第133話 新主人公ってマジですか?
大聖堂から雷や石の礫が孤児院に向かって降り注ぐ。
アリサは結界を張っているが、その雷鳴の威力に度々結界を破壊されてしまう。
消耗が激しい。
「アリサさん。私が変わります。一旦休んでいてください!」
そう言ってウランが結界の役目を変わる。
その姿を見てユキは焦りをみせる。
「ど、ど、どぉしようぅ!私そんな結界術使えないし、回復しか……手伝いたいけど何すれば……」
そんなユキに、結界を張る片手間にウランはある物を渡す。
「ユキさんはこれを」
そう言ってユキに渡したのは、ウランが教会から持ってきた聖遺物の一つである破魔の弓であった。
「えええぇぇぇ!私弓とか使ったことないですよ!」
と、本人は言うが、実はユキちゃんの固有スキルは『弓王』という弓スキルの中でも最上位のスキルであるというのをタクトは知っていたのだ。
『弓王』はチート級の固有スキルである。
大司教の策略で、固有スキルの力が弱ってるとはいえ……
「ええい!どうなっても知りませんよ!」
そう言ってユキは外に飛び出し、「えい」と弓から矢を放った。
美しく飛ぶその矢は見事にアンデットの頭部に命中した。
「へっ?」
撃った本人が一番驚いている。
「ま、まぐれですよね……」
そう言ってユキちゃんは今度は3本連続で弓を引く。
トントントンと全て頭部に命中し、アンデットが消滅する。
それを見て、ユキは唖然としたかと思うと、すぐに不敵な笑いを浮かべる。
「……ふ、ふふふ……ふふふふふふ!ついに!ついに私の力が覚醒したんですね!!実は私主人公だったんですね!!!『ギルドの美人受付嬢だった私が実は弓の天才だった件!!』次回、乞うご期待!!」
クレハはというと大勢の敵が向かってくるというのにも関わらず、ゆっくりと精霊達に祈りを捧げていた。
ブツブツと祈り続けるクレハに、魔物達と空から降り注ぐ石の礫が襲い掛かろうとしていたが、寸前の所でそれを誰かが払いのけた。
「……タクトのお母さん。危ないよ。僕がいなきゃどうなっていた事か」
そう言ってクレハを助けたノエルにクレハは言った。
「久しぶりだね、ノエル。アンタとタクトがトレーニングしたあと、何度もうちに食事をしに来ないかって誘ったのにアンタは来てくれなかったね、寂しいよ」
ノエルは魔物を蹴散らしながら、クレハに応える。
「だって僕、魔族だもん」
そう言って楽しそうに魔物を殺していく。
どう、怖いくなった?とでも言いたげに、返り血で血だらけになった顔をクレハの方に向ける。
「関係ないね。昔は息子の友達で、今は息子の奥さんだろ。だったら私の家族じゃないか」
そうクレハに言われて、ノエルはすっかり毒気を抜かれてしまった。
「ハハハハ!さすがタクトのお母さんだ!」
そう言ってノエルが笑っていると、ついにクレハの魔法が完成した。
氷と炎の精霊が同時に召喚される。
ノエルは「ヒユー」と口を鳴らす。
「氷と炎の大精霊を召喚するとか、なかなかやるじゃん、おばぁちゃん。おばあちゃん、超優秀な魔導士だったんだね」
「そりゃどうも。でもちょっと違うね」
そう言うと、クレハは二人の精霊の力を体に纏う。
右腕に氷、左腕に炎を纏い魔物の群れに飛び込んでいく。
たちまち数十体の魔物を消し去るクレハ。
「魔導士じゃない。私の戦い方は、昔から肉弾戦だよ。それと、年寄り扱い、するんじゃないよ!」
そんなクレハを見てノエルは楽しそうにニヤニヤ笑う。
「へぇー僕もちょっと本気出そうかな!」
ノエルは魔剣を取り出し、クレハと共に戦った。
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