第132話 できることを……

ゴチンコとローラは今回の騒動の合間に、孤児院の近くに新たなギルド支部を作っていた。

着々と勢力を広げるゴチンコのギルドは、近いうちにトップスリーの大ギルドになることは間違いないだろう。

そしてゆくゆくは『鷹の爪』を超えるギルドに……


そう考え新たな支部で慌しく働いてたゴチンコの所に風の精霊が飛び込んでくる。


「ん?ウランからの風の精霊の伝言!?」


新しいギルド会員の手続きのため対応中だったゴチンコだったが、「ちょっとすいません」と接客を中断してウランからのメッセージを聞いた。


「こりゃ大変だ!タクト達がピンチだ!」


すぐにゴチンコはローラや他の職員に、ウランから聞いた、大量の魔物から襲撃を受けているという事実を伝達した。


「ギルド長、ローラさん。俺行きます!」


手伝いに来ていたヒルはそう言うと、すぐにギルドを飛び出して行った。

ゴチンコは方針をタクト達を助けるための方針を口にする。


大盛況のギルドの受付窓口が、「ガタン」「ガタン」と一つずつしまっていく。

全ての窓口が閉まると、ゴチンコが話し出す。


「あー……誠に申し訳ない。ゴチンコのギルドは一時的に通常の依頼と新規会員の受付を中止する。理由は……緊急クエストだ!この近くの孤児院が大量の魔物に襲撃を受けている。依頼主は他でもないこの俺だ!俺の持ってる金じゃ大した報酬は出せないが、暫くは酒も止めるし、なんとかして皆に報酬は払う!だから頼む!力を貸せる冒険者は、助けに行ってやって欲しい!!」


そう言ってゴチンコは頭を下げる。


「孤児院って事は子供達だろ。行くぞすぐに」


「無理はしないし、そんな大量の報酬はいらないよー。うちらのパーティへの報酬は極上のエールって事で」


「アリス親衛隊!今こそアリスファンの誇りを見せる時だ!行くぞ!!」


ここまで質のいい冒険者ばかりなのも珍しい事だ。

これも誠実な対応をと心がける、日頃の行いの賜物であろう。


「よし、ローラ!みんな!裏から武器やポーションの物資をありったけ持ってこい!冒険者達に配るんだ!」


「うん!すぐに行く」


ゴチンコは必死で冒険者のサポートを始めた。


「悪いなタクト。俺には戦う力はねぇからよ。だがお前の為に、できる限りの事はさせてもらうからな」


………


……




「ああ!どうしよう!!なんで私、役立たずじゃん!!」


孤児院に残っていたユキは、大量の魔物と戦う他のメンバーを見て狼狽えるばかりだ。



続く


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