第154話 再会

斧を持ったおじさんは一切躊躇わずに、俺に向かってそれを投げてきた。


「うわっ!」


俺が斧を避けると、斧は避けた先で何かに当たったらしく背後でガシャンと音がした。


「へっ?」


振り返って音のした方を見ると、斧で真っ二つになった、おそらく魔道具であろう怪しい円い機械が落ちている。

おじさんはツカツカと歩み寄り、危機をひょいと拾い上げる。


「こいつは監視用の魔道具だ。透明化して対象にずっと張り付く。お前さんはこの魔道具を通じてずっと誰かに見張られていたんだ。これをつけた奴に心当たりは?」


おじさんは鋭い眼光で俺に尋ねる。


「いや、全く」


おじさんはしばらくじっと俺を見つめる。


「嘘をついてるようには見えないが、普通の兄ちゃんにも見えないな。さっき俺が言った『くぁwせdrftgyふじこlp』は、冷戦状態の隣国の言葉で『足元に蛇がいるぞ!』だ。それに反応しなかった所を見ると、敵国のスパイって訳じゃないらしい。さて、お前さんは何もんだ?」


何もんだ?というセリフは俺が聞きたいくらいである。


何この有能なおじさん?

ああ!この人が王様が言っていた有能で領地を任せられるっていう人か!


「お、俺は国王様からこの土地を頂いて任されました。男爵のジェイドという者です」


俺がそう自己紹介すると、おじさんは「はっ?」と頭にはてなを浮かべた。


「この土地の?貴族だ?いつ戦争が始まってもおかしくない、荒れ果てて、おまけにゴブリンキングが大量に住み着いている、この土地をもらった?」


「えっ?ここ観光地じゃないんですか?俺はゆっくり羽を伸ばしてこいって……」


俺がそう言うと、おじさんは堪えきれなくなったのかいきなり大声で笑い出してしまった。


「はははははは!ははは!お前それ!騙されてるぞ!はははははは!久しぶりだ、こんなに笑ったのは!はははは!なんて間抜けな奴なんだ!はははは!」


いや笑いすぎだよ!

それに王様が俺を騙すなんて、流石に信じられない。


「いや、そんなはずは……王様が俺を騙すはずないですし、多分何かの手違い……?えっ、どうすればいいんだろ」


おじさんは笑いすぎて涙まで流している。


「ははは!悪い、名乗るのが遅れた。俺はバルバトス。ここら辺を勝手に管理しているポルカの唯一の領民だよ」


「ゆ、唯一の!?ここ、住んでる人他にいないんですか?」


「さっきも言っただろ。ここは危険地帯だ。誰が好き好んでこんな場所に住むんだ。悪いことは言わん。お前も早く帰れ。ああ、でもお前が何故監視されていたかはもう少し調べたいが……」


貰った領地に来て数分で「帰れ」と言われたよ。

確かに、バルバトスさんの言うとおり、ここにいても良いことはなさそうだ。

だけどすぐに帰るってのも……うーん。


そう悩んでいると、突如家の外に強大な気配を感じた。

バルバトスさんも同じく気配を感じたようだ。

真剣な顔になり、再び斧を手に持った。


「これは……魔物ですね。しかもかなり強い」


「ああ、おそらくゴブリンキングだ。この辺りに大量に生息するゴブリンキング。その中でもリーダークラスの恐ろしくつえぇ奴だ。……でも変だな。この辺のゴブリンキングは、こっちから仕掛けてこない限り何もしてこない賢く平和的な魔物のはず、どうして?」


「とにかく、外に出てみましょう」


「ああ」


そう言って俺はバルバトスさんと一緒に外に出た。

すると案の定、家の前には巨大な1匹のゴブリンキングが立っていた。


ゴブリンキングは俺を見て、

「グォォォォォォォ!!!」

と雄叫びをあげた。


俺もそのゴブリンキングの姿を見て、思わず叫んでしまった。


「ゴ、ゴロタじゃんか!!!」


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