第35話 少女は高ぶり、少年は落ち着く。(改)
学校では清楚可憐な優等生で知られる千尋さんが今では、ボクの下腹部を凝視して、激しく呼吸を乱している淫乱吸血鬼……。
なんとも信じがたい光景かもしれないが、これが現実なのである。
「ち、千尋さん!?」
「こうやってマッサージをすれば、量が増えると聞いたことがあります」
「な、何の話ですか!? それに、そんなこと、誰から聞くんですか!?」
「あのぉ……お母さまから」
千尋さんのお母様!? 先日の枕もとのコンドーム事件といい、吸血鬼である娘に対して、なんてものを教えているんですか!?
千尋さんはまるでおもちゃで遊ぶ猫のように、楽しんでいる。
「さすがにあんまり、それはよろしくないかと……」
「どうしてです?」
「はぅあっ!?」
猫撫で声で、上目遣いな美少女吸血鬼……いや、小悪魔がボクの方に甘えるように聞いてくる。そして、そのまま彼女がボクの胸にそっと頭をくっつける。
「あら! 優一さんの鼓動がドクドクと早まっていますね」
そりゃ、この状況下で反応しないはずないでしょ!?
「もう、ここまで来たらいいですよね?」
「も、もう、好きにしてください………」
「えへへ♡ では、遠慮なくいただきま~す♡」
………………………………………ちーん。(無抵抗)
「うあぁっ!?!?!?」
情けない叫び声をボクは小さく上げた。
頭が灼けるように熱く、痺れるような快感が走り、それが余韻のように全身に広がっていく。
麻友の時もそうだったように、最後の一滴すらも吸い出され、それがさらなる快感を呼び出してくる。
千尋さんは喉を鳴らす。それが異常なくらいエッチに見える。
指で口の端に付着した残りをそっと拭い取り、そのままペロリと舐め上げる。
「やはり、血のほうが吸血鬼にとっては、吸収の面から考えても、良いようですね」
「そ、そうですか……」
体がもう出ないからな! 無理はよせよ! と警告してくれているようだ。
「でも、どうです? 血を吸われる快感とはまた違うんではないですか?」
艶っぽく見える千尋さん。ボクは彼女をしばらく見つめて、
「そ、そうですね……。何だか、普段の千尋さんと違って、すごくいやらしく見えたのは事実です……。でも、あまりしてほしくないかもしれません……」
「あら? どうしてです?」
「そ、その……すごく恥ずかしいことなんですが……。ボクは千尋さんとのキスが特別なものに感じているからです」
「え……?」
「最初に告白されて、同棲することになった初日にキスまでしてしまった……。あれ以来、千尋さんとのキスはすごく特別なもので、あんまりそのイメージを壊したくないんです」
「それは私のことを思ってですか?」
「それもあるかもしれません。でも、ボクは千尋さんのことを大切にしたいと一緒に暮らしながら、感じてきました。だからこそ、千尋さんとのキスを無碍なものにしたくないんです」
「…………嬉しいです」
千尋さんはふんわりと微笑み、先ほどの性欲で高ぶっている表情とは全く異なる柔らかな表情を見せてくる。
「優一さんの優しさは、一緒に住み始めてから、ずっと伝わってきています。まだ、告白のお返事はいただけてないですけれど、私にとって優一さんが大切なのは変わりありませんから」
「告白の返事が遅くなってごめんなさい。でも、ボクにとって、今回の千尋さんとの旅行でボクにとって、そして千尋さんにとっても大事な何かを得られるんではないかと、考えているんです」
「わかりました。私も無理は言わないですから、一緒に導き出しませんか? 今回の旅行で私たちが次のステップに行けるのであれば、それは大きな進歩だと思いますから」
「大事な一緒の時間を築きませんか?」
「はい、喜んで。私も優一さんと一緒なのがとても嬉しいですから」
彼女はそういうと、ボクの手を握ってきた。
ボクもそっとその手を握り返す。
その手は絡み合うような感じでつながっていた……。
もう、一緒でいてほしい。離れたくないんだ。という意思表示がなされているかのように―――――。
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