第149話 番外編 ユキちゃんの憂鬱②
「回復魔法なら私も多少使えますので、回復魔法の受付を2つにしましょう」
そう言って、午後一番にウラン支部長は対策を取ってくれました。
これで少しはマシになりますね…
「はいはい、あなたはこっち、あなたはこっちね」
最初は私の列だけ異様に長かったのですが、ベテランギルド職員に無理やり列を分けられていますね。
よしよし。
あれ?でもこそっとウラン支部長の列から抜けてる冒険者がいますよ?
そんでもって最後尾に並び直してる!?
なんでよ!!
あともう一つ、ウラン支部長が回復やってから、なんでだろう、徐々に女性冒険者で並ぶ人が増えてる気がするのですが……。
チラリと横に目をやると、ウラン支部長から治療を受けている女性冒険者が、うっとりした目で支部長の顔を見ています。
なるほど、ウラン支部長イケメンだもんなぁ。
「あの、ウラン支部長ってご結婚とかされてるんですか?」
お、すごいこと聞きましたね、女冒険者さん。
でもそれちょっと私も気になります!
ウラン支部長プライベートの話全然しないんですもん。
「結婚……ですか……」
そう言ってウラン支部長はちょっと困った様な顔をしています。
「恥ずかしい話、今まで恋とかってした事ないんですよ……誰かを好きになるって言うのが、ちょっと分からなくて」
ズキューン!!!
私は今!人が恋に堕ちる瞬間を目撃しました!!
ああ言った時のウラン支部長のはにかんだような笑顔!あぶな!私までちょっとキュンとしちゃいましたよ!!
まずいですよこれは!
女冒険者さん、目がハートになってますよ!!
そして……
後ろの他の女性冒険者さん達、怒りの視線で見てますよ!!
早く逃げてー!!!2人ともー!!
それからはもう大変なんてもんじゃありませんでした。
「ウラン支部長のご趣味は?」
「好きな料理は?」
「休日は何をされて?」
……お見合いかよ!!!
結局今まで以上に治療を求める冒険者が殺到し、その日の鷹の爪49支部はめちゃめちゃでした。
「な、なんでこんな事に……」
休憩室でぶっ倒れる私同様、流石のウラン支部長もぐったりしています。
「お疲れ様でした。ウラン支部長、ユキちゃん」
そう言ってタクト先輩がポーションを差し入れてくれました。
砂漠にオアシスとはこの事です!
ウラン支部長はすぐにシャキッと姿勢を正し、財布を取り出してます。
「ありがとうございます。いくらでしょう。お金を……」
「え、大丈夫ですよ!これは俺の奢りですから」
「そう言う訳には……」
ウラン支部長は真面目だなぁ……。
ん?心なしか顔が赤いですね?
大丈夫でしょうか?
疲れて風邪でもひいちゃったんでしょうか、ウラン支部長。
「それにしても、明日もこれじゃ、体がもたないですよ!」
私がそう言うと、ウラン支部長は新人の私なんかに向かい、頭を下げてきたのです!
「私の責任です。こういう事態の為にも、本部には何度も増援要請をしているのですが、私の力が及ばずに……」
そ、そんなつもりじゃないんです!ウラン支部長!
……49支部は僻地で、人気の無い支部です。
つまり鷹の爪49支部は、問題を起こした社員や成績の悪かった社員の左遷先なのです。
かくいう私も、本部のゴールズとかいう気持ち悪いおじさんの誘いを断ったので49支部に移動になりました。
ウラン支部長はそんな本部から煙たがられている私達の為に、いつも本部と言い合ってくれているのを私達は知っているのです!
ウラン支部長の所為だなんて……。
「ウラン支部長の所為じゃありません!絶対に!!」
私がそう言うと、ウラン支部長はいつもの鉄仮面を崩し、にっこり笑いました。
「ありがとう……ユキさん」
いやー凄いですね!ウラン支部長!!
天然の女殺しです!
でも……どことなく女性特有の、色っぽさみたいなのがあるんですよね。
うーん、きっとウラン支部長が女だったらめちゃくちゃ美人ですね。
そんな事を考えているとタクトさんがウラン支部長に話はじめました。
「あの、ウラン支部長。治療が忙しい件、もしかしたらなんとかなるかもしれません」
このタクト先輩の提案が、鷹の爪の大ヒット商品誕生のきっかけになるなんて、その時誰も想像していなかったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます