第142話 ブレーメン
ブレーメンのメンバー達は子供達を引き連れ、安全地帯まで無事に避難してきていた。
しかし、突然の轟音に思わず全員が振り返ったところ、浮遊していたはずの大聖堂が傾き、ゆっくりと落下している事に気がついた。
その光景を見た面々は思わずゴクリと唾を飲む。
「ヨルにいちゃん……こわい……」
怯える子供達が、思わずヨルにしがみつく。
「心配するな、ここにいれば大丈夫だ」
そう言って子供達を抱きしめ、少しでも不安を取り除こうとするヨルであったが、内心はひどく動揺していた。
(あれが落下したら孤児院は?あそこに残っている人達は……クレハさんは……。)
ブレーメンのメンバーは全員正確に現状の把握ができていた。
サヨがそれを言葉にする。
「落下時の風圧くらいは私の呪文で守れる。ここにいる子供達は大丈夫。今から詠唱を始める。でも、あそこにいる皆んなは……」
それを聞いてアサは黙って落下する大聖堂に向かい歩き始めた。
「どこ行くんだ!アサ!」
ヒルが無謀な行動をしようとするアサを怒鳴りつける。
「私の爆裂魔法で大聖堂を破壊して、皆んなを助けるから!大丈夫です。私天才なので」
「バカ言ってんじゃねぇ!爆裂魔法を一発や二発撃った所で、あんなもんどうにもならねぇよ!お前にだってそれくらいわかるだろ!」
それでも足を止めようとしないアサを、ヒルは無理やり腕を掴んで止める。
「この分からずや!!」
そう怒鳴るヒルだったが、アサの顔を見て思わずギョッとした。
アサはボロボロと涙を流している。
「だって!クレハおばあちゃんや皆んなが……」
しばしの沈黙が流れる。
そんな沈黙を破ったのはヨルであった。
「サヨ、呪文詠唱の進捗は?」
「……あと20秒で終わる。それでここにシールドが張れる」
「悪いな、連続で申し訳ないが移動強化の呪文を俺に頼む、全速力で孤児院に戻る」
そんな無謀な言葉を聞き、ヒルは口をあんぐり開けて驚く。
「何お前までそんな無謀な事を……」
そんなヒルの言葉を聞き、ヨルはふっと笑う。
「大丈夫だ……あっちには世界最強の男、タクトさんがいる」
それを聞いてヒルはハッとする。
「……確かに、あの人ならもしかすると……」
「そうだろ?だが大聖堂を無事に破壊し落下の衝撃をなんとかしたとしても、無数の瓦礫が辺りを破壊するのは免れない。微力ながら俺は向こうに行ってタクトさんの手助けをする。アサ、お前も行くだろ」
アサはこくんと頷く。
「……ふざけんなよ……」
ヒルは拳を握り、プルプルと震えながら言う。
「そんな重要な任務、俺も行くに決まってんだろ!」
ブレーメンのメンバーは全員、決意を固めた。
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