第172話 ゴブリンキングの食欲は凄いってマジですか?

エマがゴブリンキング達に指示を出していく。

5分程であらかたの指示が終わったようだ。エマは最後にゴロタに声をかける。


「ふう。後はゴロタ、よろしくね」


「ガァ(了解)」


統制のとれたゴブリンキング達の様子に、バルバトスさんは興奮している。


「ゴブリンキングが群れをなすなんて、歴史的大発見だ!そもそもゴブリンキングの生態は謎に包まれている!おい、ちょっとだけ触ってもいいかな?」


そんな中ピノだけは1人、まだブツクサ言っている。


「土地の整備って大変なんすよ。木を切ったり、草取ったり、耕したり。そんな繊細な作業できるとは思えないっすけどね」


「こら、ピノ。なんて事言うんだ」


「ふん!ししょーの浮気者!浮気者の言う事なんて聞きませんから」


そう言いつつもピノは魔法で土地の整備を始めた。

基本いい子なんだよな。


でも何故か機嫌が悪いみたいだから、後でどうにか機嫌とらないとな。


そう思ってぼんやり考えていると、エマに声をかけられた。


「あ、あの、た、タクトさん?ちょっとお話しいいでしょうか」


「ああ、いいけど。改まってどうしたの?」


「は、はい。ちょっとここだと。ふ、2人だけで話してもいいですか?」


なにやら深刻そうな顔をしている。


「分かった。じゃああっちに行って話そう」


「は、はい」


俺たちはゴブリンキングとバルバトスさん、ピノを残してその場から少し離れたところまで来た。


「ここなら多分誰にも聞かれないけど、話って」


「あ、あの。タクトさんの事なんですが……領主って、本当なんですか?」


「ああ、本当だよ。突然のことで俺も驚いているけど」


「そ、そうですか。タクトさんはここに、領民がたくさん来る事を望んでいるんですよね?それで開拓を……」


「まぁ一応そうなんるかな。流石に今の人数じゃね」


「そ、そうですよね。じゃ、じゃあ、私達は近々ポルカを離れるので、安心して下さい」


「えっ!?」


「ゴブちゃん達がいてはきっと領民は集まってきません。私達がここにいればタクトさんのご迷惑になりますし」


「い、いや待って、そんな……」


「あ、気にしないでください。もともとここにいられるのもあと1年くらいかなって思ってたんです。ゴブちゃん達のご飯、ここら辺は魔物が多いので狩をしてたのですが、魔物の数が減ってきてしまい、場所を移そうって話には元々なっていたんです、だから……今回よそに行くのはタクトさんのせいじゃないんです。ただちょっと予定を早めただけなんですよ」


そう言ってエマがフォローしてくれたが、俺の気持ちは沈んでいた。

しかしエマの言う通り、ゴブリンキング達がいたら普通の人々は住もうと思わないだろう。それどころか冒険者達とゴブリンキング達で争いが起こってしまう可能性すらある。


「そんな暗い顔しないで下さい、タクトさん。さぁ、戻りましょう」


「あ、ああ」


俺たちが戻ると、ピノの声が真っ先に聞こえてきた。


「あははははは!凄いっす!君たち凄いっす!」


何事だと思って声のした方に向かってみると、


「こ、これは!?」


驚くべきことに、たった10分程で、かなりの土地が整備されている。


「凄い!凄いぞゴロタ!」

と柄にもなく大きな声をあげるバルバトスさん。


そしてピノはと言うと……呆れた。

ピノはゴブリンキングの頭に乗っかり、楽しそうにあそんでいる。


「あははははは!次はあっちっす、あっちに行ってください」


「おい、何してんだよ、ピノ」


「あ、ししょー!凄いんですよ、この子達!!なんと木を1人で引っこ抜いちゃうんっすよ!あと自分で道具を作って土を耕すしとーっても賢い!そしてなんと……ピノの事頭に乗せてくれたんすよ!優しいっす」


そう言ってはしゃぐピノを見て、エマは嬉しそうに笑った。


「良かった。ゴブちゃん達と仲良くしてくれて」


エマがそう言ったのを見て俺は覚悟を決めた。


「よし、エマ、ゴブちゃん達は移動しなくていい」


「えっ?」


「ゴブちゃん達は立派なポルカの領民だよ!」


「お、お気持ちは嬉しいのですが、タクトさん。やっぱり食料の問題があってゴブちゃん達は……」


「俺はここの領主!領主が領民の食料問題を解決するのは当然だ!」


エマは最初ポカンとしていたが、すぐににっこりと笑った。


「はい、タクトさん、ゴブちゃん達の事を、よろしくお願いします」

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