第134話 君の名は……
ノエルとクレハは大量の魔物を倒していたが、それ以上に敵の湧き出す数が多すぎる。
「ええい、キリがないね!」
クレハはすぐにでもタクトとセシリアの元に行きたかったので、苛立ちを隠せない。
そんな辛い状況の中、止めを刺すようにユキの悲しい声がこだまする。
「アリサさんとウランちゃん限界でーす。結界厳しいです。私も矢がもうないでーす」
そう言ってしおしおするユキを見てノエルがいう。
「一時的な結界は僕がやるよ。でもそれだとこの魔物が……」
そう言った所へ、銃声が鳴り響く。
「ズガガガガガガ」
月季を乱射しながらアリスが不満そうにブツクサと言いながら敵を薙ぎ倒していく。
「次は飛べるように月季を改造しなくちゃ。タクト様はお空に行かれてしまったのに何もできないなんて」
クレハは援軍の登場にグッと拳を握った。
さらに幸運は続く。
アリスの背後から、多くの魔物が吹き飛んでいくのが見えた。
見ると大きな剣で魔物を薙ぎ払うその大柄な女性が孤児院の方に向かって来ていた。
服装は大分薄着で開放的である。
剣術とも言えない、まるで獣の様な戦い方を見て、アリスは一声上げる。
「あら、野蛮」
大剣を振り回す女は、難なくクレハの所までくると、一礼をし丁寧に声をかけた。
「失礼。ジェイド。いやタクトという者のいた孤児院はここであっているかな?」
「ま、間違いないが……一体アンタは?」
そう言うと、女性は嬉しそうにニッコリと屈託のない笑みを浮かべた。
「そうか!ジェイドに懸賞がかかったと聞いて、何とかここを調べ上げて来たんだ!ジェイドの力になれないかと思ったのだ!今ジェイド、いやタクトはいるのか?」
「いや、悪いんだけどその懸賞金の件はもうなんとかなったんだよ。それに今タクトは留守で……」
そう言うと女性は絶望の表情を浮かべた。
「お、遅かったのか……ち、力になれないとは……」
そう言いつつ後ろにブンと大剣を振り、近づいていた魔物を吹き飛ばした。
「い、いや、ここはタクトが生まれ育った孤児院だからね!見ての通り今魔物の襲撃を受けてる!アンタが加勢してくれればきっとタクトも喜ぶよ!!」
そう言うと、女性はまたパーっと笑顔になった。
「そうか!それはいい事を聞いた」
そう言って女性は魔物に向き合い大剣を構える。
そんな女性にアリスが一言声をかける。
「ところで、そろそろあんた名乗ったら?一体タクト様とどういう関係?」
そう言われて女性は、これは失礼と言ってこう付け加えた。
「ああ、アリス君じゃないか、久しぶり。鎧を着ていないから分からないか?しかし鎧は当分ゴリゴリなんだ」
アリスは自分を知っている様な口ぶりのその女性に、怪訝な表情を見せた。
「あなた……誰?」
照れくさそうに笑いながら、大剣の女性は巨大なオークを真っ二つにする。
「私は……腐食騎士、と言えば分かるかな?ジェイドには返しきれない恩がある。微力ながらこの私腐食騎士ことカーラ・ロング、この戦いに加勢させて頂く!!」
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