生首

 扉が開かなくて困る日が時々あるんです。何か引かっかているのかとも思うのですが、突然時刻が18時になると開くんです。勝手に。もちろん目の前での光景でしたので、急いで出て人を探したんですが、それらしき影は見つかりませんでした。

 それで、馬鹿らしい話ですけど心霊アパートなのかなって、そういう話は聞かなかったけれど怖くなって調べて見たんです。事故物件かどうかが分かるサイトで住所を検索して、まあ、ありませんでした。でも、やっぱり扉が開かない日があるんですよ。業者を呼んで施錠する突起を調べてみても異常がなく、もうそれは隈なく調べました、それでも、異常がありません。

 何故こうも調べているかといえば、仕事に行く日に限ってそのようなことが起きた場合、恐ろしいと感じたからで、今のところ出社しない日にしか起きておらず。なんとかなっていましたが、とうとうその時がやってきました。

 上司に電話したんです。

「扉が開かなくて、会社に行けそうにありません。」なんて言った瞬間。大きな声で、窓から飛び降りて、出社しろと言われました。でもこのアパートは人間サイズで通れる所といえばベランダくらいしかなく、なんとか滑り止めで入ったこの会社を首になったら、私は、どうなる。せっかく上京して来たのに、でも、ベランダから外に出るのは怖かったです。だって、私が住んでいる所は3階ですもの。

 こんな分けの分からない状態が続いていて、水道を通す管を伝って降りて行く。はっきり言って泣きそうでした。だって、幽霊がいるかもしれない所で、そんな危ないことをしたくなかった。でも、会社にはいかないといけない。私は、管を左手で掴み、右足を手すりに乗っけて、

 と、していた時に後ろで開く気配がしました。気配です。泣きそうな顔を浮かべながら、そちらの方に向かいました。扉が開いていました。私は、時間を頭の中に浮かべて駆け出しました。まだ、間に合う。玄関を頭だけでた所で急激に扉が閉まり、私は、斜めに身体を曲げて凄い力で締められていると感じました。大きな声で喚き、とうとう意識が途絶えて、目が覚めたのは夕方18時でした。

 首に違和感があったんです。見ますか?はい、これです。たくさんの手形ありますよね。でも、いいんです。そんなこと、ただ、それよりも気配が、あったんです。私は、玄関におそるおそる、音を立てずに向かいました。

 扉が開いていました。

 次は逃さない。そんな風に感じられて、ベランダを使って外に出て、あとはもう、実家に帰りました。会社?いたくはなかったですけど。首ですよ。首。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

百物語 一葉迷亭 @Itiyoumeiteini

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ