第160話 契約書の罠
決闘のための契約書を書く前に、気になる事を確認。
「仮に俺たちが勝ったらどうなるんですか?」
俺がそう言うと、ゴールズと従者が同時に鼻で笑う。
従者は呆れた様に返す。
「万が一にもありえない事を話す必要がありますか?」
「いや、でも流石に不公平じゃ……」
そう言うと笑いながらゴールズが俺に言う。
「分かった分かった。じゃあ一勝したら鷹の爪が保管する聖遺物を一つ、二勝したら鷹の爪の人員を誰でも1人この領地に、三勝したら現金で10億、これでどうだ?」
「うーん。損なのか特なのか分からないけど、まぁ一方的じゃないんでそれでいいです」
俺がそう言って同意すると、従者が慌てた様子でゴールズに耳打ちした。
「ゴールズ様!?流石にそれは、大丈夫なんですか?」
「ふははは、心配しなくともジェイドがいなければあっちにいるのは元ギルドの事務員と小娘、こっちの勝ちは間違いない。それにだな……ごにょごにょ……」
「ふむふむ……な、なるほど!流石です!ゴールズ様!!」
「ふははは、だろ?」
「あのーここにサインすればいいんですか?」
「ああそうだ!早く書け!」
そうやって急かすので、俺はささっと名前を書いた。
するとひったくる様に契約書を奪われる。
「ふははは!この契約書は魔道具だ!この書に書かれていることは絶対だからな!」
「いや、それはそっちも一緒ですよ?」
「分かっているわ!すぐに俺も名前を書く!」
お互い契約書へのサインを済ませ、決闘の準備はついに整った。
「では早速第一戦を執り行いましょう。うちの1人目は……」
そう言った所で、馬車の荷台から現れたのは身長二メートルを超える大男だった。
何故か手に手錠が付けられている。
「ふははは、驚いたか!そうだ!こいつは解体屋ヒメネス!」
「か、解体屋ヒメネス!?だと!!」
駄目だ。全く知らん。
ヒメネスと紹介された男は勝手に話出した。
「くははは。怖気付いたか!お前も知っての通り、俺はA級冒険者を含める146人を殺し、鷹の爪に捕まった。だが鷹の爪は俺を殺さずに、掃除屋として俺を雇ったというわけだ!!」
とんでもなく悪いやつというのは分かった。
よし、心置きなくボコボコにできる。
「じゃあやるか!」
俺がそう言うと、
「ちょっと待った!」
と従者から横槍が入った。
「なんですか?早くはじめたいんですけど」
「すぐに始めるのには異論はない。ただ、ヒメネスと戦うのは平職員、お前ではない!そこの小娘だ!」
「はっ!?」
驚く俺に、ゴールズはしたり顔で言う。
「ふはははは!よく契約書を見ろ!決闘する相手はこちらが選べるとなっているぞ!」
ゴールズが指差した場所に、確かにとーっても小さい字で何か書いてある。
「あっ!ホントだ。きったね!!」
「ふははは、なんとでも言え!」
「くそぉー」
Aクラス冒険者を倒せると言うことはSクラス相当の力がある可能性あり。
ピノに戦わせるのは流石に……。
「い、一回戦は棄権……」
俺がそう言おうとすると、ヒメネスは気色の悪い笑みを浮かべ、それを制した。
「おっと、棄権はさせないぜ。久々におもちゃを与えて貰ったんだからな。俺は別に金にもも権力にも興味はない。ただ人を殺したい、それだけだ。お嬢ちゃん。これから行われるのは一方的な惨殺さ、お嬢ちゃんはただ泣き叫んでいればいいんだ」
「おい、ヒメネス。あいつは俺の女になるんだから、あまり壊すんじゃない」
「ちっ」
そもそも一敗するだけでジェイド(俺)が鷹の爪に行かなくてはならない。
棄権というか、全勝しなければならないのだ。
「どうすれば」
焦っている俺にピノは不思議そうに話しかける。
「ししょー何焦ってるんすか?」
「いや、だってあんな危ないやつ」
そう俺が言うとピノは嬉しそうに笑う。
「なるほど、心配してくれたんすね。でも大丈夫っす。あいつ、ボコボコにしちゃいますから」
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