第171話 ピノの様子がおかしいってマジですか?

「きょ、今日は、ゴロタに言われて、あ、あのその、つ、通訳とご、ご挨拶に……」


「ああ、そういうことか。この前ゴロタが来てくれたのに、言葉が分からなくて。ゴロタはエマを呼びに言ってたのか」


「ししょー誰っすか、この女。いつ帰りますか?今っすか?」


「あー紹介するよ、こちらエマ、後ろの大きいゴブリンキングがゴロタ。2人とも俺の友達」


「ふーん。ようこそおいで下さいました。ではお帰りください」


「おいおい!今来たばっかりだろうが。何で来たかも聞いてないし」


何故かピノは頬を膨らませ風船みたいになった。


「ジェ、ジェイドさん。あ、いや、本当の名前はタクトさんって言うんでしたね。きょ、今日皆んなで来たのは、じ、実は、ゴロタはこのゴブリンキングの群れのリーダーをやっているのですが、ゴロタがタクトさんが恩人だと言ったら皆んな挨拶するって聞かなくて。あ、あと良ければ、ゴブリンキングの言葉を少しお教えしようかと……たぶん、タクトさんならすぐにゴロタの言葉聞き取れるようになります」


「そうかな。ゴロタとは話してみたいし、時間がある時ゴブリンキングの言葉、教えて欲しいな。というか恩人って大袈裟な。ゴロタと俺はもう友達だろ」


「ググゥー」


お、なんかこれは分かった気がするぞ。ゴロタも友達だって言ってくれてる気がする。


「今ゴロタは何て言ってた?」


「さっきは、『小腹すいた』ですね」


全然違ったわ。


「ししょー、じゃあ挨拶も済んだっすね。帰ってもらいましょうよ、ゴブリンキングとエマさんには」


そう言ってピノが腕に抱きついてきた。


「えぇ。まだいいんじゃないか来たばっかりなんだし。それと何で腕にくっついた?動きにくいぞ、離れろ」


「駄目っすししょー!早くこの辺の開墾をしなきゃいけないんすから」


引き剥がそうとしてもピノはスッポンのようにくっついて離れない。


「か、開墾?この森を開墾ですか?で、でもこの辺は住む人もいないですし、そんなことしても……」


「ああ、実は訳あって俺がここら辺の領主になったんだ。流石に領民が1人しかいないってのも寂しいし領地を整備しようと思ってさ」


「そうっす。そうっす。だからししょーとピノは忙しいんです早く帰ってください」


何でピノはエマを返そうとするんだ?もしかしてゴブリンキングが恐いのか?うーんゴロタの事をもっと深く知ればいい奴ってピノも分かるはずなんだけど。うーん、どうしたもんか。


「あ、あのー。ご、ご迷惑じゃなければですが、わ、私達お手伝いしますよ」


「あー気持ちは嬉しいけど、結構力仕事だからエマには……」


「い、いえ、私とゴロタが指示を出してお手伝いします。ゴブリンキングは力が強いので、きっとお役に立てると思いますよ」


「えっ、もしかしてここにいる皆んなで手伝ってくれるって事?」


「そ、そうですが……だ、駄目でした?」


ゴブリンキングが開墾なんて話は聞いた事ない。聞いた事はないが、今は猫の手でも借りたい状況だ。


「ありがとう。ぜひお願い……」


「だーめっす!ぜったいぜーたいダメ!」


「いや、どうしたんだよ本当にさっきからピノは?」


「だって……なんか負けそうな気配なんですもん!!」

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