第170話 悪い女

ピノ視点


ゴブリンキング!む、群れ?

こんなの初めてっす!!


そ、そうっす!探知、探知しなきゃ!

……101体!?ゴブリンキングが101体って!!


い、1体だったら正直楽勝っす。

というか普通ゴブリンキングって群れにならないっすよね?

複数体なんて相手にしたことないっすよ〜!!


ゴブリンキングは魔物の中でも知能が高いっす。

連携とかされたら……何体いける?3?いや4体同時までならいける?

でもそれが限界っす!

しかも、4体っていうのは普通のゴブリンキング相手ならって話っす!

たぶん、あのゴブリンキングたち、普通のゴブリンキングよりもかなり強い……。


……そして中でもあの中心にいるゴブリンキング、私と同等?そのくらいの強さがありそうっす。

ただ、スキルを使えば私の方が……。


おっちゃんが戦闘準備を取ったので、私も準備をしようと思っていると、ししょーがおっちゃんを止めました。


私はししょーの言うことには従います!

すぐに戦う構えを解いたっす。

おっちゃんも、最初は渋い顔してましたが、戦っても勝てないと分かったのか、ししょーの策に賭ける事にしたのか銃を下げました。


ししょーの事っすから、あいつらと戦わないで何かこの状況を打開する方法を考えたんでしょう。


ん?ししょーなんか見てる?なんでしょうか。


ゴブリンキングが群れをなしてきたインパクトが強かったので気づきませんでしたが、あのつよつよのゴブリンキングの肩の上に、女の人が乗っていますねぇ。


まぁ私ほどじゃないっすけど、一般的に見ればちょこっと綺麗な感じの人かもししれないっす。

清楚系って言うんすか?

ちょっとあざとい感じ。

まぁ普通の男の子には人気あるのかもしれないけど、あーゆのはししょー好きじゃないっす!

ピノそう言うの分かっちゃう方っすから!!


ししょーは、


「あれはたぶんエマだな。大丈夫、絶対攻撃してきたりはしないよ。逆に武器を取り出して刺激すると良くないです。完全にしまってください」


おっちゃんは一瞬しぶりましたが、すぐ銃を近くに置いて、てぶらになりました。


ししょーの言った通りでした。


ゴブリンキングたちは、私たちの100メートル前くらいで、ぴったりと足を止めて一定の距離を取ったっす。


そしてやっぱり思った通り、あのゴブリンキングたちのリーダーなのか、1番強いゴブリンキングが前に出てきました。


女の人も肩に乗ったままっす。

しかし彼女はししょーのことをチラチラ見るも、顔を完全に隠しています。


「ゴロタ、エマを連れてきてくれたんだな。後ろにいるのエマだよな?」


「グヴァーゴ(そだよー)」


ゴロタ?凄いっす!


ししょーはゴブリンキングにも知り合いがいるんすね!!


「エマ?久しぶり」


ししょーに話しかけられたのにもかかわらず、エマと呼ばれた女の人は、顔を真っ赤にして俯いています。


……ははーん。


あの女、ししょーのことが好きなんすね!!!


はぁー、罪な男っす!ししょーも。


ししょー。脈のない女の子に、期待を持たせるのは良くないっすよ。

女性に対して優しいのもいいことっすが、ここはちゃんとドライに反応してあげたほうがいいと思いますよ。


と言う思いを、目を細めて、ししょーに送ったっす。

ししょーはピノの事が好きだから、かわいそっすねーこの子も。


「あー緊張してるのか?大丈夫だよ。このちっこいのはピノ。そしてこのヒゲを生やした人はバルバトスさん。2人とも良い人だから」


ししょーにそう言われるとエマと呼ばれた女性はゴブリンキングの肩から降りてきました。


「ぐっ!」


ちゃんと顔見ると、やっぱり綺麗っす……。


黒髪清楚。流行りの白の服。露出も適度。王都系女子ってやつすね。

街に行ったらナンパされまくりでしょうが、あんな奥手な性格じゃ悪い男にいつか騙されそうっす。


「エマ、服や髪型変えたんだね」


「ちょ、ちょっとだけ……へ、変ですよね……」


「全然そんなことないよ!き、きれいだよ!」


は何言ってんすか?

ししょー、そんな気を持たせることを言ったら……。


そう思ってししょーの方見て私は絶句しました。

ししょーの、鼻の下が伸びてるっす……。


ししょー!!私というものがありながら!


こいつ、ただのおどおどした女かと思いきや、とんだ女狐っす!!


こいつ、師匠のことを狙ってるっすね!

大丈夫っすししょー!

私がししょーを守ってあげますし、ししょーの目を覚まさせてあげるっす!!!

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