第23話 美少女はとっても一途でした。

 じゅる、じゅるじゅるじゅるじゅる……………


「く、はぁはぁはぁはぁ!」


 何だろう。すっごく吸われていて、下半身から徐々に力が抜けていく。

 ボクは思わずその快楽に身を任せてしまう。

 ショッキングピンクの髪をした女の子は、そのままボクの腰に腕を回し、抱き上げるようにしつつ、さらに吸い上げていく。

 ボクは一日中、千尋さんに弄ばれた結果、溜まった性欲をすべて吐き出した。

 それをそのままその女の子は吸い取っているのだ。


 びく、びく、びくんっ!!!


 ボクは何度かの痙攣のあと、脱力してしまう。

 が、その女の子は最後の一滴まで吸い出した。

 もう、出ない―――――――。

 その女の子はボクの腰から腕を払うと、口から滴り落ちそうな粘液を指で拭い取り、そのままぺろりと一舐めした。


「ふむ……美味であった………」


 ショッキングピンクの髪の女の子は、妖艶にそう語り、月明かりの反射によって光る紅蓮の瞳にボクは恐れおののいた。

 綺麗な瞳だが、妖しさと同時に恐ろしさを含んでいるように感じた。

 が、ボクの恐怖は、憎悪に満ちた声で押さえつけられてしまう。


「あ~ん~た~ねぇ~」

「ふにゃっ!?」


 もちろん、その憎悪の満ちた声の主は、千尋さんだ。

 千尋さんは黒髪を逆撫でつつ、女の子の首根っこを摑まえる。

 そして、指をパチンッ! と鳴らせて、部屋の明かりをつける。

 そこにいたのは――――――――、


「麻友!?」

「あ! あわわわわわ………」


 ボクが驚きつつ、声を上げると、そこには以前ここで見せたような肌の露出が多い服に身を包んだ麻友がいた。ショッキングピンクの髪と紅蓮の瞳以外は、同じように見えるが、如何せん、頬を赤らめて、気分が高揚しているように見える。


「あ、あの、こ、これはだね………」

「ったく、何やかんや言っても、淫夢魔の女王の娘といったところでしょうか?」

「あはは、そんなに褒めないでくれよぉ~」

「褒めてなんかいません!」

「あぅ……。ごめんなさい……」

「私は何とか込み上げてくる怒りを抑え込んでいるという表現のほうが正しいかもしれませんね」

「あ、やっぱり怒ってます?」

「そりゃそうでしょう? 私が一日中、貯めに貯めさせた優一さんの性欲を一気に吸い取るなんて……」

「あ、やっぱりそういうことしてたんだね? だからかぁ……、すっごく濃厚で喉の奥に引っかかるような粘り気と勢いの良い射精に思わず、あたしも痙攣しちゃったよぉ~」

「くぅ~! バカッ! それは私が明日の朝、優一さんに最後の仕上げにナマ乳を揉ませて、性欲がマックスになったところで、血を吸おうと思っていたのに……」

「うわ。あれよりまだ上限を超えさせるとか、千尋ちゃんは鬼だね」

「まあ、私は真祖の吸血鬼ですから」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょい!?」


 思わず、ボクはそのタイミングで声を上げる。

 そりゃそうだろう。聞いていたら、何だか、ボクがいるのにいないような感じで話が進んでいるようなところがあるし、それに何やら物騒な言葉も飛び出すし……。


「お、おまえ、麻友なのか?」

「あ~、はい。あたしは幼馴染の麻友だよ! 精力が尽き掛けて、性欲が高まるとこんな感じになっちゃうの」


 そういいつつ、彼女はショッキングピンクの髪を指でクルクルと巻く。

 いや、それだけじゃなくて、ボクが気になったのは――――、


「麻友はエッチなことしないんじゃなかったのか?」

「え? エッチはできないよ」

「いや、言っている意味が分からない……」

「だから、私はセックスはトラウマで出来ないんだって……。精飲そのものは出来ちゃうよ。まあ、恥ずかしいのとトラウマの影響で、真っ暗闇でないと吸えないんだけどね。えへっ☆」

「いや、そこ可愛らしく言っても、何だか問題があるんだが……」

「とはいえ、今までお前、精力を飲まずにやってこれたのか?」

「いいや、飲んできたよ」


 ケロッとした表情で、麻友はボクの言葉にうなずく。

 ボクは何だか複雑な気持ちになってしまう。幼馴染が夜な夜な様々な男の精力を吸っていたなんて思うと、あまり気分のいいものではない。


「あ、もしかして、あたしが他の男性の精子を飲んでるとか思ってない?」

「いや、言葉を選ぼう……」

「そこんところは安心していいよ。あたしは一途だからね」

「ん? どういうことだ……?」


 ボクの頭の中ははてなマークで覆いつくされそうになってしまう。

 彼女にとって、精飲という避けられない欲望を満たすために、他の男性を使わない?


「優一さん……、彼女の日本語力が低レベルなのは、代理で謝ります」

「ちょ、ちょっと!? あたしをまるでアホの子みたいな扱いするのは止めてよね!」

「いや、まあ、事実、アホでしょ……。定期考査の結果を見ていても」

「あぅ………」


 ぐっさりと千尋さんの一言が刺さった麻友は、がっくりと肩を落とす。


「彼女のような淫夢魔は一定年齢になると、男性の精力を吸いながら、生活をせざるを得ません。とはいえ、彼女はもいいので、それほど吸っていたようではありません。あと、彼女の吸っていた精力の質が高すぎたのも一つの問題かと………」


 うーん。それと他人の精力を吸っていないと、どうつながるんだろうか……。

 ボクの整理が追い付いていないことが表情に出てしまう。

 それってどういうことなの――――――?

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