第33話 少女の体は少年を求め始めた。

 今日から優一さんと旅行なんて、本当に何て嬉しいんでしょう!

 まあ、アヴァン・クリスティン・ホテルって名前を聞いてから、麻友のお父様が所有されているリゾート施設だってことは気づいていたので、これらのチケットは優一さんが麻友からもらったものだというのは薄々感づいていましたけれど、さすがに最後まで言わないでおこうと思っていた様子だったわね。

 そこは男の子らしいっていうか、なんというか……。

 別に言われても私は傷ついたりしませんのに……。

 でも、ラグジュアリーシートの横には、大好きな優一さんがいる。

 勉強のことなんか気にせずに、ナチュラルに会話が楽しめている。まあ、少し優一さんがぎこちないのはそもそも、女性経験がないからであって、それは逆に私の色に染められるということを意味しているんだから、全然オッケー!

 せっかくのラグジュアリーシートだけれど、私は飛びつくように優一さんの腕に抱き着く。

 夏の薄着はより、私のボディラインを優一さんの感覚に伝えてくれる。

 私の柔らかい胸は、彼の腕に沈み込むように変形する。


「もう、二人っきりな旅行、しかも、これが初デートなんて嬉しすぎます!」

「え!? あ、本当にそうですよね……」


 胸が当たっていることをそっと意識して、視線を泳がせる優一さん、可愛い!

 この旅行ではぜひとも、優一さんのかっこいいところも見せてほしいところだけれど、でも、こういった初心な童貞丸出しなところがいい! とてもいい!

 とはいえ、優一さんがエッチなことに興味がないというのではないことは、同棲し始めてからしっかりと情報を入手させてもらった。

 彼がいないときに、彼の部屋を探索したところ、様々なエロゲーが出てきた。

 さすがに購入はしてないはず……と、思って情報をひっくり返すと、優一さんのお姉さまがそういったゲーム会社で働いているとか……。だから、テストプレイなどで与えられたと考えれば、納得できる。

 もしくは、お姉さまは実家に住んでいると伺っていますから、実家にこのようなものを保管しておくことができないので、優一さんにテストプレイという名目で、このマンションを保管場所にしているのではないか、とも推測できる。

 どちらにしても、封が切られていましたし、ちゃんとプレイされていたようなので、様々なジャンルに関して、ゲーム内での知識はお持ちのご様子。

 中にはパッケージに可愛い吸血鬼がエッチな服装を着て誘惑しているゲームもあった。

 こ、これは確実に私と混同されるのでは――――!?

 思わず、ドキドキした瞬間でもあったわねぇ……。

 話は戻して、列車の旅というのはこうやって一緒の空間で抱き着けたりするのが良いわねぇ。

 麻友には悪いけど、私なりに楽しませてもらおうと思います……。

 でも、こうやって抱き着いていると、優一さんの性欲が高まっているからかしれないけれど、フェロモンのような匂いが濃厚になってくる。

 あぁ……、自分が自分でいられなくなってしまそうなんですけれども……。

 それにしても、いつ匂っても、最高の香りです。思わずゴクリと私は唾をのんでしまう。

 あぁ、欲しい……。飲みたくなってしまう、と同時にどうしてでしょう。私の下半身もキュンキュンと疼き始めてしまう。

 こんなことは今まではありませんでした。でも、今日はどうしてか疼いてしまう。

 私は吸血鬼であって、決して、ふしだらな麻友のような淫夢魔とは一緒にしないでほしい。

 私は自然と吸い寄せられるように、彼の瞳を見つめてしまう。


「ど、どうしたんですか? 何だか熱っぽい感じがありますけれど……」

「え? あ、そんなことないですよ。私は普段と何も変わりませんから」

「本当ですか? 少し熱があるような顔をしていますよ」

「そ、そうですか?」

「えぇ……」


 そういうと、優一さんはそのまま私のおでこに自身のおでこを触れ合わせてくる。

 ちょ、ちょっと待って!? そ、それはさすがに他のお客さんがいなくても恥ずかしいです! 普通に手でかざしてくれればいいだけなのに!


「うーん。微妙に熱いような気がしますね……」

「そ、そうですか?」

「はい……。本当に大丈夫ですか?」


 心配そうにしつつも、まだおでこを離してくれない……。

 優一さん!? ど、どうしてそんなに積極的なんですか……!?

 私の鼓動が明らかに高鳴ってきているのがわかる……。もう、耳にまで、自分の心臓の音が伝わってくるようだ……。


「も、もういいんじゃないですか? 私は大丈夫ですし……」

「そうですか?」


 そういって、彼はおでこを離す。そして、そのときに私はふと彼の唇に目が行ってしまう。

 はうぅ……。な、なんてことを考えているのでしょう……私は。


「ゆ、優一さん?」

「はい? どうしましたか?」

「あ、あの……私の我が侭を聞いてくださいね」

「え、はい……いいです……んぐっ!?」


 私は彼の同意を得た瞬間に、唇を重ねていた。

 もう、我慢できなかったの……。どうしても甘い甘いキスを欲していた……。

 いつの間にか、私は彼の首の後ろに両腕を回していた。

 離れられないように。そして、自分自身、離れたくないという意思表示をするように。


「すごく甘くて美味しいです……」

「ぼ、ボクもです……」

「もう少し、してもいいですか?」

「ボクももう少し、千尋さんとキスをしていたいです」

「優一さんから、そんな風に言ってもらえると何だか嬉しいです」


 そう言って、私は彼の唇を再びふさいだ。

 今度は唇だけではなく、舌を絡めた蕩けるようなキスをした。

 そのたびに私の体が少しずつ、優一さんを求めているように疼いたのは言うまでもなかった。

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