第162話 ピノvs殺人鬼
ピノとヒメネスが対峙するその姿は、まるで大人と子供。
どう見てもピノに勝ち目があるようには見えなかった。
その光景を見て、ゴールズとその従者はニヤニヤとしている。
「1回戦の勝負はどちらかが降参するまで続くデスマッチです。そして魔法の使用は禁止、使った時点で反則負けとします」
「な!魔法を禁止!?汚いぞ!」
力比べでは到底勝てそうにないため魔法でと思っていたのだが、相手もそれをよんでいたようで早々に封じられた。
俺がゴールズの従者を責めると、従者は俺を見下すように笑いながら、
「勝負の内容はこちらで決めますので、口を挟まないでください」
ピノは従者を睨みつける俺を見て、あっけらかんと言った。
「ししょー、大丈夫ですよ。これ使いますし」
そう言ってピノは腰からナイフを出した。
その瞬間、
「武器の使用も反則とします」
「あらら」
ピノはポイっとナイフを放り投げた。
「いくらなんでもルールの付け足しは汚いだろ!!」
「なんと言われようが、ルールは変わりません」
「おい、そろそろ始めろ」
ゴールズがそう言うと、従者は「はい」と返事をし、ピノとヒメネスの間に立った。
「では、ゴールズと奴隷タクトの決闘団体戦1回戦を開始します。始め!」
ヒメネスは開始の合図を聞き、「へっへっへ」と不敵に笑う。
「ようやく始まったぜ。最初に説明しておいてやろう。俺の強さを!」
そう言うとヒメネスは近くにあった木をグッと掴んだ。
すると、ヒメネスが掴んだ部分がバキッとわれ、大きな大木が折れてしまった。
「な、なんて握力だ!」
魔力の強化を感じなかった。
強化なしの単純な腕力でこれをやると言うのはとんでもないことだ。
「はっ!魔法や武器なんぞ使わなくても、俺はこの握力で何人もの冒険者を殺してきた!そして、次はお前だ!」
そう言ってピノを指差すヒメネス。
ほ、本当に大丈夫かなピノ。
もしちょっとでもやられそうなら反則負けになっても俺が入ってあの握力ゴリラをボコボコにしてしまおう。
そうだ、そうしよう。
さてピノの様子は……ピノはそんなヒメネスのパフォーマンスや言葉が聞こえていないかのように一人小さな声でブツブツ話している。
「勇者パーティーに付与しといたポイント、そろそろ回収しても大丈夫っすかね?流石にこの場所はそう簡単に分からないでしょうし」
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ピノ レベル55
ユニークスキル『ポイント付与』
自分のレベルに応じた強化ポイントを自分や他人に自由に付与できる。
現在ポイント 0/55
自身への強化ポイント 0
他者への強化ポイント 55
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「何ブツブツ言っている?命乞いか?」
「『ポイント回収』……よし、これでOK。あ、すいません、なんか言ってたっすか?ちょっと聞いてなくて、もう一回どうぞ」
ピノがそう言うとヒメネスは顔をカーッと赤くした、舐めやがって!
そう言ってヒメネスがピノに襲いかかる。
力だけじゃない、スピードも一級だ!
「ピノ!!」
俺は心配して思わずそう叫んだがそれは杞憂に終わった。
ピノはいつの間にかヒメネスの攻撃を避け、その後ろに立っていた。
「な、なにが起こった!?」
ヒメネスは自分の空を切った両腕を見て戸惑っている。
俺もピノの実力が見立て以上であった事に素直に驚いた。
ピノはクスクスと笑いながらヒメネスを見る。
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ピノ レベル55
自信の強化ポイント 55
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「ふふ。遅すぎてあくびが出るっす!」
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