ、この写真は何?」
そういって彼女がスマートフォンをこちらに見せつけてくる。
そこには、私が優一さんに日焼け止めのオイルを塗ってもらっている姿であった。
私が照れながら、背中に日焼け止めが塗られているのがはよくわかる。
いや、しかも、これ、上手く優一さんの顔の部分は切り取られているけれど、私はそのまま顔出しになっている。
何なら、日焼け止めのオイルを塗ってもらっている関係で、ビキニの胸の方の紐がほどかれていて、程よく私の胸が地面にサンドイッチされて、エロく押しつぶされている。
「いやぁ、メッチャ綺麗に撮れてるわね……って、この写真どうしたのよ!?」
「そんなの広報カメラマンが撮っていたに決まってるじゃない」
「広報カメラマン!?」
「そうよ? 気づいていなかったの?」
「気づくも何も、周囲にそんな人いなかったわよ?」
「まあ、そりゃそうね。だって、カメラマン、超望遠レンズで撮ってたもの」
「いやいや、それ盗撮でしょ!?」
「あんたねぇ……。あたしがタダであんなスイートルームのチケットを上げるわけないでしょ? もらっていい思いしたでしょ?」
「ううっ!?」
た、確かに優一さんとの初めてのデート、そしてお泊りということもあって、私自身も興奮しちゃってたし、夜は夜で眷属になってもらったり、私自身が女として堕とされちゃったりとまあ、イベント盛り沢山だったから、確かにそれを無料というのは忍びない。
「てことで、あんたの写真は広報活動に使わせてもらうから」
「ちょっと!? 肖像権は!?」
「あー、そんなのいる?」
「いるに決まってるでしょ!? そもそも、私は学校での清楚可憐なキャラが売りなのよ!? それがこんなポスター出てきたら、キャラが一気に崩れちゃうじゃない?」
「あー、それをいまさら心配するんだ……。その辺は大丈夫だと思うよ」
「ふぇ?」
「だって、あんたが優一と同棲し始めてから、ラブラブで登校し始めたでしょ? あれでかなりあんたの真面目キャラは崩れかけてきてるから」
「ううっ……。それは確かに……」
「あ、あと、肖像権はちゃんと家族に相談を受けて許諾をもらったから」
「はぁ? 誰によ?」
「あなたのお父様に」
「ぐはぁっ!?」
私は思わず近くになった店の壁に手をかける。
うう……。ちょっと眩暈が起きちゃったよ。
「あんたのポスターとか写真を活用したアルバムを提供したら、喜んで協力するって言ってくれたわ。ここまで来たら、親バカというより変態に近いかも」
「お願い……。それ以上言うのは止めて……。離縁したくなっちゃうから……」
「あー、分かったわ。まあ、あたしもこれ以上、あなたを追い込む気はないの」
「いや、十分、ポスターで追い込まれてるんだけど?」
「まあ、今回はリア充をテーマとした夏の思い出を作ろうっていうのをテーマにしたポスターだから」
「で、どの写真が使われるわけ?」
「いや、だから、これ………」
「………………ん?」
「いや、だから、今見せてる、この写真なんだけど……?」
「ちょ、ちょっと待って!?」
「いやぁ、でも、本当に優一が天然で本当によかったよ。自然にあんたに近づき、自然にあんたの肌が焼けるのを心配して、自然と日焼け止めオイルを塗ろうとするあたり、もうこっちが書いたシナリオ通りって感じでね」
「………え、いや、あの……?」
私は食い下がろうとなんとかするが、どうやら商売人・麻友の血が騒ぐらしく、私の抵抗など物ともしない。
「で、でも、ほら、こういうお胸が見えちゃうそうな写真ってコンプラ的にどうなのかなぁ……って」
「まあ、炎上するんだったらすればいいのよ。テレビで扱ってもらえて嬉しいし、それにそんな似非フェミニストが出てきたら、下着の広告には何も言わないのか! って文句を言ってもいいと思うし」
「強気すぎないか!?」
「まあ、そもそもこういうのに噛みついてくるのは、もうこんな甘い恋ができない年配の女性か、老害くらいなものよ」
いや、かなり絞られてるし、かなりのケンカの売り方だな……。
私は若干引いた感じで麻友を見てしまう。
「てことで、実は今日から貼りだしてるんだ! ほらっ!」
と言われて、彼女が指さした方向には、モールに宙づり看板のように垂れ幕が下りていて、そこには私が笑顔で、優一さんに日焼け止めオイルを塗ってもらっている姿が……。
い、いや、仕事が早くありませんか……………?
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